Back Numbers : ホームモニター日記2020



※家のテレビモニターで鑑賞した作品やコンテンツに関する感想のまとめです。(映画に限らず何でも話題にしています。)主にツイッターでのつぶやきを中心に記載しています。

※映画館や配信サイトでの公開から1年以内の映画は、新作映画と考えて簡単な作品情報を載せています。(何の根拠もない独自ルールですみません……。)


2020/04/17:FireTVStick到着!

FireTVを導入して生活が一変!レンタル屋からも遠ざかっていたし、PCやタブレットで動画を見るのはどうも体質に合わなくて限界があったのだが、TVで気軽に動画配信を見ることができるのがこんなに楽で素晴らしいことだったとは!

正直、コロナが収まったところで収入が上向くとも限らないので、これまでみたいに映画館に通うことはもしかすると難しくなるかもしれない。なのでこれからは、家で鑑賞した映画やドラマなどについてもつぶやいていこうと思う。

時間には余裕あるのに書きものなどが全然できず日々ツイッターなどばかりしているが、見えない何かにエネルギーを吸い取られてるんだろう、と思うことにして、自分で自分を大目に見ることにした。
まぁ今回、鬼滅とかキングダムとかタイバニとか未来少年コナンとかまとめて履修できてよかったな。

YouTubeで話題のタイのBLドラマ『2gether』を見た!内容はすごく昔の甘々のラブコメ少女漫画みたい。Tineくんの激ニブぶりは個人的にはちょっと苦手だったけど、Sarawatくんは眼福でした。

YouTubeが見られるので、公開しているバレエやオペラや演劇の舞台作品なども気軽に見ることができる。凄いなぁ。

昔なつかし『山ねずみロッキーチャック』を一部鑑賞。小学生の頃大好きだったなぁ。「世界名作劇場」枠で一番熱心に見ていたのはこの作品と『アルプスの少女ハイジ』だったと思う。
(追記:Huluのみなので解約前まで)

今見たら、他の動物を懲らしめようと意地悪をしたり、馬鹿にしたり、といったことをかなりナチュラルにやっている辺りが結構70年代的かもしれない、などと思ったりした。大体、喋る動物達が家具付きの家に住み、種族間も平気で行き来するなんて、多分当時だから受け入れることができたんだろう。

でも動物の動きや生態などがかなり再現されているのには感心した。多分当時のスタッフさんが、子供達にいいものを見せたいとかなり骨を折ってくださったのだろうと思う。

一番よく覚えていたのは、ほとんどの動物が冬ごもりに入る少し寂しい最終回と、ビーバーの話。ビーバーは衝撃的だったなぁ。木を切り倒してダムを作って河をせき止めるなんて、世の中には凄い動物がいるんだなぁと素直に感心したものだ。

もしかしたら同時期にドキュメンタリー番組で実際のビーバーの映像も見て記憶を補完していたかもしれないが、アニメが印象に残ったのは確か。アニメが見聞を広げてくれる、と子供心に実感した次第。

「世界名作劇場」は『アンデルセン物語』『新ムーミン』『山ねずみロッキーチャック』『アルプスの少女ハイジ』『フランダースの犬』辺りを一番熱心に見ていて、『母をたずねて三千里』『あらいぐまラスカル』辺りになるとあまり見なくなったかも。

『母をたずねて三千里』は、高畑勲さんが監督ということを後になって知った。当時の自分には、19世紀末以降に多くのイタリア人が貧しかった祖国から当時栄えていたアルゼンチンへ移民や出稼ぎに行った、という背景が少し難しかったのかもしれない。

ちなみに、アルゼンチンのイタリア移民のことは随分後になってピアソラ経由で知った。(ピアソラはイタリア系のアルゼンチン人です。)
そのうち機会があれば『母をたずねて三千里』を見直してみたい。

ということで、未見だった「世界名作劇場」の『赤毛のアン』が放映中なので、今現在、家族で視聴している。それにしても、偶然とはいえ、高畑勲監督の『赤毛のアン』と宮崎駿監督の『未来少年コナン』を同時期に放映しているのは凄いんじゃないかなぁ。

『赤毛のアン』の素晴らしいところの一つは、マリラやアンの家事労働を逐一とても丁寧に描写しているところ。これは子供の頃に見ても気づかなかったかもしれない。歳はとってみるものだ。

あと、高畑勲監督はアンの想像力をとても大切に考えていらっしゃったのだと思った。カスバート家に来る以前のアンはかなり厳しい境遇を転々としていたのだが、アンは想像力を駆使することでその境遇を乗り切っていた。人間にとって想像力がいかに大切かという高畑監督のメッセージがあるように思う。

湯浅政明監督作品に未見のものが色々あることに今更ながら思い至る。言い訳をするならば、WOWOW→レンタルやネトフリオリジナルといったルートは今まではアクセスしにくくて興味が希薄だった、といったことはあるかもしれない。が、ファンとか言ってる割にはちょっと多過ぎ。軽く落ち込む。

とりあえず視聴可能な湯浅政明監督作品はこれから積極的に観ていこうと思う。

ということで湯浅政明監督作品の手始めに『カイバ』を鑑賞。ながら見をしていたら、結構複雑なストーリーで途中で迷子になってしまい、慌ててネットで確認するというていたらく。しかし才能が爆発していることは一目瞭然の凄まじさだった。

手塚治虫的な画風と解説しているサイトも多かったが、もし手塚治虫先生がご存命なら本気で嫉妬していたんじゃないかなと思う。

湯浅政明監督シリーズ、『デビルマン』はちょっと覚悟が要りそうなので、とりあえず『ピンポン』を鑑賞。実写版の【ピンポン】が直撃した世代なので「ふ~ん」という感想になるのは仕方あるまい。しかし、より原作に近い世界がカラーで動いているのは凄いなぁ。

このアニメで『ピンポン』を初めて見る、という人には滅茶苦茶面白いだろうな、これ。

宮本杜朗監督の【太秦ヤコペッティ】という映画が面白い、と複数の人がつぶやいていたので視聴してみた。これは5/1~5/20に行われていた配信映画祭という企画で配信されていたもの。血塗れの暴力とエロとグロと不条理の波状攻撃に、家族愛のエッセンス。ワケワカラン!けど確かにもの凄い熱量だった。

この【太秦ヤコペッティ】は【堀川中立売】【天使突抜六丁目】を創った京都のシマフィルムの製作なのだそう。成程そうきたか。

この配信映画祭は、Vimeoという動画アップロードのプラットフォームから見たい映画を購入して参加する形式のもの。VimeoはFireTVでも視聴可能だから家のテレビで見ることができた。お茶の間で参加できる映画祭って何て気軽で楽ちんなことか。こりゃ今後に向けて夢が広がるな。

この配信映画祭、他にも見逃していた映画が何本かあったりして、ついいろいろ見てしまった。映画館を通さなければ会場代や人件費を計上しなくていいから料金もずっと安く設定できるし、交通費や移動時間を費やさなくてもいい。そして何かの作業の合間にでも見ることができる手軽さはクセになる。

勿論、映画を見に行くという非日常を経験するイベント感や、他に何もない暗闇で映画だけに集中できるという没入感などの要素も無視できないので、どちらがいいとも一概には言えない。が、ハードルが低いというのは大いなる利点になりうる。

逆に、実際に映画館やイベント会場に行くという行為は、それだけ割高な料金を払って移動時間も費やして、という対価に見合うだけの内容が無ければ、今後はますます淘汰されていくことが必至だろう。

これは映画に限った話じゃなく、今に始まった話でもないが、今後はリアルなエンターテイメントとバーチャルなエンターテイメントの二極化がますます鮮明になるのだろう。という何ともありふれた結論を今更ながら実感した。

