1999 Aug. 前期 (Arcana 18)

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過去のお言葉

Aug 1st (Sun.)- Aug 7th(Sat.)

3日(火)から7日(土)までは滋賀の金剛輪寺近くで確率論若手サマーセミナー。 今年は幹事だったので大変だったが、 同僚の「幹事長」A 氏とともに二人でやっていたのでかなり助かった。 恒例では幹事は一人でやっているようだが、 相当に大変だろうと思う。 色々と不手際があったが、個人的にはセミナー自体はなかなか面白かった。 特に白井君とか京大の H 君などスタッフの方々が、 学生向けの面白い話を用意してくれていて勉強になった。 また特別講演をお願いした阪大の S さんには特にお礼を言いたい。 昼のセミナーの後は、毎夜兎に角飲んでいた。 私は買い出しに出ていたのであまり知らないが、 特に木曜の公式宴会は炸裂していたそうな。

以下は具体的な感想。 流体力学的極限一派と数理ファイナンス一派の結束が目立った。 僕が参加した限りの例年では、 結構ばらばらでグループらしいグループはなかったように思う。 通常のセミナー以外に、 東大の K 君が夜10時から夜セミナーを3時間やったり(やらされたり)、 同じく N 君が深夜1時から引退公演をしたり、ということがあったが、 これらもなかなか楽しかった。 僕は既に寝ていたが深夜3時頃からの特別講演「転換社債で儲ける」 などもあったらしい。 数学的でない感想としては、 お茶大から参加した女の子二人の個性が極立っていた ;-) とか、TeX 業界の大御所かつ流体力学的極限一派のキーパーソン(?)かつ T 研の後輩、乙部君の「乙部拡大」が健在だった、とか。

兎に角、色々と幹事の不手際はあったが、 無事に終了してほっとした。 皆さん、お疲れさまでした。

Aug 8th(Sun.)

さて、今日からは本格的に夏休み。 たまに大学に行って雑務をする以外は、 ほとんど家でごろごろしているだけで、 ほとんど事件らしい事件も起こらないと思います。 日記の内容は読書日記くらいになるでしょう。

出張の移動中の読書。
「グレート・ギャツビー」(フィッツジェラルド、訳:野崎孝)。 「若い芸術家の肖像」(ジョイス、訳:丸谷才一)。
両方ものすごく面白かった。 僕はどちらも初めて読んだのだが、 もっと若い時に読んでおかなかったのが残念だ。 と、思うタイプの小説だった。

でも、「グレート・ギャツビー」という翻訳題名はどうだろうか。 原題そのままだから、まあいいといえばいいのだが… フィッツジェラルド自身も題名については悩みに悩んだそうで、 この題名に決定して出版されてからも、 「『偉大なるギャツビー』だと弱い。これだとギャツビーの 偉大さも、またその欠如も、皮肉な意味でさえ浮かんでこない」 という主旨の後悔の手紙を編集者に宛てて書いたと言う。 この作品の邦題としてよく使われていた 「華麗なるギャツビー」がなかなかいい題名のような気がするのだが如何か。

Aug 9th(Mon.)

「ミネルヴァの梟は日暮れて飛び立つ(ヘーゲル)」

久しぶりに大学に行ってみる。 たまっていた雑務などを処理。 僕の研究室には黒板がなかったので、 頼んでいたホワイトボードが届いていた。 やはり大きな字で計算できるのはなかなかいい。 家にも一つ二つ欲しいなあ。

今日の読書。「ミネルヴァのふくろうは日暮れて飛び立つ」 (J.ラブ、文春文庫)。
ある修道士によって16世紀にメディチ家に献上されたが、 あまりの危険性に教皇によって永遠に封印されたという伝説の書 「至上権利論」が、世紀末のアメリカに甦った。 何者かが世界を混乱に導き新たな秩序を導こうと、 「至上権利論」に従って着々と進行させているらしい「過程」に、 精神に異常をきたして引退した元工作員サラと、 政治学の若き俊英ジャスパースが立ち向かうが… というようなお話。

一言でいって、次回 007 の脚本だと言われても納得しそうな内容。 まあ暇つぶしにはなります。お盆の帰省の移動車中の暇潰しなどにお勧めか。 ただ一つ恐るべきは、小説の主題になっている、 マキャベリを越える究極の政治支配マニュアル「至上権利論」を 巻末に収録してしまっている(!)ところでしょうか。 誰かこれで世界を支配してみては。;-)

Aug 10th(Tues.)

あの大騒ぎの中、可決が行なわれたらしい。 そうまでして通したい通信傍受法案って何なのだろうか? あれが採決だったのかどうか、ちゃんと手を挙げてたか、 などという議論をしているようだが、 問題はそんなことじゃないと思う。 そうまでして何故通したいんだろうか?

「スコップ」は大阪弁であると聞いて驚く。 じゃあ、標準語ではあれを何というのだろう。 「小さなシャベル」? 「押しピン」も大阪弁だそうな。標準語は「画鋲」。

朝はチェロのレッスン。二週間チェロを弾いていなかったので、 散々なありさまだった。 午後は三条で本屋を見たり、Cafe Riddle でバニラのババロアを 舐めながら本を読んだり。

今日の読書。 「臨済・荘子」(前田利鎌/岩波文庫)。
昭和初頭に「宗教的人間」というタイトルでベストセラーになった利鎌の著書から、 臨済と荘子を題材にした章を抜きだして再刊したもの。 気迫がこもっていて面白い。ただ、 臨済・荘子の言葉なのか、 利鎌の言葉なのかごっちゃになってしまっているのが不満。 臨済没入、荘子没入という気迫の裏返しなのでやむをえないのだが。


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