1999 Feb. 前期 (Arcana 18)

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過去のお言葉

Feb. 1st (Mon.)

午前中はチェロのレッスンに行く。 音程がかなり整ってはきたが、まだ三指でとる音が低くなりがち。 午後は京大数理研に T 師匠に会いにいく。 翻訳の原稿を渡したり、コンピュータの設定をしてあげたりして、 数学の話などをする。 師匠は好調のようで、御機嫌で最近の研究結果を説明してくれた。

鶏肉の炊き込み御飯に、 鷄の皮を炒めた油で野菜の千切りを炒め、 大根、人参と油揚の味噌汁を作って夕食にする。 反省点としては、 ちょっと炊き込み御飯の味つけが薄過ぎたか。

昨日書いた問題は、かなりデリケートらしいとの感触。 確率論の言葉に翻訳すれば、 「二次元の円板でも変てこな脱出分布になるような 拡散過程が作れてしまう」、という調和解析の論文を発見。 一見簡単そうに見えたのだが、 色んなことが綺麗に行く調和解析の、 綺麗に行かない部分の問題か。 あまり真面目に関わらない方がよいような気もするが、 自然な疑問だけに確率屋としては気になるなあ。

Feb. 2nd (Tues.)

久しぶりに大学に行く。 論文を読んだり、卒研の質問に対応したり。

本日の朝昼食。ベーコンと目玉焼き、大根と油揚の味噌汁、炊きこみ御飯の残り。 夕食。豚汁とジャーマンポテト。 今日の反省点。豚汁とジャーマンポテトはそれぞれ完璧だったが、 組み合わせがいま一つ。そこまで頭がまわらなかった。

今日の読書。短編「海豹島」「黒い手帳」(久生十蘭)。 十蘭の短編はまさに神技だと思うのだが、 僕の個人的なベストは上の二つに加えて「母子像」「予言」「ハムレット」 …と挙げようと思っていたが、傑作が多すぎて無理だった。

Feb. 3rd (Wed.)

寒い。猛烈に冷たい風が吹く。 トレンチコートと襟巻、手袋で防寒対策をして学校に行くが、 BKC は山科以上に冷たい琵琶湖渡りの寒風が吹いている上に、 雪まで降ってきて物凄い。 芋蔓式に見つけた随分昔の複素関数論の論文を研究室で読む。

朝昼食はベーコンエッグとハッシュポテト、大根人参油揚の味噌汁、納豆。 夕食、カレーライスと葱ともやしの味噌汁。 ハッシュポテトとは、じゃが芋を細く千切りして、 フライパンでまとめるようにして焼いたものだと思っていて、 その通り作ってみたのだが、ちょっと違ったかな… これはこれで美味しかったが。

今日の読書。「さらば愛しき女よ」(チャンドラー)。 チャンドラーってたまに読みたくなりますね。

Feb. 4th (Thurs.)

寒いったらない。雪が降っている。一面雪で真っ白である。 山科は小さな盆地であるが、周りの山も雪をかぶり、 雪のすり鉢の底にいるようである。 午後から雪の中、出勤しようと表に出てみるが、 駅でダイヤが一時止まっているのを見て、気持が萎えてしまい、 家に戻ってくる。 そういうわけでずっと家にいた。 数学をしたり、チェロを弾いたり。 暖房を入れても指がかじかむ。

僕の兄弟子にあたる S さんが新年から O 大に講師として就職したので、 内輪で関西歓迎会をしよう、というようなことを T 師匠と話していたのだが、 急拠メイルなどのやりとりでこの土曜に決定。 T 師匠と、O 大講師の A さんと一緒にお祝いする予定。

日本では怪談といえば夏だが、欧米では冬なんだそうですね。 そういわれてみると、冬の方がもっともらしい気がしないでもない。 いや、夏の燦々と太陽の輝く暑い季節に怪談を聞いて涼しくなろう、 という発想が妙ちきりん過ぎるような気もする。

Feb. 5th (Fri.)

午後から BKC へ。 論文をコピーしたり、雑務をこなしたりしている内に、 学系会議の時間。 I 御大と雑談などして帰宅。

私の祖父はヴァイオリンを弾いたらしいが、 東京音大を出た後、どこかの楽団で弾いていたのか、 それとも小学校かなんかで音楽でも教えていたのか、 その辺りはよく知らない。家業があったので、 一番ありそうなのは学校を出てから 「何もしていなかった」ということだろう。 家業は原庄組という建設会社で、 一時は加太の実家から地所だけを通って大阪まで行けたという財も、 当時もう大きく傾いていたはずだが、 まだそれくらいのことは許されただろう。 もっともそのせいで最後の財も尽きたのかもしれないが。 僕の父も叔父たちも何も言わないので良くわからない。 病気で早逝したし、 理由はわからないが祖母も若くして同じ頃に死んでおり、 そのせいもあるのか、 子供達にあまり評判が良くないらしく、 どんな人だったのかあまり聞いていない。 僕がチェロを習い始めたと言うと、 親などは少しだけその祖父のことを口にしたが、 やはりあまり良い思い出ではないらしく、 すぐに口を閉ざしてしまった。 どんな人だったのかほとんど何も知りはしないのだが、 チェロの練習をしている時にふとその見知らぬ祖父のことを 考えたりする。

Feb. 6th (Sat.)