一部で話題のNetflix映画【ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから】を視聴。主人公はアメリカの片田舎の白人コミュニティで育った中国系女子。男子にラブレター代筆のアルバイトを依頼されるが、その相手は彼女が密かに魅かれていた人気者の女子だった、というストーリー。

同性への恋愛感情や異性との友情などを中心にした物語の中に、地方都市の保守的なコミュニティの価値観の中で悩むティーンエイジャーというテーマや、中国系移民のアイデンティティというテーマを無理なく融合させているのが見事で面白かった。

新しい物語を創り出すのが難しいとされている昨今、この映画では、今までマイノリティとされてきた側から物語を掘り起こしたり、今までの物語をハイブリッド化したりする方法が奏効しており、きっとアリス・ウー監督にしか紡げない物語が描かれていたのだと思う。

で、【クレイジー・リッチ!】とはかなりベクトルが違うけど、今後も中国系アメリカ人を描いたアメリカ映画は増えるんだろうな、という予感がした。

【ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから】(8/10)
原題:【The Half of It】
監督・脚本:アリス・ウー
出演:リーア・ルイス、ダニエル・ディーマー、アレクシス・レミール、他
製作国:アメリカ

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コンディションを整え、満を持してNetflixオリジナルの『DEVILMAN crybaby』を視聴。なんでコンディションを整えなきゃいけないかと言うと、永井豪先生のオリジナルの復刻版を全巻持ってて、内容を全部知ってるから……。

う~んやっぱり今の時期じゃなく、せめてもう少し世情が落ち着いてから見た方がよかったかな……。でもやはり予想に違わない傑作だった。あの永井先生のゴツゴツした絵柄より随分整った絵柄なので受ける印象が違うかもしれないし、細部は今の時代に合わせて変更している部分も多い(続く)

けれど、あらすじは驚くほど原作を踏襲していて、これこそデビルマンの最も正統な映像化作品だと思えた。日本で新たな映像作品を作ることになった時、真っ先にデビルマンの再アニメ化を思い立ち、真っ先に湯浅政明監督に話を持っていった人って慧眼だ。

今回最も腑に落ちたのはサタンの行動原理。そうかー、サタンはそれこそ世界を破壊してでも手に入れたいほど明くんを愛していたんだな。原作にもはっきりとそう書かれているのに、その意味を今まで今一つ理解できていなかったのとは。我ながら迂闊すぎじゃないだろうか……。

ネットに『DEVILMAN crybaby』はBLっぽいと書いてる人が何人かいたけど、それはある意味正しかったのかと納得。でもまさか世界の永井先生をディスってんじゃないわよね?その筋書きを書いたのは永井先生ご本人ですからね!

もう1回見直してみたい気持ちはあるけれど、またコンディション整えてからじゃないとな……疲れました……。

Netflixで【ジョン・レグイザモのサルでもわかる中南米の歴史】を視聴。 ブロードウェイの一人舞台を映像化したものらしい。息子さんとの対話を通して中南米の歴史をユーモアたっぷりに(時にちょっぴりお下品に)一人何役も演じながら語り尽くす姿は圧巻でした。

ヒスパニックのアイデンティティについて勉強になるのみならず、名助演俳優として知られるジョン・レグイザモさんの豊かな才能をこれでもかと見せつけられます。これ、確か脚本もご自身で書いてらっしゃるんですよね。凄いや。

またNetflixで【シティ・オブ・ゴッド】のフェルナンド・メイレレス監督作の【2人のローマ教皇】を視聴。ベネディクト16世が教皇だった時にのフランシスコ現教皇と対話したという話……と言われてもキリスト教徒じゃないのでそんなにピンと来ないのは仕方あるまい。

ベネディクト16世が教義に厳格で保守的な教皇だったのに対し、アルゼンチンの軍事独裁政権下でいろいろ苦汁をなめたフランシスコ教皇は柔軟な現実主義者。フランシスコ教皇の話は【ローマ法王になる日まで】という映画が更に詳しいです。

Spotifyで山口百恵聞けるのか。

アニメの『十二国記』を履修してみた!登場人物も多いし独特の分からない用語がバンバン出てくるので最後までネット検索しまくり。慣れるまでちょっとだけ大変だったが、この世界観に馴染むと嵌まるね。

去年久々に出た原作の新作が戴国や泰麒の話なのでしょ?こりゃアニメの続きも見たくなっちゃうね。

そういえば『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』も見た。まず絵が圧倒的に美しい。それぞれのエピソードはどこかで見たことがあるモチーフの組み合わせという印象だけど、それがこのように綺麗にまとめられているということを評価すべきなのだろう。

そして、京都アニメーションには女性のスタッフが多いと言及されていることの意味が何となく分かってきた気がする。女性に対するネガティブな描写が少なくて安心して見ることができる、丁寧で美しいクオリティ。

映画やアニメ以外では、YouTubeの久保みねデトックス女子会や、今田さん・東野さんなどが始めた番組などもちょいちょい視聴している。昨日は東京03のリモート公演などを見てみた。皆それぞれ工夫していろいろ発信しようとしているのは面白いなぁ。

東野さんの幻ラジオ、結局全部聞いてしまった……。

Netflixでようやく【流転の地球】を見た。これは2019年の中国での興行収入第2位だった中国国産映画で、その額なんと725億4000万円(46億8000万元)!ちなみに第1位も中国国産アニメの【ナタ 魔童降臨】で興収は766億6000万円(50億1000万元)、3位は【アベンジャーズ エンドゲーム】。

2019年の中国の累計映画興収は1兆円超えで、中国映画だけでも9位までは興収200億円超え。日本の歴代の興行収入は1位【千と千尋の神隠し】308億円、2位【タイタニック】262億円、3位【アナと雪の女王】255億円、4位【君の名は。】250.3億円。100億円超えは36本だけ。桁が違う。
参考URLはこちら

【流転の地球】のあらすじ:太陽が赤色巨星化してきたことを知った人類は地下に都市を造り、地球に大きなエンジンを付け2500年かけて近くの恒星まで移動する計画を立てるが、木星にぶつかりそうになり危機を迎える、といった感じ。絵面は【スノーピアサー】と【アルマゲドン】を混ぜたような印象。

とにかく話のスケールがでかい!お話は後半少しダレるところもあるけれど、ハリウッド映画の人気作と較べて出来に遜色は無い。資金は潤沢にあるのだろうし、今の段階でここまでのものを作ってしまえるなら、今後名実共にハリウッドを追い抜く日も遠くないんじゃないか。

そうなると、日本の零細な映画業界なんて、まるごと吸収合併されてしまってもおかしくないんじゃないかな。少なくとも、今の段階で既にもういろいろ追い抜かれてしまっているという事実は直視した方がいいんじゃないかと思う。

興収1位だったという【ナタ 魔童降臨】(Ne Zha)というアニメにも興味ある。どこかで配信してくれないかな。

脚本家の野木亜紀子さんが『電脳コイル』というアニメを推薦していたので鑑賞。ジュブナイルものにしては複雑すぎるのでは?と危惧するほどの作り込まれた設定に、破綻のない美しい画面、完璧な伏線回収。傑作!のこのアニメの名前すら聞いたことがなかったことに軽くショックを受ける。

【タクシー運転手 約束は海を越えて】を鑑賞。外国人記者を乗せたタクシー運転手が見つめる光州事件。ノンポリの運転手の庶民の目線だからこそ人々の痛みや苦しみがより生々しく映る。近年韓国映画をあまり見なくなっており、この映画もすっかり見逃してしまっていた。反省。

NHKの「BS 世界のドキュメンタリー」で見た『イラン 天空の教室』(Iran: Teaching among the Nomads)というフランス製作のドキュメンタリーが素晴らしかった。

夏に長距離を徒歩で移動する遊牧民一家の子供達に勉強を教えるため、先生が同行するという内容。生活が厳しい遊牧民はイランでも数が減っているそうだが、聡明な子供達はこれからどんな人生を歩むのか。美しい風景が心に沁みる。イランの人達が根っこに持っているであろう人としての豊かさを思う。

