Palm Top PC110 (2431-YD0)

コイツは僕らのヒーローだっ!! (^^)

「ウルトラマンPC」という愛称(?)と、世界最小・最軽量の DOS/Vパソコンという看板を引っさげて登場した PC110。
発表当初は大変な反響でしたが、何よりも数年後に某T-ZONEで爆安で大量放出されたことで、更に大きな反響を呼ぶことになりました。
既にこの時点でパソコンとしては非力なクラスになってはいましたが、格安でコンパクトなマシンということで、今なお重宝している方も多いようです。
(爆安で)帰ってきたヒーローには、再びパワーアップして帰ってきて欲しい、と願うユーザーも多いのではないでしょうか?

 

その小ささを感じさせない勇姿。

IBMは、本機をパソコンというよりも PDA的に考えて設計してきたようで、あちこちにおよそ普通のパソコンでは考えられないような機構が仕込まれています。

この YD0モデルは、PC110に特化して開発された「Personaware」と呼ばれるPDAアプリケーションの動作に絞ったミニマムモデルで、他にメモリ容量が大きい PDAモデル(YD1)と、Windows3.1モデル(YDW)があり、更に末期のT-ZONE放出では YD1Sと名づけられたモデル(Windowsモデルから付属品を取り払ったものと言われています)というものも存在しました。

PC110は日本国内モデルのようですが、この小ささ故に海を渡った仲間もいるようで、海外でも PC110に関するページをサーチエンジンで見つけることができます。
もちろん、かの T-ZONEの放出のおかげで、日本のユーザーのページも非常に豊富ですから、必要な情報も比較的容易に手に入ることでしょう。

 

誰もが最初は操作に焦ってしまうキーボードとポインティングデバイス。

正にユーザーに対する挑戦状といった小さなキートップですが、使ってみるとなんとかイケそうな感じです。

問題はむしろポインティングデバイスにあります。
トラックポイントではなく、感覚的にはかつてFMV-BIBLOに搭載されていたドームポイントの縮小版みたいなんですが、これを「思った通りに操作する」には相当の鍛錬が必要な気がします。(^^;
トラックポイントに比べると、操作時の補正(手を離したときに思ったところに止めるような制御)がかなり甘い感じがします。

また、キーボード中央上には、メモなどに使える手書き入力パッドが装備されています。

 

液晶パネルを閉じた状態。

IBMのエンブレムがやたらとデカく見えてしまいます(^^; が、本機は ThinkPad系列とは別なため、単に「IBM」という表記のみに留まっています。

ボディは航空機なんかの機体にも使われているらしい「超ジュラルミン」によるもので、オプションで色違いのカバーも用意されていました。
後に i1400系でも似たような発想の着せ替えカバーが出ていましたね。(^^)

 

前面の丸いボタンみたいなものはスピーカーとマイクで、本機は自身が丸々電話のヘッドセットになってしまいます。
モデムの搭載などでヘッドセット付きのパソコンはいくつかありましたが、本体自体が電話の受話器になるというのはなかなか強烈です。(^^;

前面には液晶インジケータがあり、電源OFF時には時計としても機能します。

 

本体の左側面には、電源スイッチ(誤投入防止ロック付き)と PCカードスロット(TypeIIIx1/TypeIIx2)が配置されています。
このPCカードスロットのサイズからして、本機が如何にコンパクトであるかが想像できることでしょう。

先にも述べましたが、赤い丸いものがポインティングデバイスで、水色と緑色のものがボタンに相当します。
この辺りの配置は ThinkPad220が手本となっているようで、より小型化した本機で想定された「立ったまま操作する」ための配置としては、まずまず成功していると思います。

 

本体右側面。液晶パネルは全開状態で、水平より僅かに大きく開きます。

前面寄りには、追加ストレージ用のスマートピコフラッシュ(実態はコンパクトフラッシュそのものです)のスロットがあります。
残念ながら I/Oカードは使用できず、マイクロドライブも本体改造をしないと物理的に搭載は出来ません。

 

背面向かって右側の状態。

ほぼ中央の電源ジャックがあり、その右にオーディオジャック、PS/2ポート(特殊な形状で変換ケーブル必須。今となっては入手困難)、IrDA送受光部が並んでいます。

液晶パネルカバーが変形して見えますが、この右側は内部にインバータが組み込まれているので、少し膨らんでいて変形して見えてしまいます。

 

