岡崎証言
11月19日に行われた早川紀代秀第13回公判の中で、検察側証人として出廷した岡崎一明は「坂本事件」に関し次のような発言をしました。
【坂本宅の施錠の確認の部分】
弁護人(以下、弁)「午後10時ごろ、カギがかかっているか見に 行ったますね」 
岡崎(以下、岡)「はい。村井にちょっと家の様子を見てくる、 と言った」
弁「カギが開いてるか見てくるつもりだった?」
岡崎「いや、そうじゃないです。道路側から明かりがついているか みて、ついていたんで(家に)居るんじゃないかと思って階段を昇 った。ドアスコープをのぞいて『本当に居るのかな』と思った。郵便受けを押して中をのぞいたが、何も見えなかった。見えないけど 何か人がいる気配がした。そしてドアに手を掛けたらあいた、とい うことです。ドアを開けて中をのぞこうとは思わなかった。ちょっ とした好奇心で開けてみた」
弁護人「あければ、(誰かが来たのが)分かっちゃうんじゃない」
岡崎「危険、と言えば危険ですよね」
弁護人「なぜそこまでやった」
岡崎「理論立てて説明するのは難しい」
弁護人「ドア開けて人がいるのが分かっても、あまり意味がないでし ょう。当時は(坂本弁護士の)帰りを襲撃するという計画でしょ。 興味があるとしたら既に(坂本弁護士が家に)帰ってるかどうかで しょう。(家の中に)人がいても帰ってるかは分からないでしょ」
岡崎「そこまで考えての行動ではない。論理立ててやったとは言え ません」
弁護人「麻原の指示は帰りを襲撃しろ、ということでしょ。施錠の有 無を確かめるのは、麻原の指示と何ら関係ない行動では」
岡崎「その通りでしょう」
弁護人「結局、どういう理由で(施錠の有無を)確認したかは説明で きない?」
岡崎「はっきり言えませんね」
弁護人「開いているのが分かってどうしたんですか」
岡崎「駐車場に戻って『明かりがついてるし、カギも開いてるよ。 だからもしかしたら(坂本弁護士が)帰ってるかもしれませんね』 と話した。村井に『無線でティローパ大師(早川)に報告して、先生(麻原)に報告して下さい、と言った。私も無線で早川さんに連絡したかもしれません」
弁護人「早川に(駐車場に)帰ってこい、と言った?」
岡崎「帰ってこいとは言ってないでしょう」
弁護人「ドアが開いていても、坂本弁護士が帰ってるかどうか分から ないでしょう。なぜ無線で連絡した」
岡崎「もしかしたら帰ってるかもとは言ったが…」
弁護人「『多分、坂本弁護士は帰っている。中に入ろう』と言ったん じゃないか」
岡崎「言ってませんよ」
弁護人「その後、早川と新実は(洋光台駅前から)帰ってきたでしょ う」
岡崎「尊師の報告と言ってました。『坂本がもう(電車で)帰ってこなくて家にいるようなら、家族ともどもやれ。まだ時間はあるか ら最終電車まで見張りを続けろ』と言っていた」
弁護人「あなたは『ドアのカギ開いてますよ、入ろうと思えば入れま すよ』と言ったんじゃないの」
岡崎「そうは言ってません。それは早川さんが麻原に伝えたことで しょう」
弁護人「施錠の確認は、場合によっては入ろうと思ってのことでは」
岡崎「それは違います」
弁護人「家族ともどもやれ、という麻原の指示はあった」
岡崎「そういう言い方でしたね」
弁護人「家族以外の人、例えば親類の人が居た場合の指示は」
岡崎「それは…記憶にないですね。普通はいろんな場合を考えるの かもしれませんね」
弁護人「帰り道を襲撃するという計画が、結果として坂本弁護士が家 にいるということで変更になったきっかけは」
岡崎「麻原が『入れ』と言ったのがきっかけですから」
弁護人「カギが開いているのが分からなかったら、変更もなかったん じゃないか」
