UFO Microwave Oven

UFO型電子レンジの魅力

Apr.1997

おぱく堂主人・白龍亭主


●画期的なUFO型

 電子レンジというと「四角くて前面にドアがある」のがあたりまえであるが、かつてこの常識を超えた製品があった。シャープ・カプセルレンジ。
 電気屋の店員は「不人気だ」と言っていたが、この強烈な個性にとりつかれた自分は製造中止になった時にあわてて買った。「おぱく堂主人って野郎はなんか変なもんばかり買ってやがるな」てなことを今思っただろ(笑)。しかしメカマニアたる自分は、設計者のビジョンが見えないような安易な商品には手を出さないのさ。

カプセルレンジ

 不人気の原因は、おそらく、一見実用性がなさそうに見えるこの形だろう。
 しかし、使い方によってはこれほど実用的なものはないのである。電子レンジの新たな使い方を提案した商品だったのだ。雑誌では「オシャレな生活」特集などで扱われていたが、決してオシャレなだけではない。その実用性と魅力について、毎日これを使っているユーザーとして語ることにする。


●きわめて日本的な実用性

 カプセルレンジWith2。正式名称 SHARP RE-2。
 いきなり余談になるが、REと聞くとどうもマツダのロータリーエンジンを思い浮かべてしまう。車好きゆえかもしれない。しかし、このレンジを上から見るとまさにロータリーエンジンなのだ。中で皿が回るのだが、それを支えているローラーが三角形の頂点の位置にあって、まるでローター!

 話を戻す。
 このUFO型電子レンジの実用性を理解するのは、実は簡単である。似たようなものが台所に存在するからだ。
 何に似ているのか?
 上に向かってフタが開くもの。そう、米を炊く釜である。

 お釜は台所に置きっぱなしというわけではない。
 和室の生活ならばちゃぶ台の横まで持ってきて使う。この電子レンジもちゃぶ台の横まで持ってきてそこで食べ物を温めることができるのだ。
 洋室の生活ならば、オプション部品の足を追加してテーブルの横までゴロゴロと引っ張ってきて同じように使う。わが家はこちらである。ま、狭いのでわざわざ引っ張ってくるまでもなくテーブルに座って振り向けばいつもそこにあるのだが……。

 電器釜と同じように使う。
 これを理解しないまま、箱型の電子レンジと同じように台の上に置いたまま使おうとするから「変なカタチ」という話になってしまうのだ。実際、手前から出し入れすることを前提とした場所に置くと、上から出し入れするこのレンジは使いづらい。
 その意味で、これはきわめて日本的な商品である。
 これが受け入れられなかったということは、日本人の生活がすでに日本的ではなくなってしまったのか、あるいは電子レンジ=箱型という常識から抜け出せないほど思考が硬直化してしまったかのどちらかとしか考えられない。どちらにしてもちょっと悲しいが……。


●単機能という「高性能」

 電子レンジの本分は「ものを温める」ことにある。
 それ以外の能力はない。それ以外のことをやろうとすると色々な機構を付加しなければならない。その結果がオーブンレンジという高価な代物である。本来の電子レンジは単機能ではあるが安価なものだ。カプセルレンジも安価であった。

 世の中の製品の多くが「多機能」の方向に向かっているが、本当にそれが正しい方向なのか?
 以前エアコンを修理に来た電気屋が「クーラーだけの頃は壊れなかったが、暖房機能がつくようになってからよく壊れるんだよねぇ」と言っていた。多機能とは複雑化である。メカは単純なほど壊れない。複雑化すれば壊れやすい。これはメカニズムの常識だ。
 温めることしかできない電子レンジはなにやら日陰者であるが、本当に使う機能だけに徹したもののほうが実は「高性能」ではないかと思うのである。壊れないことも性能のうちである。