録り溜めてあったNHKのリモートドラマ『Living』を今更ながら視聴。そうか、きょうだいや夫婦の共演なら画面を分割したりしなくていいんだ!と目からウロコ。しかし、いつか見たいと思ってた広瀬アリス&すず姉妹や永山瑛太&瑛斗兄弟の共演の夢がえらくあっさり叶っちゃったなぁ。

20年ほど前の昔の少女マンガみたいな絵柄の某アニメを視聴。以前TLで熱心に称賛している人がいて気になっていた作品だが、幻惑的で強烈な引力に多くの人が魅了されたのがよく分かった。が、この監督さんは死やセックスなどを物語のスパイスとして弄んでいるんじゃないかと思えてしまい、そこがどうしても気になった。

そんなのはこの監督さんに限ったことではないのだが、以前この監督さんの他の作品を見て抱いた、入り込めない感じの正体が分かった気がした。この作品、自分ではまず見ることはなかっただろう。見聞が広がってよかった。

長年の懸案だった『母をたずねて三千里』を走破!やっぱり名作だった!『赤毛のアン』も地上波で見ている最中だし、これで心おきなく高畑勲監督ファンを名乗っていいかな?
以下、感想?をランダムに連投します。

初回放送当時小学生だったのだが、歌は歌えるけど内容はあまり覚えてないので(特にアルゼンチンの話はさっぱり)、おそらく途中でドロップアウトしたんじゃないかと思う。確かに子供にはちょっと難しい部分があるかもしれない。『ハイジ』みたいな分かりやすいワクワク感には乏しいし。

マルコはちょっと意固地なところもあるけれど、とてもいい子。口調が時々昭和の青春映画を思い起こさせるジェノバっ子。そしてむっちゃ働き者。お母さんが不在なので、10歳にして家事は炊事も洗濯も全部できる。そして足りない路銀は基本自分で働いて稼ぐスタイル。

マルコは基本的に運がいい。普通の映画だとここで行き倒れてジ・エンド、みたいなシーンがいっぱいある。周りの大人がマルコの純粋な気持ちに心を動かされて協力する、という部分は大いにあるんだけど、子供向けという都合も勿論ある。それでも皆が優しい訳じゃなく、結構シビアな描写もなされている。

個人的にはお母さんのお金を使い込んでマルコ達との連絡を途絶えさせたメレッリおじさんの話が一番厳しい。このおじさん、「根は悪い人じゃない」とやたらと庇う人がいる。罪を憎んで人を憎まず、と言いたかったのか?いやいやいやいや、どう考えても総ての元凶はこの人じゃないですか……。

お母さんが出稼ぎに行くのは、お父さんが経営する無料診療所のためという子供に分かりやすい理由が考えられているが(原作にはない設定らしい )、当時、貧しいイタリアから豊かなアルゼンチンに大量に労働者が渡っていたという背景がある。実際、イタリア移民の描写は作中にたくさん出てくる。

あと、旅芸人のペッピーノ一座やインディオの兄妹と親しくなるが、彼等は原作には登場しないらしい。作中ではマイルドに描写されているが、当時は彼等は社会の最下層にいて、貧しくて社会的にも敬意を払われない存在だったはず。そうした人々を敢えて描いているのが凄いなぁ。
参考URLはこちら

『ハイジ』と同様、本作でもイタリアやアルゼンチンにロケハンに行ったらしいが、それにしたって、今みたいに簡単に海外の情報が入手できなかった時代に、これほど詳細で正確な風景だの街並みだの道具だの小物だのの描写ができるとは驚異的。

その上で、人と人とのつながりに助けられること(Wikipediaによると「人々の思い遣りと思い遣りに対する感謝の気持ち 」)といったようなテーマを、甘すぎもせず厳しすぎもしない、正に子供に向けられた強度でしっかり描いているのが、さすが高畑監督だとつくづく感心した。

やはり私にとって、高畑勲監督はとてつもない偉人だということがよく分かった。

ところで、オープニングの歌に「はるかな北を目指せ」という言葉が出てくるのが疑問だったのだが(イタリアから見るとアルゼンチンは南じゃないですか)、あれはアルゼンチン国内の移動のことを言ってたんですね~。

最初ブエノスアイレスから600km南のバイアブランカに向かった後、ブエノスアイレスに戻って(600km)、ロサリオ(300km)、コルドバ(400km)と来て最後はトゥクマン(500km)まで北上。ちなみに東京~大阪間で大体500kmくらい?アルゼンチン国内だけでも大変な旅だった。

ところで、この作品が放送された1976年は、アルゼンチンの軍事政権が始まった年。高畑監督がそのことを知らなかったとは思えないのだが。今後アルゼンチンが苦しい歴史を辿ることもあるだろう、といった感じの科白(うろ覚え)がどこかにあった気がしたのだが、どうなんだろう。

『カウボーイビバップ』を視聴してみる。音楽は前評判に違わず本当に素晴らしかったけど、女性キャラが全然好きになれず、必然的に男性キャラにも全く気持ちが入っていかなかった。世のハードボイルドものが8割方つまらなく思えてしまうのは女性キャラのせいだったのだという知見を得た。

大量の書きものを終えてからしばらく疲労困憊で、 この程ようやくFireTVの視聴を再開。収入が激減していたり感染の第二波が明らかにやって来ていたりして、映画館は当面行けそうもないしね。

手始めに、漫画家の久保ミツロウ先生がYouTube番組で薦めていたNetflixの『ブラック・ミラー』シリーズの『サン・ジュニペロ』を視聴。『ブラック・ミラー』は、もともとはイギリスのテレビドラマだったSFシリーズで、Netflixが権利を買い取って継続しているみたい。

『サン・ジュニペロ』というのはある街の名前で、ここで出会った女性同士が恋をして、そのうちお互いの素性が明らかになっていくという話。時代が変われば恋愛の在り方も根本的に変わる部分もある。 ディストピアという捉え方もできるかもしれないけど、単純に素敵な話だなーと思った。

ひき続き『ブラック・ミラー』シリーズで、賞をたくさんもらっているという『宇宙船カリスター号』と、ジョディ・フォスターが監督をしている『アークエンジェル』を視聴。『アークエンジェル』恐ぇ~!何度だって言うけれど束縛は愛じゃないのよっっ!

『宇宙船カリスター号』は、スタートレック的な世界観をゲーム空間に移植してクローンという切り口を加えたブラックパロディといった感じ。ネタの順列組み合わせを変えればまだまだ独創的なストーリーを作ることができるんだな~、ととても感心した。

ここで『ブラック・ミラー』シリーズの視聴は一旦終了。まだまだたくさんあるので、そのうち気が向いたらまた見てみるかもしれない。

それにしてもこれだけの数の映像作品や番組が少し料金を払えば見放題って凄いことだな……。その膨大さに改めてクラクラする。

これだけポン・ジュノ監督のファンだと言っておきながら、なんと!まだ!【ほえる犬は噛まない】を未見だったので、初めて視聴した。主人公のペ・ドゥナさんの友人役のコ・スヒさんがかなり好き。持つべきものは頼れる女友達……って違うか。

しかし、独特のオフビートな面白さは感じたけれど、もしこの映画を最初に見ていても、その時はそれほどポン・ジュノ監督に嵌まらなかったかもしれないな、と思った。当時見に行かなかったのも、予告編などを見てそれなりに感じるところがあったんだろうな。

引き続きNetflixのアニメ『GREAT PRETENDER』を視聴。古沢良太さん脚本ということなので、当初は「コンフィデンスマン・ワールド」的な企画だったのではないかと想像する。てことは、エダマメくん≒ボクちゃんといった役回りなのかな。

