ThinkPadの 700番代は、ハイエンドモデルとして最新の機構やユニークなシステムを積極的に取り入れていることで知られています。
この 755CXは、Pentium-CPU・SVGA液晶・リチウムイオンバッテリーという、その後のノートパソコンではおなじみの仕様を初搭載した
ThinkPadです。
とは言え、Pentium75MHz-CPUは本機登場時に決して最速という訳ではなく、SVGA液晶もサイズは従来のVGAパネルと同サイズであるなど、まだまだ熟成不足な部分があり、次期モデルの 760シリーズにバトンタッチしていくことになります。
755(又は750)シリーズの最終型として、正に決定版と言っても恥ずかしくないモデルです。
SVGA液晶パネルは 10.4インチと決して広い面積とは言えませんが、表示される情報量は増加し、パネル表面も反射が低くて落ち着いた表示となっていて、現在でも見た目は快適と言えます。
但し常用する解像度が大きくなった為か、ビデオ系(WD90C24)と CPUがアンターパワーといった感が強いです。
勤務先にも 1台ありますが Windows95/98では、やや辛い部分があります。
本機は当初 99万8千円という定価が設定され、勤務先でもえらく議論になった(私自身「高すぎる」と当初導入を反対した(^^;)思い出があります。
手元の本機は、写真では判りませんが結構塗装が剥げていて、えらく酷使されていたみたいです。
TrackPointIIIは、ボタンを手前に引いてロックすることができます。
ドラッグ操作に都合の良さそうな機能ですが、迅速な操作にはちょっと不向きです。
それよりも、ボタンの接触が経年変化(?)で悪くなり、クリックが渋くなる事が多いのが問題かも?
(キータッチはとてもいいんですけれどね・・・)
キーボードを開いたところ。
いわゆる「弁当箱」方式で、内部のオプションを容易且つ迅速に交換できる特徴は、ThinkPad750から長い間受け継がれていました。
右が HDDパック、中央が本機で初採用となったリチウムイオンバッテリーパック、左が
FDDユニットです。
バッテリーパックを中央に置いているため、本体を持ったときの重量バランスに優れています。
FDDを取り外すと、メモリー装着部が見えます。
この写真では 16MBの D-RAMカードを装着していますが、必要に応じて 32MBの D-RAMカードや DIMMアダプタと各種容量の DIMMとの組み合わせを入れ替えて使用しています。
この弁当箱構造は、オプションの装着の便だけでなく、本体の強度向上と軽量化にも寄与しています。
少々見辛いですが、HDD側側面の盗難防止フックです。
実際にはキーボードが閉じて、キーボード部の金具の穴を貫通して、HDDパックのフックを引き出す様になっています。
最終的にフックに鍵を取り付けてしまえば、本体を持ち出すことはおろか、キーボードを開けて中のオプションを取り出す(ということは大切なデータの入ったHDDも)ことは一切出来なくなります。
この徹底ぶりは、流石はIBMといったところでしょうか。
前面部分です。
FDDは 2.88MB対応の 4モードになっています。
代わって背面です。(背面カバーを開いた状態)
で、カバーを閉じると・・・
真っ黒で何がなんだか判りませんね、、、(^^;
この背面カバーは同形状下位モデルとは違って、ATバス部のスライドドアも含めてちゃんと塗装されています。(さすがはハイエンド機)
PCカードスロット部分ですが、ご覧の通り蓋は紛失しています。
750系を母体としたモデルがこのはめ込み式の蓋となっていますが、蓋の扱いが面倒で、中古で売られている物の多くは紛失しているケースが多いようです。
PCカードスロットのちょうど反対側面にある電源スイッチ部分。
とても電源スイッチが操作しづらいモデルが存在する ThinkPadですが、本機のスイッチは操作しやすい部類に入ります。
すぐ下の蓋は M-Wave関連のジャック部分です。
右からモデム機能用のモジュラージャック、ライン入力、ヘッドホン出力。
M-Waveはアナログモデム機能とオーディオ機能を DSPで処理するため、ソフトウエアで通信速度をアップグレードできる特徴がありましたが、セッティングが初心者でなくとも難しく、負荷によって音が出せないといった問題がありました。
また本機のジャック部の蓋は90度で固定のため、モジュラーケーブルの抜き差しが不便です。
ACアダプタです。
このタイプより大きな箱形のアダプタが添付されていたモデルもあるようです。
755CXは「遅さ」が気にならなければ現役でも十分通用しますが、この「遅さ」がパソコンの世界では致命的になってしまいました。
素性は高級機ならではですが、現実面での性能競争や価格競争は、私の会社にある
755CXもそうですが、あっという間に性能面では陳腐化させられてしまって「高い割に使えない」という印象をユーザーに与えてしまった部分もあります。
正直言って私も会社の 755CXには散々悩まされましたが、そういった背景のことを考えると、ある意味致し方ないのかなぁと思いますし、使う上での苦労が愛着に繋がっていきそうな感じがします。