1998 Feb.後期 (Arcana 18)

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Feb. 21th (Sat.)

昨夜、22時頃に猛烈な睡魔に襲われて寝床に横になったら、 そのまま完全に眠り込んでしまって、 気がついたら朝の7時過ぎだった。 いやあ、よく寝た。 もともと身体は丈夫な方なのだが、最近疲れやすいみたいだな、、
朝食前にメイルのチェックのため接続。 かなり久しぶりに IRC で某所に顔を出す。 東京の学生登山家Mさん(♂)と、早起きで有名らしいMさん(♀)がいた。

午後から河原町や寺町の辺りをぶらぶらして、夕方に帰宅。 PHS に二度ほど入電があったが、二度とも取った途端に切れた。 最近、多いなあ。悪戯電話だろうか。

僕が国産でベストの出来と思うミステリの一つに 都築道夫の「七十七羽の烏」のシリーズ三作がある。 主人公は「ものぐさ太郎」の末裔と自称する男で兎に角ぐうたらなのだが、 大金持ちなので働く必要もない。 しかし親が何とか真当な仕事をして、世の中の役に立ってくれと頼むものだから、 「心霊探偵」を始めることにする。 全然仕事がないだろうと思っていたのだが、奇妙な事件が持ちこまれる、、、 という感じの設定。
このシリーズはひたすらに洒脱で、洒落者都築の面目躍如、 しかも名評論「黄色い部屋はいかに改装されたか」 で示したモダン=ディティクティブ論を実演してみせた傑作なのだが、 何故か絶版。 普通、絶版の憂き目にあっている知る人ぞ知る傑作というのは、 実は大したものではないことが多い。 本当の傑作は必ず読者を一定数獲得できるもので、 そうそう絶版のままになるものではない。
しかしこれは例外。 多分、都築の「モダン=ディティクティブ」 の発想が当時には斬新過ぎたのだと思う。


Feb. 22th (Sun.)

九時頃起床。最近、早起きぎみ。 早起きすると何だか一日が長くなったような気がして、 ちょっと得したような錯覚がある。 まあ、またすぐ夜型に戻るだろうけど。

今日も本屋やCD屋を冷やかしたり、洗濯したり、掃除したり、 料理を作って食べたり、という穏かな一日だった。 やっぱり穏かな日常が一番ですよね、、、

「童なりし時は、思うことも童の如く、語ることも童の如く、 論ずることも童の如くなりしが、我人となりて、童たることを捨てたり」
童たることを捨てたり、か、、、


Feb. 23th (Mon.)

朝七時半起床。 BKCへ。九時半から修士論文の公聴会。 質疑応答を入れて一人二十分づつなのだが、 僕の所属するグループでは二十人くらいもいたので、 終わったのは夕方。さすがにぐったり。

先週今週とやたらに多忙なのに、ちょっと暇を見つけては、 妹にもらった PlayStation の「甲殻機動隊」に逃避。 未だにトレーニングモードの全 6 エリアが完走できず。 やっぱりシューティングは向いてない。

あ、明日はゼミだった。こんなことをやっている場合では、、


Feb. 24th (Tues.)

午前中は今日のゼミで話すことの整理。 昼食を作って家で食べてから、京大数理研へ。

ゼミでは僕が Gaveau らの論文の紹介の続き。 ルート系の対称性が入ったユークリッド空間上に L_2 関数空間を 設定するところまで。 その後、小林君が今計算していることの最近の進展を報告など。

正六角形はなぜ美しいか、と言うとそれはもちろん、 線対称軸を三つ、さらに六回の回転対称性を持つからだ。 正六角形の向かい合う頂点同士を直線で結ぶと、 正三角形六つから成っていることがわかる。 それが上に言った線対称と回転対称性を全て伝えている。
でも次のような考え方も出来る。 この絵をじっと見ていると立方体の透視図に見えるではないか! すなわち、正六角形は三次元立方体の射影なのだ。 つまり正六角形の持っている対称性、すなわち美しさは、 三次元の格子の持つ性質が二次元に射影されたものだ。

問題。四次元の立方体(超立方体)を、 今と同じように(つまり、向かいあう頂点を結ぶ方向に) 三次元空間に射影するとどんな図形になりますか?


Feb. 25th (Wed.) Many hands make light work.

午前中は家事をまとめてこなし、 午後はBKCで雑事をまとめてこなす。

RSA 社の DES Challenge II。 90% に及ぶ鍵空間が走破された所でついに解読されました。 こちらを 参照。

「去年、マリエンバードで」と言う謎な映画があって、 二人の登場人物か次のようなゲームをするシーンがある。
マッチ棒を七本、五本、三本、一本の四つの山に分けて置く。 ここから交互にマッチ棒を取り除いていくのだが、 一つルールがあって、一度に一つの山からは何本取ってもよいが、 二つ以上の山にまたがってマッチ棒を取ることはできない。 例えば、先手の第一手では、 五本の山から一本でも二本でも五本全部でも好きなだけ取ってもよいが、 五本の山から二本、一本の山から一本の合わせて三本などと、 一度に二つの山にまたがってマッチ棒を取ってはいけない。 こうして交互にマッチ棒を取っていって、 最後に残ったマッチ棒を取らされた方が負けになる。
さて問題。このゲームは先手必勝か?後手必勝か?


