オウム真理教破産事件
第3回債権者集会開催
1997/10/15
オウム真理教の破産事件で、本日、第3回債権者集会が東京地方裁判所で行われました。
オウム真理教がその勢力を盛り返しているという公安調査庁の報告が出た後だけに、管財人や裁判所がどのように対処しているのか、注目を集めた中での開催です。会場には地下鉄・松本両サリン事件の被害者や遺族を始め、多数の債権者、そして関係省庁(これも一応債権者ですが)のお役人がたくさん参加しました。
ところが、なんと肝心の破産管財人阿部三郎弁護士が欠席。
というのも、ちょうど同じ時間帯に、裁判所のお隣の弁護士会館で、日本弁護士連合会の総会が開催されており、阿部弁護士はその議長を勤めていたからなのです。確かに、今回の日弁連総会は司法改革・法曹養成問題が大詰めを迎え、きわめて緊迫した状況にあり、弁護士会内でも意見が激しく対立し、紛糾必至の総会です。そのため、ここ3年来連続して議長を勤められている阿部弁護士以外に議長は考えられない強く推薦され、どうしても断りきれなかったようです。
しかしながら、すっぽかされた方のオウムの被害者の方は収まりません。集会開会宣言と同時にクレームです。
(平田弁護士ー福岡)
今日この重要な集会の席に、当の阿部管財人が欠席しているということは、非常に遺憾であり、国民は納得しない。日弁連総会の重要性もわかるが、この債権者集会を軽視するものであり、とうてい納得できない。反省してほしい。
(破産管財人に変わり柳瀬常置代理人からの経過報告)
隠し財産の発見究明に努めている。また財団増殖のため国に対し労災求償権届け出の取り下げを要求している。国の債権を放棄するということは難しいが、届け出を撤回し当面留保するということはできるはずだ。
また、労災給付を受けた被害者はその範囲では100%救済されているが、給付を受けられない被害者は2割に満たない救済しか受けられず、被害者間の公平にも反している。
日常の労災給付に際しては必ずしも常に求償権を行使しているわけではなく、ケースバイケースの運用がなされている。今回もそのように柔軟に対処してほしいと強く要請している。
他方、管財人事務所の縮小、管財業務のための人員削減など、経費削減にも努めている。
不動産の売却が一部未了であり、また国の債権届けでの取り下げが未確定であるため、当初予定していた中間配当は先送りせざるをえない。その時期ははっきりしない。早期配当に向け努力したい。
(中村裕二弁護士)
質問状
@国の債権取り下げについては、マスコミも世論も国会議員らも強く支持してくれている。それらについて、交渉の状況はどのようになっているか。
Aオウム真理教が勢力を拡大している。信者を増やし、営利活動によって莫大な資金を集め、不動産も多数取得している。それらについてどのように対処しているのか。それを放置したまま、被害者にわずかな配当というのでは国民は納得しない。
B中間配当の時期について明らかにしてほしい。
(常置代理人)
@国の債権取り下げについては各省庁の他国会等にも繰り返し要請している。この破産申立時に国の債権を届け出させたのは、(債務超過という破産の要件を満たすために)いわば便宜的にかき集めたものに過ぎない。破産の本当の目的は被害者救済である〜、そのためにも取り下げてくれるよう鋭意交渉中である。
Aオウムの営利活動については、管財人としても注目しているが、あくまで破産財団の増殖に資するかどうかという視点から検討している。強制捜査の当初に7億円の金塊があったことなども含め、捜査機関、オウムの幹部などから事情を聴取している。ちなみに教団からは7億円については破産宣告までに信者の生活費に全部費消してしまったとの回答であった。
破産法上、宣告後の財産についてはかかっていけないので、非常に困難である。
B中間配当については、国の取り下げがあるとないとでは配当率が1割近くも違ってくる。我々としては、取り下げは全く無理との感触は得ていないので、その目処を付けてからできるだけ早期に配当を実施したいと考えている。もう少し時間をいただきたい。
(伊東良徳弁護士)
前回の債権者集会の報告と対比して、資産が約1億減り、負債が約1億増えている。この結果として配当率は約1・4%下がっている。その内訳と今後の見通しを説明してほしい。
