地下鉄サリン事件で横山被告に死刑判決
1999/9/30
(毎日新聞より)
1995年3月、死者12人、負傷者5000人以上を出した地下鉄サリン事件で実行役の1人とされ、殺人と同未遂罪などに問われた元オウム真理教「科学技術省次官」、横山真人(まさと)被告(35)に対し、東京地裁は30日、求刑通り死刑を言い渡した。山崎学裁判長は地下鉄事件を松本智津夫(麻原彰晃)被告(44)が主導したと認定したうえで、「狂信的かつ独善的な無差別大量殺人で、社会秩序に対する無謀な挑戦。横山被告がサリンを散布した電車内で死亡者が出ていないことを考慮しても、刑事責任はあまりにも重大だ」と述べた。
地下鉄事件の実行役に対する判決は無期懲役刑が確定した林郁夫服役囚(52)に次いで2人目で、死刑言い渡しは初めて。
山崎裁判長は開廷後、判決理由の朗読を先に始め、判決主文を後回しにした。
山崎裁判長は「横山被告は計画内容全体を熟知し、実行行為という重要不可欠な役割を担当した。結果が軽度だったことを過大視することは出来ない」と指摘した。
また「教団自体の反社会性に覚せいすることなく、脱会せず松本被告に対する帰依の念を捨て切れない様子がうかがえる」と述べ、「死刑は不当」という弁護側の主張を退けた。
これに先立つ事実認定で山崎裁判長は「サリンの毒性の認識と殺意を認めた捜査段階の自白は具体的で、客観的証拠などで裏付けられている」と横山被告の殺意を認定した。また、「下見の際に傘の先に付着したサリンを洗い流す場所を探すなど、冷静で合目的な行動を取っている」と述べ、松本被告のマインドコントロール(心理操作)で責任能力がなかったとする弁護側主張も退けた。
横山被告側は、サリンの毒性を知らず、人が死ぬとは思わなかったなどの理由で傷害罪の適用を求めた。また、担当路線で死者2人を出しながら無期懲役の求刑にとどまった林服役囚に比べて不当と主張した。
一連の事件では、坂本堤弁護士一家殺害事件などで岡崎一明被告(38)に死刑判決(控訴中)が出ている。
◇判決が認定した事実
・地下鉄サリン事件
松本智津夫被告(44)らと共謀し、95年3月20日午前8時ごろ、地下鉄日比谷線、丸ノ内線、千代田線の3路線計5電車でサリンを発散させた。事件全体で12人が死亡、14人(当初の起訴対象は約3800人)が重症を負ったが、横山被告がサリンを散布した丸ノ内線電車では5電車中唯一死者が出ず、4人(同200人)がサリン中毒にかかった。
・小銃密造事件(武器等製造法違反の罪)
94年6月〜95年3月、松本被告らと共謀し、ロシア製自動小銃「AK74」を模倣した小銃1000丁を製造しようとし、1丁を完成させた。