ニュージーランドにおける感染症対策
Public Health Medicine,Ministry of Health
Institute of Environmental Science and Research Ltd. 
ニュージーランドにおける感染症対策 
- 感染症の現状について 
-  急性伝染病については、予防接種の実施等により低く抑え込んでいる。 
 -  近年、問題となっている感染症は、エイズ、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、サルモネラやカンピロバクター等による食中毒、結核などである。 
 -  感染症対策に関しては、「健康に関する法律(Health Act)」の中に関係規定があるほか、「結核に関する法律(Tuberculosis Act)」がある。 
 - エイズについて 
- 従来は静注薬物濫用者の感染者が多かったが、最近では性行為による感染者が増加しており、STDとしての対策に重点を置いている。 
 - 1997年8月末現在の累積HIV感染者は1197名であり、累積患者数は621名である。 
 - 1996年の年間報告数は感染者92名、患者56名である。 
 - 主な施策は啓発である。 
 
 - 結核について 
- 結核は年間発生が約400名である。 
 - 年間2〜3の集団発生があり、そのたびに調査を行っている。 
 - 結核については、早期診断のもとに適切な化学療法が行われれば、患者管理としては十分であり、隔離は必要ないと考えている。 
 
 - CJDについて 
- 1985年から65人のCJD患者が出ており、感染症として最大の問題の一つである。 
 - 主な対策は、国民への情報提供、CJD患者からの献血制限等である。血液行政の立場から、対策を講じている。 
 
 
 - サーベイランスシステム(届出制度)について 
-  届出疾患(サーベイランス対象疾患)は、健康に関する法律及び結核に関する法律に規定されているが、近年、見直しが行われ、1996年6月1日より対象疾患が変わり、別紙のとおり、感染症に限らず多岐にわたっている。 
 -  医師は、届出疾患について、診断した時又は疑った時は、政府保健担当部局へ届け出ることになっている。(疾病によっては地方当局にも届け出る。) 
 -  これらの届出は、感染症の発生状況を把握すること自体のほか、食中毒でもある感染症については、原因食材を把握すること、国の関与のもとに行われる予防接種の対象となっている感染症については、予防接種計画の立案の基礎データを得ること等を目的としている。 
 -  集計データは、各地方毎にコンピュータでデータベース化され、各地方の感染症対策及び保健省の施策に利用されている。 
 -  集められたデータの解析は、国から感染症サーベイランス事業を委託されているESR(Institute of Environmental Science and Research Ltd.)が行っている。 
 -  届出に関しては、プライバシー法の適用があり、届け出を行うことを本人に告知することになっている。 
 -  Active Surveyとして、感染症に関するものではないが、shellfish(貝)が毒素を出して食中毒を引き起こすことがあることから、恒常的に貝のサンプルを集めて検査している。 
 
 - 検疫について 
-  検疫については、IHR(International Health Regulation)に準拠して実施しているため、実施体制等については、日本をはじめとした諸外国とほとんど差はない。 
 -  ニュージーランドの検疫は、一般にチェックが厳しいと言われているが、空港で提出する質問票には植物、動物検疫に関する質問があるだけで、Healthに関しては、入国後症状が出て、医師の診察を受ける場合の留意事項が記載されているに過ぎない。 
 -  現在、ほとんどの感染症が薬剤で治る上に、航空機が海外からの主要な渡航手段となっており、感染症の潜伏期間内に入国することが考えられることから、新興感染症を含めて、検疫で国内への感染症流入を防ぐには限界があると認識されている。 
 - ニュージーランドでは、むしろ人の検疫よりも農作物の検疫に力を入れている。 
 
 
別紙 
ニュージーランドにおける届け出疾患(疑い例を含む)
Diseases Notifiable in New Zealand (include suspected cases)
- 健康に関する法律(Health Act 1956)による届け出感染症
Notifiable Infectious Diseases Under the Health Act 1956
- 政府保健担当部局及び地方当局に届ける感染症
Infectious Diseases Notifiable to a Medical Officer of Health and Local Authority
- Acute gastroenteritis 
 - Campylobacteriosis 
 - Cholera 
 - Cryptosporidiosis 
 - Giardiasis 
 - Hepatitis A 
 - Legionellosis 
 - Listeriosis 
 - Meningoencephalitis - primary amoebic 
 - Salmonellosis 
 - Shigellosis 
 - Typhoid and paratyphoid fever 
 - Yersiniosis 
 
 - 政府保健担当部局に届ける感染症
Infectious Diseases Notifiable to a Medical Officer of Health
- Acquired Immunodeficiency Syndrome 
 - Anthrax 
 - Arboviral diseases 
 - Brucellosis 
 - Creutzfeldt Jacob Disease and other spongiform encephalopathies 
 - Diphtheria 
 - Haemophilus Influenzae b 
 - Hepatitis B 
 - Hepatitis C 
 - Hepatitis (viral) - not otherwise specified 
 - Hydatid disease 
 - Leprosy 
 - Leptospirosis 
 - Malaria 
 - Measles 
 - Mumps 
 - Neisseria meningitidis invasive disease 
 - Pertussis 
 - Plague 
 - Poliomyelitis 
 - Rabies 
 - Rheumatic fever 
 - Rickettsial diseases 
 - Rubella 
 - Tetanus 
 - Viral haemorrhagic fevers 
 - Yellow fever 
 
 - 政府保健担当部局に届ける疾患(感染症を除く)
Diseases Notifiable to the Medical Office of Health (Other than Notifiable Infectious Diseases)
- Cysticercosis 
 - Taeniasis 
 - Trichinosis 
 - Decompression sickness 
 - Lead absorption equal to or in excess of 15ug/dl (0.72mol/l) 
 - Poisoning arising from chemical contamination of the environment 
 
 
 - 結核に関する法律(Tuberculosis Act 1948)による届け出疾患
Notifiable Diseases Under Tuberculosis Act 1948
- 政府保健担当部局に届ける
Notifiable to the Medical Officer of Health
 
 
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JAN. 28, 1998