IBMとしては事実上初のノートパソコンとなった PS/55note。
本機の登場は 1991年春で、当時は NECの 98noteと東芝の Dynabookが一大ブームを巻き起こしていた時期ですから、なんとも懐かしい時代です。
現在のノートパソコン市場にも勝るとも劣らない状況の中に、この初代PS/55noteは殴り込みをかけることになりました。
さすがに最近のモデルと比べると、クラシカルな雰囲気のある本機ですが、発売当時はこの黒い筐体と独特の質感が非常に印象的でした。
流石に10年前のモデルということで、良好な稼動状態を保つのも一苦労で、手元の本機も、数台のパーツを寄せ集めて、ようやく外観上欠品パーツの無い稼働機(というよりも可動機と言うべきか?(^^;)がまとまりました・・・。
特徴あるキーボード。
Altが前面キーと表記されているなど、非常に変わった印象を受けますが、それもそのはず、本機は現在では標準的な89キー配列が確定する以前のものだからです。
とは言え、現在の89キーは、基本的には本機の文字刻印の表記が若干変わった程度で、本機のキー配列自体がかなり煮詰まっていることを示している訳です。
キーボード手前左右には、液晶パネルのロック爪が入る穴があります。
(液晶パネルを開くと、内部への埃等の進入防止のためか自動的に閉鎖されます)
液晶パネルを閉じた本機。
エンブレムの表記は「IBM PS/55note」となっています。
本機の表面はゴムの様な独特の感触の処理がなされています。
手に持ったときに滑って落としにくく、手に馴染みやすい肌触りですが、反面、キズがつきやすく、条件によっては塗膜がベロベロとめくれてしまうようです。
(手元の本機も、この画像では綺麗そうに見えますが、結構キズが多いです)
液晶パネルのロックを解除するつまみが左右にあるだけで、とってもシンプルな前面。
他社の競合モデルと比べても独特の存在感があったであろうことは想像に難くありません。
左側面は、モデムスロット、電源ジャック、リセットスイッチのみが並んでいます。
これらの配置は、後継機の N23SXでもそのまま変化はありません。
背面にはシリアルポート、パラレルポート、PS/2ポート、拡張コネクタが配置されています。
この初代PS/55noteではディスプレィ出力がありません。
よって液晶パネルが故障した場合、事実上使用不可能となってしまいます。
底面のチルトフットを立てた状態。
左右のロックを解除すると、脚が出てきますが、バネで飛び出すのではなく、脚のパーツの自重で下りてきます。
右側面は一見すると何も無さそうに見えますが・・・
背面寄りのカバーを開けると、フロッピーディスクコネクタが現れます。
この初代PS/55noteでは、内部スペースの問題から、FDDまたは
HDDが出荷時に排他組み込みという形態をとっています。
(FDDモデルにあとからHDDを組み込むことは不可能です。実際問題、内部を開けてみると、スペース的に全く余裕がありません)
この点については、他社競合機に対して見劣りがするものと思われたのか、後継機の
N23SXでは晴れて FDD/HDD同時内蔵というデザインに進化しています。
左側面後端のモデムスロットの蓋を開けたところ。
手持ちの本機ではモデムカードが組み込んでありませんので、黒いブランク板が取り付けてあります。
今では標準でモデムを内蔵していたり、PCカードモデムを使用するケースが大半ですが、この時期のノートパソコンはこの様な専用モデムスロットを持っているものが多くみられました。
本機に付属の外付けフロッピーディスクドライブ。
ケーブル長はきわめて短く、本体のすぐ右横に置くことしかできません。
先のフロッピーディスクコネクタの形状から気が付いた方もいらっしゃるかもしれませんが、このフロッピードライブは
ThinkPad755/760系の外付けドライブとして代用できます。
(但し実際に使用される際には、自己責任でお願いします)
なお、このドライブは
2モードですので、PC-98x1系の1.25MBフロッピーは読めません。
バッテリーパックは N23SXのものと変わりないようです。
さすがに年数が経っていますので相当弱っていますが、問題なのはバッテリーが消耗しきっていると充電回路に電力が回ってしまう(?)のか、本体が起動不能になってしまう点です。
バッテリーパックを外せば大抵起動しますが、気が付かないと何故立ち上がらないのか原因がさっぱり判らないのではないでしょうか?
底面のメモリスロットの蓋を開けたところ。
手元の本機では、IOデータ製の4MB互換品を搭載しています。
本機のメモリはオンボードで 2MB、4MBのメモリを追加して
6MBまでがスペック上の上限ですが、8MBの物も認識させることはできるようです。
また、汎用の72pSIMMの改造で認識できるケースもあるようです。
(但しメーカー保証外になり、不具合が発生する可能性があります)
底面の様子は後継機の N23SXと同じ様で、見分けがつきにくいです。
前面寄りには若干テーパーがつけられています。
一時期は四角の弁当箱形状になっていた物が、近年のモデルでは再びテーパーがついているところは、なんだか先祖帰りしているようで面白いところです。
初代PS/55noteの
ACアダプター。
後継機の
N23SXでもこのアダプタと同形のものが採用されています。
他の機種への転用は、出力仕様の問題(電圧・電流共に低い)とプラグの形状の違いから不可能と考えた方が良さそうです。
DC側のケーブルはとても長くて、2.5m近くもあります。
アダプタ本体がコンセント直付型のための配慮かもしれませんが、ちょっと長すぎる(^^;気がします。
技術的な背景から仕様面でまだ改善すべき点はいくつかあったものの、IBM初の本格的なノートパソコンとして恥ずかしくないデザインと堅牢な作りは、以降のノートパソコンに対する IBMの姿勢を物語っているかのようです。
これからも是非この精神が脈々と受け継がれていくことに期待したいところです。
CPU Intel 386SX-12MHz
RAM 2MB Max.6MB (72pin)
HDD 40MB
CD-ROM none
FDD 2mode 外付
LCD 9.5" モノクロ16階調 (640x480 VGA)
シンプルな構成のモデルですが、流石に年数が経っているだけに可動状態を維持するには予想外の苦労を強いられます。
- ハードウエアの構成変更の際には、セットアップ用として「リファレンスディスケット」が必須となります。
メモリの増設・撤去時にも、モデムの追加時にも、更にバッテリー消耗で起動デバイスの再設定をする際にも必要ですので、これが無いと使用できないことになりかねないという問題があります。- 主電源スイッチは背面にあり、通常の電源ON/OFFは前面のレジューム/サスペンドスイッチによる方法が取り説で推奨されています。但し、バッテリーの消耗が非常に早いので、レジューム状態でACアダプタを外した状態にしておく場合には注意が必要です。
(バッテリー切れであっさり作業内容が消えてしまいます・・・)- バッテリー消耗時には、バッテリーパックを外さないと起動できないことが多々あります。
バッテリー装着状態で電源を入れて起動しなかった場合、一旦バッテリーを外して暫く放置しないと起動できないこともあるようです。
(2001/06/24 記)