1998 Oct. 後期 (Arcana 18)

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過去のお言葉

Oct. 25th(Sun.)

午前中はチェロをさらって、午後から膳所でレッスン。 まだ左指に力がついていないせいで、 弾いている内に疲れて手が縮んでしまい、うまく音程がとれない。 あとは兎に角、時間をかけて指を鍛えるしかないです、とのこと。 冗談なのか本気なのか、軟式テニスのボールをずっと握っているといいです、 ともおっしゃっていた。 次回からは第二ポジションで Fis を押さえるト長調の課題に入るので、 その予習とハ長調のスケールが宿題。

一週間の疲れがたまっているようで、レッスン後は自宅静養。 こういう時には、たっぷりのコーヒー(または弱いお酒)を用意して、 穏かなイギリスあたりのミステリをソファでごろ寝しながら読むのが至福。 最近そういうゆったりとして、落ち着いたミステリがとても読みたいのだが、 なかなか新しいのがなくて、 クリスティやセイヤーズやブランド(あ、全員女性だ)を再読したりする。 ブランドは話の筋が複雑すぎてしばらくすると内容を忘れてしまうので、 こういう目的に最適だし、 子供の頃にはあまり面白く思えなかったクリスティの地味な作品、 例えばハーリ・クィン登場の短編とか、晩年の長編とかも今読むと味わいがある。 なんだか、アバンギャルドを読むのが辛くなってきて、 その上たいして面白いとも思えない今日この頃、 やはり年をとったのだろうか。

Oct. 26th(Mon.)

午前中はチェロをさらって、午後からBKCへ。
ファイナンス研究会に参加して、同僚(学科は違うが)のAさんの講演を聞く。 新しい話ではなくて、数理ファイナンスを知らない人向けに、 ポートフォリオ理論、CAPM 理論、ブラック=ショールズ理論へという発展を 紹介すると言った内容だった。 ブラック=ショールズそもそもの発想は、 オプション価格の設定問題を、伊藤の公式と無裁定原理を用いて 偏微分方程式を解くことに持ち込むものであって、 マルチンゲール化測度などを用いる確率論的なやり方は、 その後に他の人達に再解釈によってなされたのだそうで、 そこはちょっと意外だった。

その後は一週間でたまった雑務をこなして、帰宅。

この週末締切くらいの仕事が山積み(泣)

Oct. 27th(Tues.)

午後からBKCへ。留学生数学の後、暗号ゼミ。 院生の T 君に聞いた所によると、卒研希望者はまあまあ集まってきているそうだ。 少なくとも院生室あたりに見学には来たらしい。 (他の研究室と違って見るものはないが)

猛烈に多忙なはずなのだが、こういう時に限って逃避行動が多い。 本の整理中に発見した詰碁の本を読んでみたり、 この方の日記 に触発されて「招かれざる客たちのビュッフェ」(ブランド) から短編を再読してみたり、 文庫本の山から「兎料理は殺しの味」(シニアック)を発掘してみたり、 「見えないグリーン」があるはずなのに見えなかったり。 「見えないグリーン」に登場する探偵の名前は サッカレイ・フィンだったと思うのだが、作家の名前は思い出せない。 ところで、「招かれざる、、、」 は僕の短篇集ベスト10には確実に入る大好きな短篇集だなあ。

意味はないが、突然今読み返したい短篇集たち 1 ダース。 多分オールタイムベストに近い。
「ブラウン神父の無知」「詩人と狂人たち」(G.K.チェスタトン)
「思考機械の事件簿」(ジャック・フットレル)
「隅の老人」(バロネス・オルツィ)
「エラリイ・クイーンの冒険」(エラリイ・クイーン)
「謎のクィン氏」(アガサ・クリスティ)
「招かれざる客たちのビュッフェ」(クリスチアナ・ブランド)
「あなたに似た人」(ロアルド・ダール)
「顎十郎捕物帖」(久生十蘭)
「戻り川心中」(連城三紀彦)
「亜愛一郎の狼狽」(泡坂妻夫)
「血みどろ砂絵」(都筑道夫)

Oct. 28th(Wed.)

