1998 May.前期 (Arcana 18)

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過去のお言葉


May 1st (Fri.)

今日もモンロー・D・アンダーウッド爺さんの警句。

最近ずっと早起きだったのだが、 昨夜の疲れか今日は正午まで眠ってしまった。
チェロの練習をちょっとだけ。 (*1) き、ら、き、ら、ひ、か、るー、よ、ぞ、ら、の、ほーしーよ、、、
昼食は近所の「イカール館」で。

午後は HTML4.0 Specification を読んだり。 構造(structure)と表現(presentation)の分離など、 思想としては非常に結構なことだと思ったが、 Netscape でも IE でもロクに対応していないようで、 どうなっていくことやら。

なんだか急に色々と仕事が勃発して来たし、 数学も早く纏めなくてはいけないようだし、 私事のレベルでも様々に難しいことがあり、 悩みはつきぬことであるなあ、、、

(*1)きらきら星: 弦楽器の最初の練習曲になることが多い。 理由はもちろん「簡単だから」。 チェロの場合は、G, G, D, D, E, E, D,,,
May 2nd (Sat.) - 3rd (Sun)

二日土曜日、いつもの通りの一日を過ごしていると、 天才プログラマK氏より電話で、 Hさん夫妻と四人で一緒に食事に行くことになる。 自由ヶ丘の謎のインド料理屋で、非常に常習性の強い味わいのカレーを食べた。 その後、Hさん宅に行き、結局一晩泊めてもらう。K氏は二日目だそうだが。 Hさん夫妻の愛猫キューティ(通称キューちゃん、芸名タロウ)は、 しばらく見ない間に随分太っていて、 かつてのちょっと気難しい精悍さはどこへやら、 すっかり人間が(?)丸くなって、客人にも撫でられるがまま、 ひっくり帰って眠っていた。
三日の日曜日、午後になってHさんに下北沢まで送り届けてもらう。

昨夜ちょっと話題になったのだが、ジャックダニエルズはバーボンか否か? という問題について。
今、資料(「BAR 酔虎伝」酒口風太郎)にあたった所、 結論は「法律上バーボンだが、 商習慣上はバーボンと区別してテネシーウィスキーと呼んでいる」とのこと。 詳しく解説すると、 まずバーボンの定義は連邦アルコール統制法によれば、 原料の51パーセント以上はとうもろこしを使用し、 アルコール度数40度以上80度未満で蒸留し、 オーク材の内側を焦がした新しい樽に詰めて寝かせること、 などなどである。 この定義をジャックダニエルズは完全に満たしているので、 法律上はバーボンと呼んでもいいのだが、 一方ではケンタッキー州バーボン群産でない以上、 バーボンとは呼び難いし、実際ジャックダニエルズの産地 テネシー州リンチバーグではバーボンではなく、 絶対にテネシーウィスキーであると譲らないと言う。 ジャックダニエルズの成分は51パーセント以上のとうもろこし、 あとはライ麦と大麦茅のブレンドでバーボンと同様だが、 蒸留酒を砂糖楓の炭で瀘過するなど、 蒸留した後の処理方がバーボンと異なっているそうだ。 余談だが、ジャックダニエルズのラベルの真中に No.7 と書かれているが、 その意味は創始者ジャック=ダニエルズがついに語らなかったため、 不明であるとのこと。

まあどっちにせよ、安くて良い酒だよね。それが肝心。
しかし、HさんとKさんは本当に良く呑むなあ、いつも感心します。


May 4th (Mon.) - 5th (Tues.)