背面向かって左に格納されている WingJackと、バッテリー格納部を開放したところ。

この内蔵モデム用の WingJackは、最近は WindowsCE機や SONYの VAIOなどにもよく見かけるようになりましたが、本機が搭載機のはしりだったようです。

PC110の内蔵モデムは、今では想像のつかないような 2400bpsという低速度で、パソコン通信や小容量のFax送信が限度といったところです。
今では入手困難ですが、この低速なモデムを置き換える目的で、内蔵の 33.6kbpsモデムキットがサードパーティーから販売されていました。

 

バッテリーパックは、その後 ThinkPad235でも採用されたビデオカメラ用のリチウムイオンバッテリーパックを採用しています。

本機でこのバッテリーパックが採用された背景には、PDA的に使う上でバッテリーの入手のしやすさを視野に入れていたためなのかもしれません。
とは言え、本機ではこの比較的小柄なバッテリーパックも結構大きな占有率になってしまっています。(^^;

 

底面の状態。

銘板もデカく見えますね。(^^;
表記スペースにも限界があるためか、モデル番号表示が縦になっているところが面白いです。

 

本機標準添付のACアダプター。
比較的小さなものですが、これまた本体に比べると随分巨大に感じます。

仕様的には、ThinkPad220や CD-400用とほぼ同一で、電圧は10.5Vとなっています。

特に CD-400用のACアダプターは、PC110標準アダプターよりも一回り小さく、更にコンセントプラグの刃が折りたためるというスグレモノなので、標準添付のもの以外に持ち歩き様のACアダプターの追加購入を考えている方にはおすすめのアイテムだと思います。

 

底面カバーを外してシステムボードを拝んでいる様子。

CPUは BGAパッケージで表面に「RIOS」のプリントがされているという特徴があります。
CPU以外にビデオチップなども本来のメーカーとは異なり、RIOSのプリントがされているところからして、本機専用にパッケージを変更した特殊なものといった感じがします。

それにしても本当に集積度が高いシステムボードで、現在の小型ノートともひけを取らない設計です。
(ジャンパー線が走っているのはご愛嬌ですね。(^^;)

 

取り外した増設メモリーボード。

YD0は本来はオンボード 4MBのみで、このボードは追加購入したもので、8MBのものです。
当初は IBMのパーツとしても存在するであろう 4MBのモジュールから始まって、この8MB(計12MB)、BIOSのパッチあてで使用できる16MB(計20MB)の 3種類が公式に存在するようです。

パワーユーザーの方の中には、このモジュールを土台にカメカメして、16MBにして使ってみえる方もいらっしゃいます。すごいですね。(^^)
(20MBあれば、Windows95でもまあまあ使えるようになります)

 

外した底面カバーです。

この超ジュラルミン製のボディーは、裏面にもしっかり塗装処理がされています。
スペックはさておいて、このサイズにするための集積度や、こういったボディの作りなど、非常によく考えて手を抜かないように設計されています。

 

「CPUが強力だったら・・・」「ハードディスクが内蔵されていたら・・・」「もう少し登場の時期が違っていたら・・・」「もしもリブレットが発表がされていなかったら・・・」と、本機を語る上で数々の「If」がつきまといます。

でも、結果的に「とっても身近なヒーロー」として数多くのファンの手元にやってくることになった訳ですから、良かったんじゃないでしょうか?
(商業的にはどうかな、とは思いますが・・・)

いずれにしても、もしもチャンスがあれば、パワーアップした後継機に是非出てきてもらいたいなぁ、というのが正直な気持ちではあります。

 

本機の基本スペック (2431-YD0)

CPU    Intel 486SX-33MHz (BGA)
RAM    4MB Max.20MB
HDD    なし。但し、4MBフラッシュメモリーディスク(不揮発)内蔵
LCD    4.7" DSTN (256 color)
VGA   CT65535 V-RAM:512KB
MODEM  DATA 2400bps / Fax 9600bps

セットアップやメンテナンスのポイント

一時の投売り(^^;が掃けてしまってからは店頭で見かけるチャンスは少なくなってしまいましたが、オークションサイトでは割と頻繁に見かけます。
本機で使うには、色々と情報収集が必須で、オプション類もなかなか見つかりにくく、値段も高いです。
肩肘張らずに使うのが、本機に最も良い使い方なのかもしれませんが・・・

 

(2001/03/10 記)

 

 


 

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