Case2がエアレースの話だったのでおおっと思ったが、実際のエアレースは1機ずつのタイムトライアル。絵面的な問題でドッグファイトにしたんだろうけど、実物を見たことがあると、危険すぎるので無いわーと思う。
しかしエアレースねー……どこかの大富豪が権利を買い取って再開してくれんかな。

しかし、詐欺師の話って体質的にどうしても話半分にしか見れないから、心から楽しめないなぁ。古沢さん、まだこのシリーズ続けるのかな……う~ん。

【ミッドサマー】のアリ・アスター監督の【ヘレディタリー 継承】を視聴。【ローズマリーの赤ちゃん】への言及が多かったのはそういうことか。もともとホラーは恐くて嫌いなんだけど、それ以前に監督とは相性が合わない気がする。これはもう本当に単なる好みの問題で。

【ぼくのエリ 200歳の少女】を視聴。【ボーダー 二つの世界】と同じヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト原作で、その世界観にすっかり魅了される。これは映画館で観るべきだったな~。しかし○○さんは○○じゃないんだからこの邦題はいかんだろ。

前から気になっていたイッセー尾形さん主演の【先生と迷い猫】を視聴。昔はこういう偏屈爺ぃが大嫌いだったんだけど、自分ももうすっかりこういうタイプの人間になってしまっているのでは?と自省。むしろこの人、地域の人達と嫌々でも交流がある分、わしより大分まともな社会生活送ってるし。

【あゝ、荒野】をやっと視聴。映画の前後編という形式が本当に嫌いなのでずっと未見だったのだが、こういう描き方をしたいのであればこの形式にするのも致し方なかったのかなと少し納得した。本編だけで5時間あるのに、更に未公開シーンを足した全6話のドラマ版もあるらしいし。

菅田将暉さんの名前を意識したのが【共喰い】だったので彼の濡れ場には驚かないが、このボクシングシーンは本当に凄い。ああこれはボクシングとブロマンスを描いた作品だったのか。外国に来てこんな難役を演じているヤン・イクチュンさんも本当に凄い。

でもラストシーンの意味が一見してよく分からず、後で検索したりしてみてもやっぱりよく分からなかった。う~ん、どうしても〇を絡めなくちゃいけないのかなぁ。ボクシングと〇は常に近い関係にあるのかもしれないけれど。

【ロブスター】【パンドラの匣】【坂道のアポロン】【預言者】【夢二〜愛のとばしり】などを視聴。多分この辺りの作品は、公開当時に予告編などを見て、自分には合いそうにないから鑑賞リストから取り下げたんだろうな……と思った。

2011年にWOWOWで製作された『同期』『ビート』という今野敏原作の警察ドラマを視聴。製作当時から気になっていたけど、WOWOWは高いから契約してないし、DVD発売後も近所には入荷してなくって……。今やこういう作品が手軽に見られるのはほんとにありがたい。

『同期』は入江悠監督/福田雄一脚本/松田龍平主演、『ビート』は奥田瑛二監督・主演/高橋泉脚本と結構な布陣で見応えがあった。けれど、10年近く経って世情が変わるとこういうドラマは少し古びて映ってしまうのかもしれない。今はもう警察という組織の正義を描こうとしても無理があるじゃん……。

あと、高良健吾さん若かったな~。今はもういくら何でも、年齢的にこういう役は無理だもんね。

【黒い司法 0%からの奇跡】を視聴。信頼と実績のアメリカの王道司法映画に、【フルートベール駅で】で描かれた警察による黒人の不当尋問や【デッドマン・ウォーキング】で描かれた死刑制度の不平等さなどの要素が垣間見える。こういう状況じゃなければ、できれば映画館で観たかった。

【黒い司法 0%からの奇跡】(7/10)
原題:【Just Mercy】
監督・脚本:デスティン・ダニエル・クレットン
原作:ブライアン・スティーヴンソン
出演:マイケル・B・ジョーダン 、ジェイミー・フォックス 、ブリー・ラーソン、他
製作国:アメリカ

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この流れで【アラバマ物語】【マンディンゴ】なども視聴。【マンディンゴ】にはアメリカの奴隷制度のある部分が映し取られているのかもしれないが、ディノ・デ・ラウレンティス謹製のブラックスプロイテーション映画だというWikiの解説を読み、確かにキワモノ感も強かったかもしれないなぁと思った。

特にあのクソ野郎の奥さんのミソジニー丸出しの女性描写には頭痛が……あの手の頭カラッポなヒステリー女という類型、昔はよく見掛けてた気がする。

Netflixオリジナル【ザ・ファイブ・ブラッズ】を視聴。最初の1時間でヘトヘトになるほどのてんこ盛りの情報量……。ベトナム戦争で死んだ戦友の遺骨が見つかって感傷に浸る……ような展開かと思いきや、そこから先が長かった!

常にBlackLivesMatterな映画を創り続けてきたスパイク・リー監督の真骨頂だけれど、終わってみて一番印象に残ったのは父子関係の問題だった。しかしあの父親、いくら自身も当時の状況の被害者だったとは言え、それで息子の心を傷つけ続けてきた罪が全部チャラになる訳じゃないからな。

で、最後は結局〇○○なの !? というところにはアメリカ映画の作劇の限界を感じてしまった……重厚で素晴らしい作品なのに、もうちょっと何とかならんかったかな~。あと印象的だったのはハノイ・ハンナの話。ベトナムにも東京ローズみたいな人がいたんだね。初めて知った。

【ザ・ファイブ・ブラッズ】(9/10)
原題:【Da 5 Bloods】
監督・脚本:スパイク・リー
共同脚本:ダニー・ビルソン、ポール・デ・メオ、ケヴィン・ウィルモット
出演:デルロイ・リンドー、ジョナサン・メジャース、クラーク・ピータース、ノーム・ルイス、イザイア・ウィットロック・Jr、メラニー・ティエリー、ポール・ウォルター・ハウザー、ジョニー・グエン、ベロニカ・グゥ、ジャン・レノ、チャドウィック・ボーズマン、他
製作国:アメリカ

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Netflixオリジナル【WASPネットワーク】を視聴。タイトルはカストロ政権を攻撃するアメリカのテロ組織に潜入したキューバのスパイ組織の名前。オリヴィエ・アサイヤス監督、こんな映画も作るのね。

しかし、政治的背景や人物の配置の説明が巧みとは言えず(監督がフランス人だからなのか)、その分、少し分かりにくかったかもしれない。それとも、そのくらいの知識は持ってて当然という前提だったのか……本当にどうもすみません。

湯浅政明監督のNetflixオリジナル作品『日本沈没2020』を鑑賞。ジュラシック・パーク方式に則ると○○は死なないのではと予想していたが、ある程度は当たっていたかな。しかし実際、こういう状況下では、天文学的な確率でラッキーじゃなければ生き延びられないだろうな。

日本そのものが沈んでしまうという日本人にとっては最凶の大災害を想定したシミュレーションには2011年の記憶が重なる。これに中盤以降(特に某所に辿り着いてから)は文明批評的な方向性も盛り込み、物語として昇華しながらその記憶を洗い直し、取り込み直そうとする試みなのだろうかと考えた。

大災害の全貌を描こうとしてもハリウッドのディザスタームービーには勝てっこないから、ある家族に焦点を当てて、正確な状況も分からないままに右往左往する姿を描こうとするのは、正しい方向性だったと思う。それを国際結婚した夫婦の家族に設定しているところも面白い。

ただ、メガディザスターの波状攻撃に加え、世界規模のウイルス禍にすら晒される時代に突入し、2011年の傷の記憶が癒えないどころか拡大し続けているという新たな現状がある一方、もしかするとこの作品の企画自体がそうした現状を捉え切れていなかった可能性があるのではないかとも思った。

