「野を越えてニューサウスゲイトに向かう一本の小道があって、
私はよくたった一人で夕日を見ようと、そしてもう死んでしまおうか、
と考えながらそこを歩いたものだった。
しかし結局、死ぬのはやめることにした。
もっともっと深く数学を知りたいと望んだからだ」
バートランド・ラッセル(数学者、哲学者)
「多くの人にとって、考えるということは結構きつい仕事である。
だから高給が支払われるのである。ところが遺憾なことに、
実際に考える仕事は他人に押しつけられてしまうのである」
J.K.ガルブレイス
「美しさとは、見せかけの形ではなく、
内部深くに宿る真実のことである」
A.ニムゾヴィッチ(チェスプレーヤー。
考案した新手の「形が汚ない」と批判された時にこう答えたと言う。
この手は現在では定跡となり、
ニムゾ・インディアン・ディフェンスと呼ばれている)
「典型的で非常に広く見られる誤解の一つは、
各一手一手が何事かを直接に成し遂げなくてはならない
と仮定していることである。
このようなプレイヤーは何事かを狙っている手か、または
狙いをかわす手だけを探し、その他の手の可能性、
例えば、ただ待つ手、自陣の秩序を計画する手、
その他様々な手を探そうとしない」
"My System" (A. ニムゾヴィッチ)より
「チェスの指し手の問題は真正の数学の問題であるが、
ある意味では『取るに足らない』数学でもある。
その指し手がどんなに巧妙で複雑な動きで、
またどんなに独創的で人の意表を突くものであろうが、
何かそこには本質的なものが欠けている。
チェスの指し手の問題は重要でないのである。
最高の数学は美しいばかりか、重い(serious)のである」
「ある数学者の生涯と弁明」(ハーディ)より
「ポカはいつでもそこに潜んでいて、指されるのを待っている」
トリンゴフ(チェスプレイヤー、ブルガリア・グランドマスター)
(1972年チェスオリンピアードの対コルチノイ戦を、
封じ手を封筒に入れ忘れるという信じ難いポカで落とした)
「投了してゲームを勝ったものはいない」
タルタコワ(チェスプレイヤー(GM))
「三十歳以上の人間を信用するな。それから三十歳以下の人間もだ」
(金融業界の基本法則)
「論理というものは耐性の強いものである。
なぜならば、それは永遠なのだから」
O・ヘヴィサイド(数学者、1850-1925)
"Finally I am becoming stupider no more"
数学者ポール・エルデシュが自分で用意した墓碑銘。
エルデシュは死ぬことを「去る」と言い、
数学の研究をやめることを「死ぬ」と言っていた。
エルデシュは死ぬことなく、1996年に83歳で「去った」。
「彼は、何が良い質問なのかがクリアーでないという理由で、
数学の研究の世界に入りたがらなかった」
(ストラウスがアインシュタインについて語った言葉)
「なにをするにせよ、悪趣味は単調よりはまだマシだ」
パブロ・カザルス(チェリスト)
「古典とは、『いま読んでいるところです』とは言えなくて、
『いま読み返しているところです』と言わざるをえない本である」
イタロ・カルヴィーノ「古典とは何か」より
「もし国民が、何らかの社会問題について声を大にして何かを非難したい、
または言いたい、
などと思っても誰かが自分の名前をファイルに入れてしまう、
そして私はこういうことを言ったということを政府に報告してしまう、
と思ったならば、その人はそのファイルに自分の名前が載ってしまうことを、
それは将来自分にとってまずいことになってしまうかもしれない、
そのように思うのはあたりまえでしょう…」
A.R.ミラー(法学者・ハーバード大学):
米陸軍が作成した治安維持のためのデータベースについての講演より。
暴動阻止のために政府がリスト作成を指示したのだが、
チェックがなかったために暴走し、
五年間でほとんど全ての米国民のリストを作成してしまった。
「幽霊は一流の芸者のようなものだ。
食べ物には手をつけず、話題だけを提供する」
(日本のことば)
「自分で問題を見つけて、自分のやり方で考えるのが好きな学生が、
例え、何年も成果があがらなくても、時には、
別の問題と取り組んだりしながらも、
やっぱり自分の問題に戻って考えることが楽しい、
というような仕事をして欲しいものです」
(伊藤清(数学者)、「数学セミナー」に部分掲載された京都賞受賞の言葉より)
「情報というお喋り婆さんが信頼できる女だとすればの話だがね」
「ヴェニスの商人」(シェイクスピア)より
「時代の風と云ふものは、かへられぬ事なり。
段々と落ちさがり候は、世の末になりたる処なり。
一年の内、春ばかりにても夏ばかりにても同様にはなし。
一日も同然なり。
されば、今の世を百年も以前のよき風に成したくとも成らざる事なり。
されば、その時代時代にて、よき様にするが肝要なり」
「葉隠聞書」(山本常朝)
「君は資産の1パーセントのリスクをとることができるし、
5パーセント、10パーセントのリスクをとることもできる。
しかし、リスクをとればとるほど、結果は変動しやすくなる」
エド・スィコータ(トレーダー)
「ただ音階だけを弾いて。私とあなたの間に誰もいないように」
(ヴァイオリニスト、ティボーの恋人の言葉)
「私がアウアーのレッスン室に入っていった時のことです。
その部屋は美しい家具にあふれていましたが、
床に私の粗末なヴァイオリンのケースを置いた時です。
彼は私に跳びかかるようにして、こう言いました。
『駄目だ、そんなことをしては。どんなに安いヴァイオリンでも、
高価な椅子よりは価値があるんだから』」
ベンノ・レビノフ(ヴァイオリニスト)
「勝つための基本的なルールが二つある。
一つ、賭けなければ勝つこともない。
一つ、全てのチップが無くなれば、もう賭けることはできない」
ラリー・ハイト(トレーダー)
「極悪人、数学者とその類似の者たちについての法律」
六世紀頃、東ローマ帝国で制定された法律。
数学者の活動を禁じ、
数学者と会話すること、付き合うことなども罰せられた。
人心を惑わす妖術師の類と見なされていたのだろう。
「鴎外の文章は非常におしゃれな人が、非常に贅沢な着物をいかにも
無造作に着こなして、そのおしゃれを人に見せない、…」
欝蒼としげつた森林の樹木のかげで/
ひとつの思想を歩ませながら/
仏は蒼明の自然を感じた/
どんな冥想をもいきいきとさせ/
どんな涅槃にも溶けいるやうな/
そんな美しい月夜をみた。/
「思想は一つの意匠であるか」/
仏は月影を踏み行きながら/
かれのやさしい心にたづねた。
「思想は一つの意匠であるか」(荻原朔太郎「青猫」より)