絵コンテ用語解説
update 1998 1/4

エヴァの絵コンテ集が発売になりました。
ですが、絵コンテには専門用語も多く用語がよく分からない人もいるかもしれません。
そこで、絵コンテの用語を解説しようと思ったわけです。

また、エヴァ制作中の絵コンテ作業終了日を記したページをこちらにつくりました。


エヴァで使われている絵コンテ
(画像をクリックすると全体を見れます。現物はB4サイズに5コマ。)

(1)絵コンテ用紙のページ番号。
(2)カットナンバー。エヴァではシーンナンバーは使われていない。「カット」は和製英語である。
(3)登場人物の台詞など。(on)は画面内にいる人物の台詞、(off)は画面外にいる人物の台詞、(SE)は効果音、ノンモンは無音。
(4)カット内の絵の内容。被写体の動きやカメラフレームの移動も指示してある。
(5)絵の内容を文字で表している欄。画面処理なども指示してある。「ト書き」ともいう。
(6)そのカットの秒数。1秒以下はコマ数で表される。1+12ならば1秒と12コマ(1秒=24コマ)の意味。
(7)ページ内の秒数合計。Totalはあまり使われない。
(エヴァではPartとSceneの欄は使われてません)

絵コンテ用語解説

カメラワーク

●FIX(フィックス)
固定画面のこと。ほとんどの画面はこれ。

●PAN(パン)
カメラの位置を固定したまま画面を上下左右(または斜め)に振ること。
上下に振る場合はP.U(パンアップ)やP.D(パンダウン)と指示する事もある。

●付けPAN(つけパン)
被写体をつねにフレームの中におさめて被写体の動きに合わせてPANを行うこと。

●FOLLOW(フォロー)
カメラが移動しながら、被写体をいつも視野の中に収めて、その動きを追うこと。
←FOLLOW 2.5cm/1KであればBGを1コマに2.5cm右に動かして撮影するという事。
同様の指定は「台引き」でも出来るのでエヴァではあまり使われてない。

●台(台引き、引き、SL)
セルや背景画を引っ張って撮影すること。
←台 BOOK 2.5cm/1KであればBOOKを1コマに2.5cm左に動かして撮影するという事。
FOLLOWとは方向が逆になる。

●T.U(トラックアップ)
カメラが前に移動しながら被写体を撮影すること。ただのズームアップに使う場合が多い。
 ◆Q.T.U…急速T.U

●T.B(トラックバック)
カメラが後ろ移動しながら被写体を撮影すること。ただのズームアウトに使う場合が多い。
 ◆Q.T.B…急速T.B

●in(イン)
被写体が画面の中に入りこんでくること。

●out(アウト)
被写体が画面の外に出て行くこと。

●マルチ
マルチプレーンの略で、複数の段を使用した撮影のこと。段のいずれかに焦点を合わしてある。
 ◆ゴンドラ…カメラ前の段に焦点を合わせたまま段ごとカメラが下段に向かって近づいていく事。
 ◆密着マルチ…画面全体に焦点があっているマルチ。多重スクロール的な画面が作れる。