これで一連の見逃し配信作品の鑑賞はとりあえず〆。これからも気になる作品があったら少しずつチェックしていきたい。手始めにアマプラでぼちぼち『なぎスケ!』を見ようかな。

で、アマプラで「なぎスケ!」を見たのだが、もうこれいよいよ完全にテレビ要らないじゃん!と思った。私ゃテレ朝が「『ぷっ』すま」を強制終了させたことを未だに恨みに思ってるからな。

新藤兼人監督が溝口健二監督について描いたドキュメンタリー【ある映画監督の生涯】をYouTubeで見たのだが、溝口健二監督や小津安二郎監督などの作品が海外からYouTubeにたくさん上がっているのだな……(権利関係がどうなっているのかよく分からんが)。

『あの花』『ここさけ』などを初視聴。内向き過ぎるかもしれないくらい繊細な十代の少年少女の心の描写は 凄いと思った。けれど、あの女の子のアニメ声はやっぱりちょっと苦手かもしれない。

京アニ制作の『けいおん!』も視聴。ほぼ女の子だけの空間に、学生のみに許されたモラトリアムな時間が閉じ込められているのが愛おしい。彼女達の成長や卒業後の物語などを描く必要は無い。彼女達が今後、皆それぞれ自分の人生を歩いて成長していくのだろうということは、女性ならみんな知っている。

『はたらく細胞』のコミックスにトライしようとして何度か挫折した経験があるのだが、アニメ版はとても見やすくてよかった。仕事中に見るものがない時に流すBGVにぴったりかもしれない。
(追記:電子版のコミックス、お試ししてみたがむっちゃ読みにくかった……。)

好中球と好酸球と好塩基球の違い、B細胞の働き、単球が血管外に遊走してマクロファージ化するなど、仕事がら何度も覚えようとしても覚えられなかったことが一発で頭に入ったもんな~。アニメは偉大だ。

♪今日も雑菌排除排除、細菌ウイルス出てこいやぁ~!

湯浅政明監督の初期作品『ケモノヅメ』がNetflixに来ていたのでウキウキ視聴。おおおすげぇ~!主人公がナチュラルに浮気するところと、ヒロインの我儘さがお馬鹿と紙一重なところと、悪役が自分の手の内を嬉々として開帳するところの違和感以外は完璧 。むっちゃ面白くて一気見した。

Amazonオリジナルの『誰かが、見ている』を視聴。オリジナルのシチュエーションコメディを創ろうという三谷幸喜さんの気概や、何をやってもうまくいかないが傍目には天才的に面白いという大変な難役を演じた香取慎吾さんの役者としての器の大きさは買いたい。

ただ、そんな主人公の部屋を他人が勝手に覗き見て勝手に面白がり、挙げ句の果てに勝手に盗撮して動画配信までするという設定に耐えられるかどうかだ。私は笑えなかった。折角創るのなら何もそんな話じゃなくてもよかったんじゃないか。製作途中で誰か三谷さんにそう意見する人はいなかったのだろうか。

『MIU404』のディレクターズカット版をど~~しても見たかったので、期間限定でTverに加入し、ついでに妹が以前から薦めていた『グランメゾン東京』を視聴。ところどころおや?と思うような箇所はあったけど、概ね大変面白かった。キムタクも京香さんも一樹さんも、新たな当たり役ができてよかったね!

『MIU404』のディレクターズカット版、思わずBlu-rayを買いたくなってしまうような素晴らしさ。(収入激減中でとてもとても買えませんが……。)もしこれから配信で『MIU404』を見る人がいるのなら、是非DC版を見るようお勧めしたいです。

個人的に印象的だったのは、桔梗隊長と志摩さんのやりとりがより細やかに描写されているところ。特に6話の二人の回想シーンは、できれば地上波版にも入れて欲しかったかも。あと、RECや糸巻さんの出番が増えてて、物語によりしっかり絡んでいる感じがするのがよかったな。

他にも、それぞれの人物の細かな背景や感情、人物間の関係性などがより掘り下げられている感じがする。何年か後にどこかで放送されないかな。期待しつつ、気長に待ちたいと思う。

『MIU404』のメモリアルブック買ってしまった……。

かわかみじゅんこさんの『パリパリ伝説』の新刊を読んだのだが、かわかみさんって、『MIU404』の九ちゃんこと岡田健史さんが出演していた『中学聖日記』の原作者だったのね……。

Netflixオリジナルのフィリップ・カウフマン監督【もう終わりにしよう】を視聴。う~ん、人間の暗い内面をどんどん掘っていくこの感じ、自粛が完全に明けていない今のような状況で自宅で一人見るのにはちょ~っと不向きだったかも。

【もう終わりにしよう】(5/10)
原題:【I'm Thinking of Ending Things】
監督・脚本:チャーリー・カウフマン
原作:イアン・リード
出演:ジェシー・プレモンス、ジェシー・バックリー、トニ・コレット、デヴィッド・シューリス、他
製作国:アメリカ

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綿矢りささん原作のWOWOWのドラマ『夢を与える』の存在を全然知らなくて、キャストやスタッフの豪華さに魅かれて見始めてしまい、しまった!と思った。芸能界残酷物語って、今のこの状況ではあまりメンタルによろしくなかった。う~ん、ネガティブ耐性、めっちゃ落ちてるんだな……。

アマプラで【ザ・スパイダースの大騒動】という映画を見つけて興味本位で見てみる。子供の頃の記憶では堺正章さんは既にピンで活躍していたので、それより以前の話。Wikipediaにはザ・スパイダースの映画が13本挙げられていて、そのうち9本が1967年と1968年の作品でのけぞる。

全盛期のグループ・サウンズのバンドってどんだけ忙しかったのか……。映画の内容は他愛ないけれど、ひたすらファンサに徹している感じで、当時のアイドル的人気の高さを思わせる。そして、昭和40年頃の当時の雰囲気がタイムカプセルみたいに閉じ込められているのも面白い。

U-NEXTのポイントで【ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語】を視聴。(U-NEXTは高いけど、新作の視聴に使えるポイントが付くのがいい。)昔『若草物語』を読んだ記憶はあるのだが、最後がどうなったのかどうも覚えていないのは、何かパッとしない結末だったからなのね…。

それを逆手に取って、彼女が○○した○○にしてしまうというのは技あり。でも、昔ジュブナイル用の翻訳で読んだ時の方がドキドキワクワクしてて、こういうものを見てもどうしてもその追体験になってしまうのかもしれないな……(ババくさい)。

【ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語】(7/10)
原題:【Little Women】
監督・脚本:グレタ・ガーウィグ
原作:ルイーザ・メイ・オルコット
出演:シアーシャ・ローナン、エマ・ワトソン、フローレンス・ピュー、エリザ・スカンレン、ティモシー・シャラメ、ローラ・ダーン、メリル・ストリープ、他
製作国:アメリカ

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アマプラに山中貞雄監督の【河内山宗俊】があったので喜び勇んで視聴。絵や音質が良くなかったが、山中監督の3本しかない現存作品の1つなので致し方あるまい。【丹下左膳余話 百万両の壺】もあったので続けて見てみると、これはどうも昔見た記憶が……。

昔、山中貞雄監督の【人情紙風船】を見たのははっきり覚えているのだが、【丹下左膳余話 百万両の壺】はその時の併映だったかな?【河内山宗俊】はイマイチ内容に集中できなかったが、【…百万両の壺】のユーモアや【人情紙風船】の詩情は今でも一見する価値が十分にあると思う。

後日、黒沢清監督の【スパイの妻】を見た時、二人がデートで【河内山宗俊】を見るシーンがあった。おぉ。ちなみに監督が何故【河内山宗俊】を選んだかというとこちら。 すごく意味を込めたチョイスというより消去法かな?

