1999 Sept. 中期 (Arcana 18)

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過去のお言葉

Sept. 11 (Sat.) - 12 (Sun.)

京都はまた蒸し暑い週末となってどうもやる気がでず、 いや、そのせいではないと思うのだが、 だらだらと無為に過ごす。

今日の読書。「人形式モナリザ」(森博嗣、講談社ノベルズ)。
まさに無為な週末の過ごしかただった…

Sept. 13 (Mon.)

午後から大学へ。会議の後、雑務を片付け、 修論の中間発表の指導をする。

薬屋さん R 君のお勧めで、「トリエステの坂道」(須賀敦子、新潮文庫) を読む。
いや、これは大変な本を教えていただいた。素晴しい。 今までこの作家を知らなかったことが不思議だし、 恥ずかしく思う。 ここ数年で読んだ本の中で、最も良質のものであると言い切れる。 文庫の解説によれば、作者はシモーヌ・ヴェイユに深く影響され、 ヴェイユの思想を主人公の精神の芯にした長編小説を書こうとしていたと言う。 残念ながら、創作メモと最初の三十枚ほどの未定稿だけを残して、 亡くなったそうだ。残念だ。

Sept. 14 (Tues.) - 15 (Wed.)

14日(火)。午後から大学へ。雑務色々。 学生がたくさんいるなあ、と思ったら、 今日は前期の成績表が出る日だったらしい。

15日(水)、祝日。台風が近畿を直撃。 山科ではちょっと強い雨が降ったくらいであったが、 雨でおもてに出る気もしないので、 家でチェロを弾いたり、数学を考えたりしていた。

夜、ヴィデオで「日の名残り」をみる。 しみじみとした良い映画であった。 僕はどうもこういう、たそがれ系のストーリーに弱い。 老人趣味なのだろうか。 原作を書いたカズオ・イシグロは日系イギリス人。 執事を持ったこともない若い日系人がこういった世界をここまで描けるとは、 と当時評判になったと聞く。

英国の執事は激減しているそうで、 僕が持っている本によれば、 執事は1930年に三万人いたのが、1980年の段階でわずか80人になっていたと言う。 そこで、これではいかん、ということになったのか、 執事養成学校まで作られ、そのおかげかどうかは知らないが、 その後、執事は300人を越えるようになったそうだ。 しかし、残念ながらその数の執事の勤め先がもはや英国にはなく、 多くはアメリカやアラブの大富豪に雇われるそうである。 または、那古野市の西之園家に現執事の二代目として雇われて、 モエちゃんの面倒をみるとか。

Sept. 16 (Thurs.)

京都は小雨である。 昨夜は遅くまで数学など考えていたので、 起床は正午過ぎになってしまった。 夕方から三条に出て、丸善で本を買ったり。 「日の名残り」(カズオ・イシグロ、訳:土屋政雄、中公文庫)、 詩集 "W.B. Yeats" (Selected by J.Kelly, Everyman's Poetry Series)など。

ところで、貴方は詩を読みますか?
僕はあまり詩を読む習慣がないのですが、 韻文に対する憧れのようなものは持っているので、 詩を読む、または暗唱する習慣のある人を、 無条件に尊敬してしまいます。 イェイツは私がたまに読み返す数少ない詩人の一人ですが、 外国の詩の場合はその翻訳が大問題で、 イェイツの場合は幸運にも、 尾島庄太郎という名人を得たために日本人に広く愛されているのではないか、 と思います。 アイルランド(ケルト)人と日本人が同じ詩心を 持っているとまでは思いませんが、 そういった信念が良い翻訳を成功させているのは事実かも。 もちろん、原語で読むに越したことはないでしょうが。 イェイツを原語で読んだのは今日が初めてでしたが、 意外にも平易な英語で書かれているので驚きました。

Sept. 17 (Fri.)

ついに、アメリカの暗号輸出規制撤廃。

午前中はチェロの練習。気分よく "Londonderry Air" など弾いていたら、 G 弦が切れた。 もう何度も弦を切っているが、未だに慣れない。 一人で「うわあっ!」と声をあげてしまったりして、 ちょっと恥ずかしい。

午後から大学へ。研究室で数学を考えて、夕方から学系会議。

関西はまた明日から暑いそうですねえ。 来週末くらいからようやく秋めいてくるとのこと。

Sept. 18 (Sat.)

今日は私の誕生日。時のたつのは早いものですな。

正午起床。 自宅で食事を作って、チェロを弾いて、昼寝をして、本を読んだ。 うーむ、ずいぶん穏かな一日。

今日の読書。「さよならメリルリンチ」(ポール・スタイルズ)
著者はハーバード卒、国家安全保障局勤務を経て、 三十歳という少し遅れたキャリアでメリルリンチに飛び込む。 舞台は当時ブームとなっていた、 数字と債券と札束が飛び交うエマージングマーケット。 彼がウォール街のメリルリンチに勤めてから、 負け犬としてアナポリスの田舎に帰っていくまでの一年間のドキュメント。 著者の私生活と仕事の両面での悲惨と幻滅の苦闘の日々を描く。

Sept. 19 (Sun.)

昨日の深夜から今日の朝方まで、 どこかの頭のおかしい人が、 三十分に一度ずつくらい車で回ってきてクラクションを正確に三回鳴らす、 ということを続けてくれたおかげで睡眠不足。 彼は一体、何のためにそんなことをやっていたのだろうか。 嫌がらせにしては地味だし、何なのだろう。 動機は謎につつまれている。 どういう理由がありうるのか、と考えていたらいつの間にか眠っていた。 僕のアパートからはちょっと距離があったので、 それほど気にはならなかったが、 もっと近所の人は相当迷惑だったろう。

夜から丸太町の某画廊に、 山口椿氏のパフォーマンスを観に行く。 白虎社みたいな白塗りの裸の女の人が蝋燭をつけた蚊帳の中で くねくね踊っていた。 随分若い女の子達がわんさか立ち見が出るほど来ていた。 祥伝社から文庫シリーズが出るらしいし、 山口椿氏、ひょっとして今ブレイクしているのだろうか。 世も末、か…などと思ったり。 ワインを二杯ほど御馳走になり、ちょっと立ち話をして帰宅。


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