Feb. 26th (Thurs.)

朝七時起床。朝食の仕度をして、BKCへ。
九時半から卒論の公聴会。 夕方まで拘束されたが、結構面白かった。 数学の話は自分と少し分野が違うだけでちんぷんかんぷんなことが多いのだが、 コンピュータの話はたいてい何をしたいのかが分かるし、 たまに興味を引く話もあるのでそう退屈はしなかった。

数学の専攻では普通、卒論に当たるものはない。
理由は多分、学部卒業のレベルでは何も出来ないからだと思う。 たいてい卒業研究という名前がついていても、 実体は何かテキストをゼミで読むくらい。 相当出来る学生でも論文を読み、指導教授に色々しごかれるという程度だろう。 修士論文に至っても、かなり出来る学生はどこかの journal に投稿できる レベルの論文を書くこともあるかな、という所ではないだろうか。 少なくとも僕が修士課程の頃は、後でもうちょっと出来れば、 英語に直して journal に出せるかな、というくらいの論文を日本語で書く、 というのが相場だった。 多分今は、博士号をもらってようやく仮免許で路上教習くらいの感じだと思う。 それは数学が難しくなっているからだという話もあるが、 数学者の卵にとっても数学以外にやるべきことが多すぎるのではないか、 とも思う。 ある意味で昔は単純だったのだ。
もちろん、その方が人生としては美しい。


Feb. 27th (Fri.)

朝七時起床。朝食の仕度をしてBKCへ。
九時半から卒論の公聴会二日目。 僕の属するグループは午前中で終わった。 午後は学系会議と人事会議。

夜は数学科の宴会に参加。入試の採点の打ち上げと、 数学科に数年客員していた経済の先生のお別れ会と、 四月から数学科に赴任するA君の歓迎会を兼ねて。 ちなみにA君は大学院での僕の同期である。 九時前に一次会はお開きになったが、 酒豪連は宴会の途中で綺麗な女主人が挨拶にやってきたバーに、 飲みなおしに繰り出したようだった。 もちろん、僕はおとなしく帰宅しましたとも。

今日の読書。「ナイン・テイラーズ」(D.L.セイヤーズ)。
セイヤーズは細部まで考え抜いて、 ちょっと風変りで巨大なカードの城を組みたてるような全体性が特徴で、 軸になる大トリックみたいな派手さはないので好みが別れるところだ。 僕は彼女の推理という過程自体、探偵小説の枠組自体を皮肉って行くような 態度が好きなので、ブランドと並んで気に入っている作家である。 創元推理文庫の新訳の後書では、 京極夏彦の「魍魎の匣」が引き合いに出されていたりするので、 そのスジの方にもお勧め。

うーむ、凄い棋譜だな、、、 でもこれ何処かで見たことある。 実際にあった試合だったと思う。 もちろんこの奇妙なエンディングを読み切って、 もっと早く投了したのだが。


Feb. 28th (Sat.)

金沢のKさん、お元気なのだろうか。 ちょっと大変そうだが。

早起きの癖がついてしまったのか、七時に起床。
朝食をとりながら、最後の配線。 消耗品購入費でコンピュータを作ってやるぞ計画完了。 最初に電源を入れた時には動かなくて、ちょっと冷汗が流れたが、 SIMM メモリを差すバンクを間違えており、 メモリを差しなおしたら無事に起動。 SIMM は若い番号から差すものだと勝手に思っていたが、 マニュアルを読むとこのメインボードは SIMM3 と SIMM4 のペアが、 最初のバンクらしい。 しかもボードのシルクプリントでは、バンク番号が間違っていた (またはマニュアルの方が間違えているのかもしれない)。 うーん、なんかいい加減な製品だがそんなものなのだろうか。 ちなみにメインボードは GIGABYTE 社の GA-586ATX3。
わりに時代遅れの構成で部品を集めたので、 十万円くらいで出来てしまったが、こんなに安くあがるのなら、 もう一段早い CPU を買うとか、VideoCard をいいのにするのだったか。 構成は GA-586ATX(MB), K6-166MHz(CPU), Mem64M(SIMM32*2MB), S3-Virge/DX(VideoCard), Fujitsu の 3GB(IDE-HDD), Teac の24倍速(IDE-CDROM)、その他。 AMD 社の K6 は Socket7 にさせる PentiumPro 互換品で コストパフォーマンスも良くて人気があるようだが、 去年生産したいくつかのロット番号でバグがあるらしいので要注意。

最近の $1000 パソコンには負けるがわりと安く出来るし、 自分の思い通りの部品を選べるし、 色々トラブルが起こってくれて問題解決の喜びが味わえるし、 もしかしたら動かないかも、、保証書もないし、、 あ、煙ふいてる、、、 と言ったデンジャラスな気分も味わえると良いことづくめなので、 もう一台マシン買おうかなという貴方にAT互換機自作をお勧めします。


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