そして、昔からず~っと見たかった衣笠貞之助監督の【狂つた一頁】がアマプラに!ずっとソフト化もされていなかったようなのに何故。この英文を自動翻訳したような説明文からすると、もしかして海外から逆輸入とかされたりしたのかな?

もともと無声映画ということで、音量ゼロで鑑賞。大正15年の映画なので心の病の解釈も現代とは異なることは前提として、当時の日本でもこういう前衛的な表現(ドイツ表現主義の影響を受けているらしい)を実験してみようという試みがあったことにとても興味を引かれる。

【狂つた一頁】、それこそ日本映画史の一頁として是非見ておくべき映画なんじゃないだろうか。

アマプラで他に、阪東妻三郎主演の【雄呂血】、マキノ正博(雅弘)監督の【鴛鴦歌合戦】などを見つけて視聴。昔見たことがあった【雄呂血】は現存するサイレントのチャンバラ映画ということで有名だが、1925年作ということは、1926年作の【狂つた一頁】とたった1年しか違わないの !?

ストーリーなどにはどうしてもその時代の好みが反映されていると思うけど、【雄呂血】のバンツマの佇まいや、【鴛鴦歌合戦】の軽快なオペレッタは今見ても心魅かれる。

続けて小津安二郎監督の【長屋紳士録】を視聴。小津監督の作品は後期のものを中心に見ていて、初期から中期には未見のものがたくさんある。またそのうちいろいろ見てみたい。

Netflixで中川信夫監督の【地獄】が配信されていたので、ついでに未見だった怪談】や【亡霊怪猫屋敷】(U-NEXT)、【怪異談 生きてゐる小平次】(アマプラ)などを鑑賞。

一番感動したのは【東海道四谷怪談】。この様式美の素晴らしさ。これはきっとお岩さんの映画の決定版。でもこの映画が評価されてしまったばかりに中川信夫監督は怪談映画の巨匠と目されるようになり、実際は様々なジャンルの作品を手掛けた御本人は少し不本意だったようだ。

遺作となった【怪異談 生きてゐる小平次】はATG作品で、大好きな葛飾北斎の幽霊絵「こはだ小平二」の元ネタである小幡小平次の怪談をアレンジしたもの。三人だけの三角関係の話で、時代劇だけど味わいは現代劇風。若い頃の石橋正次さんが出ていてとても嬉しい。

【地獄】は地獄のイメージの映像化と現代劇の組み合わせ。少し冗長に感じられ、逆に現代劇パートに描かれた昭和の風俗の方に興味を引かれたくらいだけど、後に神代辰巳監督(エーッ !! )や石井輝男監督にリメイクされたというから、インパクトはあったんだろうな。

このように地獄を描くという発想が回り回ってクドカン監督の【TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ】に繋がった……なんて訳はない。

今年の初め頃に公開された【ヲタクに恋は難しい】【シグナル100】などを視聴。

【ヲタクに恋は難しい】はミュージカル仕立てなのは楽しいのだが、パッケージングされている様々なオタクの姿や悩みの数々が少しステレオタイプというか、少し古くないかな……?そもそも今時、オタクってそこまで隠さなきゃいけないようなものでもないような気がするんだけど。

【シグナル100】は、荒唐無稽な設定の殺人ホラー、若手売り出しのための大量パッケージ化と、今の自分が苦手とするタイプの日本映画のあらゆる要素が詰め込まれている……。度々言ってるのだが、お願いだから橋本環奈さんの無駄遣いはしないでおくれ……。

でもなんで【シグナル100】を見たかというと、竹葉リサさんが監督だったから。【春子超常現象研究所】を見て以来の大ファンで。【シグナル…】に監督の本領が発揮されていたとは思えないのだが、 せめて今後何らかの形で活かせる経験値になってくれるといいのだけれど。

でもこの流れで、未見だった 竹葉リサ監督の【さまよう小指】を見ることができたのはよかった。ナンセンスな設定にぶっ飛んだパワー、そしてちょっとしたメランコリー。超好き。でもこういうすっとぼけたユーモアを味わいとするような映画って、今はなかなか創らせてもらえないのかもしれないな……。

【ヲタクに恋は難しい】(5/10)
監督・脚本:福田雄一
原作:ふじた
出演:高畑充希、山﨑賢人、斎藤工、菜々緒、賀来賢人、ムロツヨシ、佐藤二朗、他
製作国:日本

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【シグナル100】(3/10)
監督:竹葉リサ
脚本:渡辺雄介
原作:宮月新・近藤しぐれ
出演:橋本環奈、中村獅童、小関裕太、瀬戸利樹、栗原類、他
製作国:日本

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いつか見たいなぁと大昔から思っていた【緑園の天使】と【黒い牡牛】をそれぞれアマプラとU-NEXTで見る。【緑園の天使】は当時12歳のエリザベス・テイラーが馬に乗る話。きっとアメリカのある種の保守的な価値観のど真ん中にこういう世界があるんだろうなぁ。

【黒い牡牛】は赤狩りでハリウッドを追われていたダルトン・トランボが偽名で書いた作品。素晴らしい牡牛を手に入れたメキシコの少年の話なのだが、先住民出身のフアレス大統領や革命家のモレーロス司祭の名前などがちょこちょこ差し挟まれていたりして、 成程と思った。

今泉力哉監督の旧作を視聴。U-NEXTで【サッドティー】【知らない、ふたり】【退屈な日々にさようならを】、アマプラで【パンとバスと2度目のハツコイ】など。う~んヤバい、若い人の顔の見分けがつかない。そもそも、若い人の恋愛群像劇という題材に驚くぐらいに興味が湧かない……。

これは完全に歳のせいだな……申し訳ない。でも、言い訳させてもらうと、今泉監督の作品は微妙な感情の綾の表現が特に必要で、俳優さんの力量の差が出やすいんじゃないだろうか。だから、 一定以上の実力があるプロの俳優さんに演じてもらった作品の方が格段に伝わりやすかったような気はする。

Netflixに【美女と液体人間】【電送人間】【ガス人間第一号】といった作品が来ていたので視聴してみる。これは、昭和30年代の東宝の「変身人間シリーズ」という括りの作品群らしい。前の2本はちょっと地味な印象を受けたけど、【ガス人間第一号】はとてもよかった。

ガス人間が日本舞踊の家元に懸想するという設定のミスマッチも面白いし、警部補やその恋人の新聞記者が事件を追うという展開も前2作より華やかさがあっていい。また、人体実験でガス人間にさせられた男の心情や、落ちぶれても誇りを失わない家元の矜恃などを描いているのもよかった。

そして何と言っても、家元役の八千草薫さんの美しさ !! こういう芯が強くて陰があるような役柄もいいですね!は~いいものを見せてもらった。

ちょっと思い立ってU-NEXTで相米慎二監督の【魚影の群れ】を見る。これも未見だと思っていたけど、もしかすると以前見たことがあったかも?当時の価値観とあまりにも相容れなくて記憶から抹消してしまったのかもしれない……?