●画面動
画面全体の振動を表現するために、絵全体を上下左右に動かして撮影すること。
「画面ブレ」も、だいたい同じ。

●望遠圧縮
遠くの被写体を望遠でとらえると、遠くの距離間が圧縮されて見えること。

●同ポジ
以前に出たカットと同じ場所(ポジション)。カットを指定している事もある。

●逆ポジ
実際の画面はコンテ画の左右反対のアングル、つまり裏返しの絵という指定。

●ポン寄り
ある被写体の引きの絵から、次のカットで被写体に寄ること。だと思う。

●上手(かみて)
映画では画面の右側。

●下手(しもて)
映画では画面の左側。

●兼(兼用)
以前使った背景、レイアウト、原画などを再び使うこと。

●BANK(バンク)
前に使ったカットを再び使うこと。

●正面UP
人物の正面のアップ

●半面UP
人物の横顔のアップ

●アオリ
ふりあおいでとらえること。

●フカン
見おろしてとらえること。

●ナメ
ある被写体ごしに被写体をとらえること。


撮影

●F.I(フェードイン)
画面が段々明るくなる効果。

●F.O(フェードアウト)
画面が段々暗くなる効果。

●O.L(オーバーラップ)
画面と画面を重ね合わせる効果。カットのつなぎに使う事が多い。
 ◆中O.L…カット内でO.Lをすること。

●DF(ディフュージョンフィルター)
フィルターの一種で、画面をにじませる効果をもっている。

●色パラ
フィルターの一種で、色セロハンを用いて画面の全体もしくは一部の色彩を変化させるもの。
 ◆赤パラ…赤セロハンをつかった色パラ。

●サブリナ
爆発や光などの効果を高める為、例えば一瞬画面全体を白くさせたりする手法。

●波ガラス
フィルターの一種で、表面に凹凸のあるガラスを使って、画面全体に歪みを生み出す。
水中や火のカットによく使われる。

●Wラシ(ダブラシ)
窓への映り込みや透明なものを表現する時に使う。
バックだけを例えば半分の露出で撮影し、フィルムを巻戻して透けるものを加えてまた半分の露出で撮影すると、 後で加えた物だけ透けて見える。濃淡は露出のバランスで自由に変えられる。
利点…色をあらわす事が出来る。
弱点…手間がかかる。カメラワークと併用するとズレる事がある。
略語でWラシと呼ばれるが、「ダブ」はDoubleの意味なので厳密にいうと正しくない。

●半露(半露出)
動く影が背景に落ちる場面とかに使われる。(撮影方法はダブラシと同じ)
まず、例えば半分の露出で撮影し、影にしたい部分をBLマスクにして再び半分の露出で撮る。
すると、BLマスクの部分が影となって落ちて見える。濃淡は露出のバランスで自由に変えられる。
利点…影の感じを出すのに最適。複雑な背景に影を落とす事が出来る。
弱点…手間がかかる。カメラワークと併用するとズレる事がある。色はない。
「濡れた物」は半露出の影を動かすことで表現が出来る。

●スーパー
ライトやガラスに反射している物などを表現する際に使われる。
普通に撮影したフィルムを巻戻して、黒地にその部分だけ描かれたセルをもう一度撮影して重ねると、スーパー部分が露出オーバーとなり、その部分だけ明るく浮かび上がる。濃淡は露出のバランスで自由に変えられる。
利点…ある程度、色を出せる。比較的手間が少なく、何重にもかけられる。
弱点…明るいもので無ければ何も出てこない。バックが明るいと何も出てこない。

●T光(トーカ光、透過光)
光を表現する時に使われる。
通常はスーパーと同じ撮影方法で、光る部分に穴を開けたマスクに下からライトを当てて撮影する。
背景の無い時は、直接下からライトを当てて撮影する事もある。この時はセルの裏を黒く塗って光洩れを防ぐ。
利点…色が色パラ色で決められる。色がまわりににじんでセルでは出せない色になる。
弱点…厚みが出ない。コントラストを考慮しないと光にならない。

●オプチカル(オプチカル合成)
複雑なカメラワーク(BGだけT.Bとか)などで普通の撮影台では撮影できない場合がある。
そこで、背景、セル画、特殊効果などをそれぞれ別のフィルムに撮影し、 オプチカルプリンターという機械にかけて1本のフィルムに撮影所で合成する。
画面が汚くなるのでコンピュータを使って合成する事もある。


作画

●A.C(アクションカット)
カットと次のカットで被写体の動きが連続するとき、その被写体の動きを前後でつなぐ感じに作画する事。

●BOOK(ブック)
マルチによる撮影の時、通常の背景の他に、人物セルの手前や後ろ側に置かれる。
切り抜いたり、セルに直接書いたりする。草むらや建物が描かれる事が多い。

●BG(バックグラウンド)
背景画のこと。
 ◆BGドーガ…背景動画(セルの背景を動かす事)。背動ともいう。

●BL
黒ベタの背景画やセルのこと。

●ブラシ
エアブラシを使って、セルでは出せない質感を出す処理。

●L.O(レイアウト)
絵コンテを元にして描かれる、場面の設計原図。場面設計ともいう。

●1K作画(ヒトコマ作画)
秒間24コマで作画すること。日本のアニメーションでは珍しく、特殊なカットでしか使われない。

●止め口パク
口だけ動かすこと。普通は口のセルだけ別に書く。

●ハーモニー
セル画の特有の質感を目立たなくさせるために背景の手法を使って描かれたもの。

●逆シート
前にあったカットと逆の動きをすること。


参考資料
「新世紀エヴァンゲリオン」絵コンテ集 富士見書房
「ジャイアントロボ」絵コンテ集 バンダイ
「サイレントメビウス」絵コンテ集 角川書店
「天空の城ラピュタ」絵コンテ集 徳間書店
「風の谷のナウシカ」絵コンテ1 徳間書店
ほか

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