夕方から桃山の T 師匠宅へ。 兄弟子の S さんの「関西へようこそ」会。 もう一人の参加者、 0 大の A さんは岡山でのシンポジウムから 駆けつけたそうで、黍団子のお土産持参であった。 岡山のシンポはグラフ理論関係のもので面白そうだったので僕も行きたかったのだが、 金曜に外せない会議が入って残念ながら行けなかったので、 A さんにシンポの様子などを聞いておく。 T 師匠宅では奥様の手料理をいただき、楽しい夜であった。 S さんには関西でもその実力を発揮して活躍していただきたい。 23 時頃帰宅。

明日朝から入試採点開始。終わるのは次の土曜日。 まだ風邪が抜けきらず、体調が万全とは言えないので、 身体が持つかちょっと不安。

Feb. 7th (Sun.)

朝から BKC へ。入試の採点。午後は衣笠キャンパスに移動して入試関係の仕事。 入試採点に関しては色々と話題があるのだが、 まだ入試が終わっていないことであるし、 機密事項に関わるかもしれないので自粛。

夜、近所のスーパーで食材を買って帰宅。 鯛のアラが特売 100円だったので購入。 今日の夕飯。鯛の頭の煮つけ(半身だったのでかぶと煮とは言えず)、 キャベツと豚肉のみりん蒸し、湯葉と大根の味噌汁。 今日の反省点、なし。 実は魚の煮つけを作ったのは初めてだったのだが、完璧の仕上がりであった。 下北沢の「明日香」の板前さんに、 だしをひたひたより少ないくらいにして、 それを匙ですくって鯛の身にかけながら煮る、 など色々とコツを聞いたことがあったので試してみたのが良かったのかも。

明日にそなえて今日も早く寝ます。

Feb. 8th (Mon.)

朝から BKC へ。夕方まで入試採点。 朝九時から夕方五時までいっぱいいっぱいに働くと、 さすがにもうそれ以外の時間では何もしようという気になれない。 でも普通の勤め人の方々というのはそういうものなのだろうか。

鯛のかぶと煮は正式にも左右、半分に割って作るものらしい。

猫文学と言うと、その他に「夢先案内猫」(レオノール・フィニ)とか。 文学というよりミステリだが、角田喜久男にそのものずばり「猫」 という作品がある。 ミステリで続ければ、有名な所で「九尾の猫」(クイーン)。 同じくクイーンでもひねった所で短編「七匹の黒猫の冒険」。 日本では「猫の泉」(日影丈吉)、「猫は知っていた」(仁木悦子)、 猫ものを集めた短篇集では「猫に関する恐怖小説」(仁賀克雄編著)、 「猫のミステリー傑作選」(鮎川哲也編)など。 まあ、猫はあまり好きではないので、 ほとんど持ってはいませんが。

さて、ここで問題です。
日本で初めて猫が登場する最も古い文献は何でしょう。 解答は明日。

Feb. 9th (Tues.)

まず、昨日の問題の解答から。
日本において初めて猫が登場した最古の文献は 「日本霊異記」である。 すなわち、日本人にとっての最初の猫は文献上は化け猫であった。 物語としてではなく現実の猫が最初に文献に現れるのはそれよりも後で、 「宇多天皇御記」に唐土から送られた黒猫を 孝光天皇が愛でたという記述があるのが最初である。 枕草子や源氏物語にも猫が登場するが、「御記」よりも後。 某 A 社の S さんが正解「日本霊異記」をメイルで報せてくれた。 インターネット上で検索して発見したそうである。 最近はこんなことでも百科事典より早く調べられるんだなあ。

朝から BKC へ。 朝、駅でぼーっとしていたら、うっかり湖西線に乗ってしまい、 えらい目にあった。夕方まで入試採点。

Feb. 10th (Wed.)

朝から入試採点。夕方まで採点を続け、夜になって I 先生と一緒に帰る。 明日の祭日は採点が遅れた場合の予備日だったのだが、 今日までのはかどりが一応予定通りだったので休みをとれることになった。 よかった、よかった。

昔、白井君に借りてもらった本が見当たらない。 家の中にあるはずなのだが、下北沢から大量の本を運び模様替えをしたため、 探索作業は難航を極めている。 今日の夜にかなりひっくり返してみたが見つからない。 なんと、同じく白井君に借りてもらって一年以上返していない別の本が 見つかったり。 学校の僕の研究室か、または T 師匠の部屋という可能性もある。 僕の研究室は以前はほとんど何もなかったのだが、 今年で退官するI 先生に山ほど本をもらったので、 やはりどこかに紛れている可能性もあり、 T 師匠の部屋はエントロピー最大の状況なのでこれもまた見つかり難そうだ。 いや、困った。


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