今となってはこの映画も、完全に昭和の時代劇なのではないかと思う。マチズモ的世界観にも隔世の感があるけれど、この頃はまだ社会に「時代遅れ」であることの美学を許容するだけの余裕があったというか。この頃でさえ厳しかった漁業を巡る状況は、おそらく今はもっと厳しくなっていて。

昔見損なってから延々見逃していた【ハッスル&フロウ】を見つけたので見てみる。しかし、見に行くことを選ばなかった映画には多くの場合はその理由があるんだな、と改めて思ってみたり。15年前の映画なんで、もう時代もかなり違っちゃってるしね……。

小林正樹監督の作品、昔はソフト化されていなかったのか、近所のビデオ屋に置いてなかったのか、【東京裁判】以外は見たことがなかった。ふと思いついて、【いのちぼうにふろう】【上意討ち 拝領妻始末】(アマプラ)【怪談】(Netflix)【切腹】(U-NEXT)などを立て続けに視聴。

一番好きだったのは【いのちぼうにふろう】。訳ありの場末の酒場にたむろするはぐれ者達の、なけなしの希望や意地。栗原小巻さんの演じた酒場の娘は、今回見た小林監督作品の女性キャラの中では一番好き。本作の脚本が仲代達矢夫人の隆巴(宮崎恭子)氏だと聞いてなんとなく腑に落ちた。

小泉八雲原作・水木洋子脚本の【怪談】は、いかにも由緒正しい日本の怪談といった感じ。これは若い人に見てもらうといいんじゃないだろうか。日本のクラシカルな怪談の世界のイメージが掴みやすくなると思う。

橋本忍脚本の【切腹】【上意討ち 拝領妻始末】は、武家社会の理不尽さを描いた、いかにも時代劇らしい時代劇。重厚な味わいはたっぷりお腹に溜まる感じ。ただ、この2作に限らないけど、この頃の映画って音楽が暗く仰々しすぎてイマイチなことがあるのがちょっと残念なんだよね……。

実は現代劇もいくつか見たんだけど、モラル感の微妙な違いなどが今一つ嵌まらなかったかも。【人間の條件】は、戦争に巻き込まれた被害者としての主人公が描かれているが、日本軍が加害者であったという事実の認識が薄いのが(無いよりはマシだけど)日本の反戦映画の限界だという言説を思い出した。

これらの映画、ある映画は松竹、ある映画は俳優座、ある映画はにんじんくらぶ、ある映画は三船プロダクションと、製作会社が多彩だなと思った。テレビの普及以降、大手映画会社の覇権が崩れていった時代の流れと呼応していたのかもしれない。

U-NEXTに大島渚監督の【飼育】や【天草四郎時貞】があったので喜び勇んで観てみる。大島監督の映画はかつて可能な限り観たのだが、近所のビデオ屋には何故かこの2本は置いていなかった。調べてみると、【飼育】は大宝という聞いたことのない会社の製作。

この大宝という会社は倒産した新東宝の分社ということだが6本配給しただけで潰れたらしい。【天草四郎時貞】はその直後に東映で作った映画だが、興行的に惨敗して東映から縁を切られたらしい。もしかしたらこの2本はその辺りが原因でソフト化されていなかったのかもしれない。

大島渚プロダクションのサイトによると、【飼育】は外部を排除しながら頑迷に権力構造を温存しつづける閉鎖的コミュニティを描いた作品で、【天草四郎時貞】は60年安保で敗退した全学連主流派へのシンパシーを仮託したディスカッション・ドラマなのだそうだ。

前者はまだ人間ドラマとして見ることができる側面もあるけれど、後者はさすがにキツい……。今の時代に見るとニュアンスが分からなすぎだけど、当時だとて時代劇の華やかな大スターに誰もそんなこと期待してなかっただろうから、興行的に惨敗したと聞いてそりゃそうだろうなとしか言えない。

でも、初期の大島渚監督作品の政治的スタンスを、その時代背景を掘り起こしながら整理してみるのは興味深いかもしれない。いや、それは老後の楽しみになりそうだな……。

アマプラに溝口健二監督の作品がいくつかあったので、【近松物語】を見てみる。近松門左衛門の作品を基にしており、不義密通の疑いを掛けられた男女がかえって真実の愛に目覚めて堂々と死罪になる、という話。溝口監督の映画って、クラシックな題材でも演出がモダンで好きなんだよな。

溝口健二監督作品といえば、大昔、早稲田にあったACTミニシアターに【祇園の姉妹】を見に行ったことを思い出す。戦前のモノクロ映画なのに古さを全く感じないアップテンポで緻密な芝居、大胆なアングルもうるさく感じない堂々とした王道の演出、その力強さに打ちのめされた。

その映画には併映があった。我儘放題の歌舞伎役者が奥さんに散々苦労させるってなんてひでぇ話…とちょっとげんなりしながらも、見るほどにどうにも目を離せず、晴れ舞台に復帰した主人公が客席に深々とお辞儀をするラストシーンで完全にやられてしまった。後で調べたら【残菊物語】という映画だった。

改めて調べてみると溝口健二監督の映画も観ていない作品がいっぱいある。今見る予定にしている映画が一通り落ち着いたらまた少しずつ観てみようかな。

アマプラに小林旭さんの主演作が大量に入っており、そういえば彼の作品を見たことないなと思い、代表作と言われている【ギターを持った渡り鳥】を見てみる。

流れ者のギター弾きが、ヤクザっぽい人の子分になるが、実は元刑事……う~ん、結構な謎設定。まぁカッコよさげなら何でもよかったのかも。実際、本作の旭さんはシュッとしていてカッコいい。さぞやスクリーン映えしたことだろうと想像する。

Netflixオリジナル映画【シカゴ7裁判】を視聴。【ア・フュー・グッドメン】【ソーシャル・ネットワーク】の脚本家アーロン・ソーキンが10年以上前に書いていた作品で、当初はスピルバーグが監督をする予定だったが、巡り巡って脚本家自ら監督することになったのだという。

やはり裁判映画はアメリカ産が断トツに面白い。そして、共和党の裁判長がベトナム戦争に反対する民主党系のデモのリーダー達に不利な判決を出そうとする展開を見て、トランプ政権下で民主党的価値観が何かと圧迫を受ける時代に呼応して映画化が実現したのかなと思ったりした。

サシャ・バロン・コーエンさんとエディ・レッドメインさんという全然違う個性のぶつかり合いが、そのまま彼らが演じるリーダー達の方向性の違いを表現しているのが面白い。

フランク・ランジェラさん演じる厚顔無恥な裁判長や、マイケル・キートンさんがワンポイントで演じる前司法長官もよかったけれど、個人的には、いかにも人権派の弁護士という風情のマーク・ライランスさんがとても印象的だった。

【シカゴ7裁判】(8/10)
原題:【The Trial of the Chicago 7】
監督・脚本:アーロン・ソーキン
出演:サシャ・バロン・コーエン、エディ・レッドメイン、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、ジェレミー・ストロング、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、マーク・ライランス、フランク・ランジェラ、マイケル・キートン、アレックス・シャープ、ジョン・キャロル・リンチ、他
製作国:アメリカ

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米大統領選の流れで【すべてをかけて:民主主義を守る戦い】というドキュメンタリーが紹介されていたので、アマプラで視聴。これは、2018年にジョージア州の知事選に出馬したが僅差で敗れたステイシー・エイブラムス氏の話を中心に、米国で行われてきた投票妨害の歴史に言及した映画。

ステイシー・エイブラムス氏の対抗馬だった共和党のブライアン・ケンプ州務長官は、有権者名簿から何十万人もの有権者(主に黒人)を勝手に削除するなど、様々な投票妨害をいろいろ行ってやっと僅差で競り勝った。これがどうして法律違反にならないのか。相当おかしい。

それでもエイブラムス氏は、その後の大統領選挙に向けて黒人層の有権者登録を促すなど様々な活動を行い、ジョージア州での民主党の勝利に大きく貢献したという。法律上の平等という建前を骨抜きにしようとする圧力に正攻法で勝ったのか。

こういう映画を見ると、アメリカでは民主主義の根幹がまだまだ生きているんだなと思う。そのシステムで選出されたはずなのに、いざ落選したらその同じシステム自体を否定しようとするあの愚か者は一体何なのか……。民主主義の破壊者と呼ばれることになる歴史の審判は平気なのだろうか。

ついでにアマプラで、未見だった【世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ】を視聴。ウルグアイのことはあまりよく知らないのだが、この国もまた、社会主義運動の高まりと軍部の台頭の狭間で苦しんできた南米諸国の一国なのだということを強く思わされた。

