○M氏作品集
  Matsunaga's work


敬愛する先輩の歌を御紹介致します。

   

にいがたけんにしかんばらぐんあじかたむら
新潟県西蒲原郡味方村星降る里に帰らむといふ

 
(連作)

故郷は星天に満ちものみなの美味にして美女多しと誇る

妹はかまいたちに昔遭ひたりとハ 血も出ぬままに裂かれたる皮膚

実家より送られて来し新米と新酒と柿の種の小包

夏の日はどこまでも続く水田をどこまでも自転車で駆けしとぞ言ふ


〇木曜日、深夜、雨の中、会社より帰り来れば、新しき「通販生活」届きをりて、

新しき「通販生活」届きをり 無い袖振れず 降る涙雨

〇日曜日、出社せん我にお弁当作りたる妻に向ひて、
下の娘、言いける、「なあちゃんのお弁当は?」
これにより、妻、自分、二人の娘、私のと合はせて四人分を弁当箱に詰め、
「昼は隣の部屋で三人でお弁当にしよう」と言ふ。
蓋をする前、冷まさんとして、お弁当箱、四つ並びたるを見て、

お弁当四っつ並べて置いてある机の辺りほの暖かき

もう一首、

お弁当並べ「これからピクニック行ってみんなで食べられるなら」

〇残暑のきつい日曜日、昼前、人気(ひとけ)のあまり無いビル街にて、

大手町路上駐車を自転車の警官が取り締まる日曜

〇雨に咲き、しおれたる朝顔に

「馬鹿よねえ こんな天気の日に咲いて 一日くらい待てば良いのに」

〇鈴虫の雄二匹相次いで死にき。
ささやかながら夜の楽しみ、失せてさびしき。

鈴虫や 雄の死骸の傍らに雌二匹ひそひそと語らふ

〇我がイタリアンパセリの鉢植えに、キアゲハの幼虫二匹卵より孵る。好物との事。
食欲旺盛ながら、パセリの葉少なし。たちまちにして食い尽くす。
妻が見かねて、普通のパセリ(カールドパセリ)を買いて与えしが、
味合はざりしによりてか、食せず。死にき。

鉢植えのイタリアンパセリ食べつくし蝶にならずに死にし青虫

〇気が付けば、秋真っ盛り

気が付けば秋真っ盛り お昼にはそうめんだなんて冗談じゃない

〇後悔先に立たず

あああれがこの夏最後のそうめんであったのだなと後から気付く

〇昨年のそうめん即吟

これやこの夏の最後のそうめんと思へども一気に食ひてしまひぬ


△Back to Hyperion Island

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