4日(月)、朝チェロを練習して、午後はぼうっとしていた。 夕方から某パーティに参加のため、池袋西武に向かう。 待ち合わせ場所が分からなかったので、 関係者が喫茶店で休憩している所に飛び入り。
パーティは池袋の芸術劇場近くの会場だったが、 僕は一時間くらいで次の約束があったので抜けさせていただいた。

その後、新宿に移動。またもや待ち合わせに失敗。 30分近くを使って、ようやく九時頃にルミネで会うことができた。 どうして、僕はこう方向音痴なのだろう。 特に新宿が鬼門のような気がするのだが。
お寿司を食べて帰宅。

5日(火)、今日で連休も終わり。 明日の夕方のミーティングが連休明け最初の予定なので、 明日帰ってもよかったのだが、大きな荷物も持っていることだし、 今日帰ることにする。某所に手紙を書き、電話を入れ、 下北沢をあとにする。

新幹線の中でアエラに出ている山口椿氏の紹介記事を読む。 山口氏がアエラに大々的に紹介される御時世になったか、、、 僕が山口氏に初めて出逢ったのは、 院生になったばかりの頃だから7年も前のことか、 などと変な感慨を抱きつつ京都へ。 随分と格好良く書かれた好意的な扱いだったが、 山口節にライターもすっかり乗せられたのか、 記事の文章も山口氏本人のホラ話を横で聞いているような、 おもしろい調子があったので未読の人は是非読んでみてください。 ちなみに、 この前個展をやった京都一条寺の本屋兼ギャラリーの写真も出ています。

夜、山科の本屋前から某所に電話。向こうは楽しく飲んでいるようで、 やっぱりもう一日滞在するのだったと後悔。


May 6th (Wed.) 聖ペテルスブルグは賭をするか?

今日も早起き。 少しチェロの練習をして、数学の勉強。 午後も自宅で数学を考える。
夕方から久しぶりにBKCへ。 雑務を三十分で片づけて、夕方からネットワーク関係のミーティング。

今から次のようなコイン投げの賭をしよう。
1回目で表が出たら、2円もらえる。 2回目で初めて表が出たら、4円もらえる。 3回目で初めて表が出たら8円、 4回目で初めて表が出たら16円、と以下同様で、 一般に n 回目で初めて表が出たら2の n 乗円もらえる。 この調子で表が出るまで続け、表が出たところで、 賞金をもらって終了である。 さて、問題。この賭の参加費はいくらが適当か?

期待値(平均の収入)を計算してみよう。 n 回目で初めて表が出る確率は、2の n 乗分の1で、 その確率で2の n 乗円もらえるから、 期待値は (1/2)*2 + (1/4)*4 + (1/8)*8 +...= 1 + 1 + 1 + ... となって無限大である。 したがって、この賭はべらぼうに有利な賭で、 参加費がいくら高くても参加するべきだ、、、

この議論は何処がおかしい?


May 7th (Thurs.)

午前中に起床。ちょっと数学の勉強をして、チェロの練習。 今日の課題曲は春の小川、賛美歌108。

午後は京大数理研へ。T師匠とゼミ。 あまり成果がなかったので、ほとんど雑談。 夜一緒に食事して帰る。
三条の Cafe Riddle で一服しながら、 今朝白井君から聞かれた質問について考える。 確率過程の爆発の問題で、 多分正確には tightness と呼ばれる量の評価をするのだが、 うまい変形でマルチンゲールに持ちこんでいるので、 もっと素朴な手を使うのかな、、、

昨日のコイン投げの問題は「聖ペテルスブルグの逆理」 と呼ばれている。 結論は「この問題は期待値だけから判断できない種の問題である」 というだけなのだが、妥当な参加費はあるはずで、 未だに納得できる参加費の計算法を知らない。 まず、誰もが思うのが、表が出るまで続ける、 という所。どうも無限に長い試行の可能性があって、怪しい。 ここをきちんと評価するのだろうか? しかし、それは違うような気がする。 例えば、この試行は100回までと天井を決めても、 期待値の100円を参加費にするのは高すぎると思われるからだ。 100 円回収しようと思えば、2 の 7 乗でようやく128 となって、 100 円を越すから、7 回目以降で初めて表が出る必要がある。 しかし、6 回も連続で裏が出そうにない。 一体どうやれば、妥当な参加費が計算できるのだろう。 ラプラスの本には、 現状の本人の資産に依存する「精神的期待値」という量を導入して、 計算しているのだが、この方法もどうも納得できない。 本当に知りたいと思っているので、誰か教えて下さい。


May 8th (Fri.)