午前中は情報処理演習、 午後は情報学実験と両方ともプログラミングの演習で水曜はくたくた。 来期からは数学だけ教えてればよいようになるのだ、と言い聞かせながら、 今朝も早起きして BKC に向かう。 ああ疲れた。

疲れた身体に鞭うって、家に帰って夜も仕事。 翻訳とか報告書のまとめとか。

今読み直したい長編ミステリ、、、 一杯ありすぎて1ダースじゃ無理。 ちょっと文庫本の山に目を向けても、 「探偵の夏あるいは悪魔の子守唄」(岩崎正吾)とか、 「兎料理は殺しの味」(シニアック)とか、 「ホッグ連続殺人」(デアンドリア)とか、 「金曜日ラビは寝坊した」(ケメルマン)とか、、、 完全に逃避モード(泣)

「見えないグリーン」の作者を思い出した。 ジョン・スラデック。確か本業は SF 作家だった。

Oct. 29th(Thurs.)

自主自宅勤務。のつもりだったのだが、逃避行動の方が多かったような…
下北沢から持ってきたPCを修理。 ハードディスクが壊れていたので、余っていたものと交換。 メモリを 32M ほど追加。 引越しダンボール箱の中にあった FreeBSD の bootdisk で動作確認。

今日の読書。「ウサギ料理は殺しの味」(シニアック)再読。
フランスのとある田舎町。 この町の住人は何故か食とセックスに異常な情熱を持っている。 住民達はそれぞれに奇妙な理由で奇妙なこだわりを持ち、 時計じかけのように正確な毎日を送っている。 この地方随一の美女にして性戯の達人、 私娼館のコレットは木曜日にしか客をとらず、 しかも金は受けとらず、代金のかわりにこの町の高級デパートの 新製品のプレゼントを要求する。 兎料理が大嫌いだが、毎週木曜日に兎料理を出す天才シェフ。 自分を偉大だと信じきっている占星術師、 一人きりでは映画館を開けに行けない女管理人、 ショーウィンドウの芸術的な飾りつけに命をかける狩猟家、 一日に四回しかトイレに行けない軍需工場、、、 そんな田舎町に起こる連続殺人事件。 シェフのもとに、 「殺人事件を起こしたくなければウサギ料理を出すな」という手紙が届いたが、 殺人事件とウサギ料理の間にどんな関係があるのか?

シニアックはフランスのミステリ作家。 「ウサギ料理」の後書によれば、三作目の"Monsieur Cauchemar"(悪夢氏) には三通りの結末が用意されていて読者が選ぶようになっているとか、 二人の浮浪者が主人公のシリーズがあるとか、 「ウサギ料理」と同じ主人公が登場する "Bizar Bazarre"(奇妙なデパート) という似たテイストの作品があるとか、 フランス推理小説大賞を受賞したとか、既に何十も作品を書いているとか、 凄い作家らしいことが書いてあるのだが、 この作品以外に翻訳を見たことがない。 どうしても他の作品が読みたいので、だれか知っている人は教えて下さい。 いや、シニアックの作品をだれか全部翻訳して下さい。 ほんとうにおもしろいんだから…
(英語に翻訳されていればそれを読むという手があるかも)

Oct. 30th(Fri.)

午前中はチェロを練習。 第二ポジションから、上拡張の形を経由して第一ポジションに戻るのが、 なかなか難しい。

午後よりBKCへ。今日が締切の科研費申請の書類を作成、提出。 どうして締切当日にならないとやらないかな。
夕方から学系会議。その後、人事関係の会議。

今日で来年の卒業研究配属が決定。 なんと僕の所に確率論がやりたいという学生が一名来た。 他学科聴講でルベーグ積分論など数学の単位も取っているようだ。 なんとご奇特な…。 何か簡単で面白いネタを考えてあげたいなあ。 (ということは、来期は二つゼミを組織しないといけないじゃないか(泣))

金曜になると、さて、また一週間が終わった、と思うが、 土日にまとまった仕事をする習慣になりつつあるから、 本当は一週間の切れ目がまるでない。 明日はプログラミング、明後日はこの前のシンポの報告書作ろう。 翻訳もやって、preprint も書き始めないと、、、
今日だけでもゆっくりしよう(また(泣))


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