岡崎「それも言えますね」
弁護人「もう一回、午前零時ごろ、施錠の確認に言ってますね」
岡崎「はい。その時も村井に『今からちょっと見に行く』と言いま した。終電の前ぐらいだと思う」
弁護人「目的は」
岡崎「(家族ともどもやれという指示は)まだカギが開いていれば 、という条件付きだったので。ドアスコープを見たら暗くなってい た」
弁護人「寝たと思った」
岡崎「そう思い込みました」
弁護人「(犯行グループに)カギを開けるカギ名人のような人はいな かった?」
岡崎「それはいません」
弁護人「本当にドアは開いていた」
岡崎「そうです」
弁護人「もし開いてなかったら、あの日の襲撃はなかった」
岡崎「なかったです」
【竹崎博允裁判長とのやりとり】
裁判長(以下、裁)「坂本弁護士の家族構成がどうなっていたか 分かっていましたか」
岡崎「小冊子を読んでいたから分かっていたと思います。現場に着 いてから、村井が『こういう物がありますよ』と差し出した」
裁「奥さんと小さい子供がいるのは分かってたんですか」
岡崎「はい」
裁「その上で『家族ともどもやれ』という指示がどういう意味なのか、分かってたんですか。何とも思わなかったんですか」
岡崎「…何とも思わなかったということはありません。ここまでに なるとは思いませんでしたから。家族まで殺害するとは…」
裁「だから、そういう指示を聞いたとき、どう思ったのか。それ でも従わなきゃならない理屈は何ですか」
岡崎「それは…麻原の指示だから従わなきゃいけない、それだけです」
裁「明らかに不合理と思わなかったの。どう理屈つければ子供を殺す必然性があると考えるわけ」
岡崎「…」
裁「その時の心理状態、気持ちを説明できますか」
岡崎「いや、あれは…善悪とかそんなこと考える余地はないという か…」
裁「なぜですか。麻原を信じていたから?」
岡崎「それが大きいです」
裁「事件後、麻原の言ってることがインチキだと思ったのはいつ ごろですか」
岡崎「教団を逃げ出してからです」
裁「いままで信じてきたことはうそだと」
岡崎「はい」
裁「その時点で考えれば、自分たちがやってきたのが単純な殺人 だと気付いたんでしょ。そうは思わない?」
岡崎「…思います」
裁「自分がやったことをどう理由付けてるの」
岡崎「その時点での悪夢のような世界にいたな、と。できるだけ忘 れるしかなかった」
裁「生存を信じて、坂本弁護士を探している人がいるのは知って たでしょ。その人たちのことはどう考えていたの」
岡崎「…。どう、というよりも、考えないようにしようと思ってま した」
裁「今はどう思ってるの」
岡崎「今は…申し訳ない、最低のことをしてしまった。人間のする べきことではない」
同じく証人出廷しながら証言拒否した新実智光の「唯一」の発言部分。
検察側の最初に質問に
「私自身、早川紀代秀さんと共犯として起訴され、自分の法廷で は黙秘しております。自分の公判でまた実質審理に入っていない段 階では証言を拒否します」と言ったきり、何を問われても無言だったのですが、弁護人が 「もうちょっと時間がたつと弁護人の方から証拠を提出する。ぜひその段階になったら、早川の弁護人の方も法廷でしゃべって欲し いと思っている。どこまでしゃべれるか分からんが、早川のために しゃべってほしい。ええやろ」と尋ねると、新実は早川の方を向きながら 「ハイ」と大きな声で一言。弁護人がじゃ、きょうはご苦労さん」 というと新実も笑ってました。退廷時、弁護人が「体の方は大丈夫なんやろ」と新実に言うと 「一応大丈夫です。早川さんは?」と逆に質問。早川は「ウンウン」とうなずきながら苦笑いでした。
次回の早川公判(11月26日)は端本悟が証人出廷する予定です。