朝は数学の勉強とチェロの練習。 今日は湿度が高いせいか、音がくぐもっている。 僕のような全くの素人にもわかるくらいだから、 弦楽器はよほどデリケイトに出来ているのだろう。 チェロの弓は白馬の尾の毛で作られているのだが、 湿度計も馬の尾毛を使うくらいだから、 湿度の影響は明白かもしれないが。
チェロを鳴らしていると思うが、 弦の振動はまさに数学の問題で、それがどこか不思議だ。 (実際、二階微分作用素の固有値と固有関数の問題である) ドレミファソラシド、という音階も数学的な結果だ。 弦が震えて鳴っているのが目で見える分、 さらに何か不思議だ。あたりまえのことなのだが、 それが実際に現前する不思議、とでもいうか。

午後からBKCへ。外は雨。大学院の内部進学者の面接。 その後、ちょっと図書館で雑誌を探していると、 たまたま別の面白そうな論説を発見して読みふける。 「Jack 多項式」の話題だったのだが、これは重要なのでは、、、 白井君にでも聞いておこう。

ペテルスブルグの逆理に対し、某A社のSさんより反応あり。 n 回までという天井のあるゲームを1セットとして、 それを何回か繰り返すという試行について考察することで、 何か評価の手がかりがあるのではないか、とのこと。 数学的には1セットを繰り返すということ自体に意味はないと思うが、 心理的な効果を上手く計る方法かもしれない。


May 9th (Sat.)

昨夜、ずいぶん御無沙汰に某KO大のN先生からメイルで御連絡があり、 元気そうで安心した。僕と生年月日が同じ奥さまにも宜しく。

と思っていたら、深夜、某A社近くの毒ビール屋「ブ○ッセルズ」から入電。 女の子達数名に囲まれている天才プログラマK氏からだった。 いいなあ、、、(何が?)。 向こうが酔っぱらっていたので、内容は今ひとつ不明だったが、 「最近、日記がつまらないぞ」「人のことはともかく自分のネタを書け」 「読者の知識を考慮して易しく書け」 などが電話の主旨だったのだろうか、、、 そろそろ鱧の季節も始まるので、また京都に遊びに来て、 新鮮なネタを提供してください。
しかし、よく呑む人達だよな、、(結論は同じ)

久しぶりに正午近くまで寝た。 朝昼兼の食事を作って食べ、少しチェロの練習をして、 三条方面に外出。 今日は京都にしては気持の良い晴天だったので、 四条河原町からさらに四条大宮の方まで散歩。

帰りに三条でチェロの教則本などを買って、 Cafe Riddle で一服して帰る。


May 10th (Sun.)

午前中からチェロの練習。間に昼食の休憩を入れて、 また三十分ほど練習。 未だにまともな音が鳴らないのだが、 だんだんとそれらしくはなってきているような、、、 一応スケールもドレミファソラシドに聞こえるし(そんなレベルかい)

村上春樹がどこかに書いていたのだったか、 どんな本を読んでも映画を見てもそこに何か 「教訓」を読み取ろうとしてしまう、とか。
例えば、以下の有名な小噺の教訓はなんだろう?

岸から蠍が川を泳ぐ蛙に声をかけた。
「向こう岸まで背中に乗せていってくれないかい」
蛙が言うには、
「そういって僕を毒針で刺して殺す気だな、お断りだね」
「そんな馬鹿な。君を殺したら僕も溺れ死んでしまうじゃないか」
蛙はもっともだと思い、蠍を背中に乗せて川を渡った。 ところが川の真中まで来た所で、蠍は蛙を刺した。 蛙は溺れながら叫んだ。
「どうしてなんだ!君も溺れ死んでしまうんだよ、、」
蠍も溺れながら答えるには、
「ごめんよ、これが僕の性なんだ、、、(Sorry, It's my nature...)」


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