(常置代理人)
資産が減ったのは、前回固定資産評価額で算定せざるを得なかった不動産について、その後評価額が大幅に下落したことによる。負債額が増えたのは、新たな債権届けで、異議の撤回、訴訟で管財人が負けたり和解したことなどによるもの。今後も負債は若干増える見込みである。
(高橋シズエ)
オウムが盛んに営利活動をし莫大な利益を得ているが、その元手になっているのは破産宣告前からあったものではないのか。それら資産を管財人の方で押さえてほしい。このままではオウム復活になり社会的不安が大きい。
(滝本太郎弁護士)
オウム真理教は松本智津夫被告の説法集著作物を未だに販売し、莫大な利益を得ている。その著作権自体は今破産手続下にあるオウム真理教のものであり管財人が管理すべきものだ。すぐにその著作権を回収してほしい。
また今になって税金の交付要求が追加されているようだが、いったいどこが。財団の資産はなかなか売れず目減りしているのに、税金は高い固定資産評価額のまま要求してきている。税金についてもあきらめず減額交渉してほしい。山梨県を始め各関係自治体にもオウムをのさばらせた責任はある。債権請求は自治体の長が独自に判断すべきことで、自治省の顔色をうかがう必要はない。各自治体の責任において積極的判断を下してほしい。
(江川ー上九一色村対策委員会)
オウム真理教は活動を活発化させ、何億もの利益を得ている。その一方で被害者には2割の配当だという。しかもその上国が債権届けをして被害者の救済を妨げている矛盾。この破産の目的は被害者の救済とオウムの解体にあったはず。その両方が目的を達していない現状はきわめて重大な問題である。
国や県は、強制捜査前はオウム真理教に対して何もしていなかった。たとえば我々周辺住民が県に対し「第10サティアンが2階建ての申請だが、明らかに3階建てで違法建築だ」と再三申し入れしたが、県は「申請は2階建てである。3階への変更申請が出ていないのだから2階建てである」といって全く動かない。「もうすでに使っている」と申し入れしても「いや、完成の届け出が出ていない」というだけ。さらに「事務所にあんな膨大な電力を引き入れる必要があるのが。明らかに工場ではないか」といっても「あれは事務所になっている」・・・。とうてい納得できない。
(小野毅弁護士)
この破産の当初の目的は被害者の救済とオウムの責任追及にあった。被害救済はお金に限られない。オウムの関連会社の活動の実体を十分に調査し責任を追求してほしい。初心に戻ってその目的を再認識してほしい。
(常置代理人)
管財人としても、オウムの現状について重大な関心を持ち、そして元になった財産を財団に取り込むことができないかどうか追求している。しかし、その確定資料がない。元幹部らからも事情を聞いてはいるが。
現在の活動にダメージを与えるためにも管財人としても頭を柔軟にして検討努力していきたい。
税金については、各自治体のガードが非常に固い。これまでオウムの解体処理などに関し協力的だったところも、こと税金のことになるととたんに頑なになる。
あきらめずに今後も努力していきたい。
(紀藤弁護士)
今精力的に営利活動しているオウムの財産が被害者に全く行かないということ自体常識に反している。このままでは、破産制度そのものが国民の信頼を失うであろう。オウム真理教の名前を使って営利活動を行うこと自体を破産妨害罪で告発するとか工夫努力をしてほしい。破産直後に財産隠しを告発していれば現在の関連会社での営利活動はくい止められていたはず。
(滝本太郎弁護士)
著作権侵害ですぐに告発すべきだ。その利益を損害として押さえることもできるはずだ。
(常置代理人)
今日のご意見を全部管財人に伝え、検討努力していきたい。
<次回の集会期日>平成10年3月25日午後2時30分
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<管財人の業務報告より>
9月30日現在の資産状況
「資産合計 1,042,302,628円」
「負債合計 5,128,351,853円」
この内異議のない破産債権
5,044,579,414円