ホセ・ムヒカ氏が(何かを失った者のための音楽)タンゴを愛していることも、アルゼンチンの隣国という土地柄を思い起こさせる。彼は、日本でイメージするような清貧に生きる人物というより、愛と人生を謳歌しながら戦いに生きてきた、紛れもないラテンの男だった。

南米の政治状況を描く映画のリストに本作も加えなければならないな。

【世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ】(7/10)
原題:【El Pepe, Una Vida Suprema】
監督・出演:エミール・クストリッツァ
(ドキュメンタリー)
出演:ホセ・ムヒカ、他
製作国:アルゼンチン/ウルグアイ/セルビア

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Netflixで長澤まさみさん主演の【MOTHER マザー】を視聴。あれ、この作品って劇場公開されてたんだっけ。

公式サイトの「すべてを狂わせた彼の母親は、怪物?それとも聖母だったか」などという古くさすぎる紹介文にげんなりし、ステレオタイプなダメ母の描写に辟易しながら何とか終盤に辿り着いてやっと、この映画のテーマが親子の共依存だったのだということが分かった。

そもそも、女性を過剰に神聖視したり過剰に貶めるたりするのは、どちらも女性を理解不能な異物として切り捨てるアプローチで、いくらなんでもそういうのはもう古すぎないか。内面を描けばいいというものではないかもしれないが、せっかく長澤まさみさんのような表現力のある方に演じてもらえるのに。

あるいは、親子の共依存がテーマなら、この少年が主役だということをもっとはっきり打ち出すべきだったんじゃないか。長澤まさみさんを主役と謳うには人物像の掘り下げが浅すぎるが、少年の視点であれば、母親の内面にまで下りた表現にならないのも分からないじゃない。

母親の数々の仕打ちにも関わらず、それでも少年が母親を好きだった、となる展開もよく分からなかった。もしかして監督は「子供が母親を愛するのは当然」だとか思ってない?自分もそうだけど、親を無条件で愛することなどできない人はいっぱいいるよ。そこはしっかり描く必要があったんじゃないか。

長澤まさみさんは、こういう役柄も引き受けて芸の幅を広げたかったのかなぁと思う。そして実際、製作側の期待に完全に応えた演技ができてしまう。でもだからこそ勿体なさすぎると思ってしまった。

【MOTHER マザー】(5/10)
監督・脚本:大森立嗣
共同脚本:港岳彦
出演:長澤まさみ、奥平大兼、郡司翔、阿部サダヲ、夏帆、皆川猿時、仲野太賀、土村芳、木野花、他
製作国:日本

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U-NEXTで【象は静かに座っている】を視聴。こ、これは自分には合わないやつだった……。

黒木和雄監督の【龍馬暗殺】と【祭りの準備】をそれぞれアマプラとU-NEXTで視聴。どちらも原田芳雄さんやっぱりいいな~となった。【祭りの準備】は、主人公に完全に共感する訳ではないけれど、地方出身者として心の中のある部分が揺り起こされた。ラストシーンのエールが切なかった。

続けてU-NEXTで若松孝二監督の【われに撃つ用意あり】、佐藤純彌監督の【君よ憤怒の川を渡れ】、今村昌平監督の【神々の深き欲望】などを視聴。【われに…】は多分前に見たことがあるな !? もう老人性健忘なのか !?

【君よ憤怒の川を渡れ】はそんな馬鹿な!という展開が怒濤のように押し寄せる、笑ってしまうほどエンタメ寄りの作品だった。良くも悪くもこのダイナミックさが昔の大映映画っぽさなのだろうと思った。

【神々の深き欲望】は、昔プロットを読んでう~ん…と思ってスキップした可能性がある。今村監督は沖縄の地に土俗的な神話的世界を見たのだろうか、良くも悪くも色濃く今村監督っぽい作品だった。が、検索すると、うわぁ…といった感じの撮影裏話がボロボロ出てきて、またう~ん…となった。

続けて、U-NEXTで大林宣彦監督の旧作をいくつか視聴。未見だったことが恥ずかしいような作品もあるので詳しく書かないが、大昔にCMを見て長年どんな作品だろうと思っていた【金田一耕助の冒険】を見ることができたのはよかった。

70年代当時のことを知らなければなんのこっちゃというようなネタのオンパレードだけど、結構な量のネタに心当たりがあり、懐かしさを感じる。自分は日本の70年代カルチャーの影響をどっぷり受けて育ったのだなとよく分かった。

U-NEXTで【私は猫ストーカー】を視聴。とても鈴木卓爾監督っぽい。でもこんな日常系の映画こそ実は映画館で見た方がいいのかもしれない。家にいると気が散りがちだから、本当に日常の中に紛れていってしまうのね……。

U-NEXTで【ジョアン・ジルベルトを探して】を視聴。ジョアン・ジルベルトファンの監督がジョアン・ジルベルトの足跡を追うという、ほんとにタイトル通りの映画だった。

U-NEXTで【飛べ!ダコタ】を視聴。太平洋戦争終結から間もない頃、佐渡島にイギリス空軍の輸送機が不時着したという実話に脚色を加えて作られた作品だそうだ。史実通りではないだろうけど、輸送機が無事飛び立てるよう島の人々が支援し、イギリス兵との間に交流が生まれたのは本当なんだろう。

戦争が終わったばかりの時期に、それまで敵だった外国人を目の前にして人々は何を考えたのだろう。思った以上に含蓄のあるいい映画だった。

U-NEXTで【プロジェクト・グーテンベルク 贋札王】を視聴。【インファナル・アフェア】の脚本家フェリックス・チョン氏が監督・脚本とのことで期待が高まる。思った以上に登場人物が多くて複雑な構造。主人公をスカウトした贋札王がやたら主人公に甘いんでないかい?と思っていたら……そうきたか!

これぞ!というチョウ・ユンファ氏やアーロン・クォック氏をたっぷり堪能できたので満足度は高かったけれど、今後香港はこういう映画を撮り続けることができるのだろうか、この映画がいわゆる香港映画の黄金時代の最後のともし火になったりしないだろうか……と考えると悲しくなってきた。

【プロジェクト・グーテンベルク 贋札王】(7/10)
原題:【Project Gutenberg/無雙】
監督・脚本:フェリックス・チョン
出演:チョウ・ユンファ、アーロン・クォック、チャン・ジンチュー、リウ・カイチー、他
製作国:香港/中国

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アマプラで【ロニートとエスティ 彼女たちの選択】を視聴。女性同士の愛の映画みたいな事前情報しかなかったのだが、実はユダヤ教コミュニティに生きる女性達の姿を描いた作品だった。

あまり釈然としないところもあったけど、もしかすると、それがそのまんまユダヤ教コミュニティの女性達が抱える矛盾を表していたのかなぁと思った。

【ロニートとエスティ 彼女たちの選択】(6/10)
原題:【Disobedience】
監督・脚本:セバスティアン・レリオ
共同脚本:レベッカ・レンキェヴィチ
原作:ナオミ・オルダーマン
出演:レイチェル・ワイズ、レイチェル・マクアダムス、アレッサンドロ・ニヴォラ、他
製作国:イギリス

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U-NEXTでジム・ジャームッシュ監督の【デッド・ドント・ダイ】を視聴。ただでさえゾンビ映画が好きじゃなくて見るモーティベーションを削がれてしまうのに、話の展開がもっさりしていてよく分からず、豪華なキャストの挙動をただ呆然と眺めることに。

監督曰く「ゾンビはお互いへの思いやりや意識を失うことのへのメタファー」なのだそうだが……そ、そうなんだ……。同じテーマでもせめてゾンビ以外のもっと違ったモチーフとかなかったでしょうか……と、ここへ来て、映画表現における「ゾンビ」って一体何?という命題にぶち当たってしまった。

いやーでも【新感染 ファイナル・エクスプレス】とかは面白かったよなー。面白いゾンビ映画とそうでもないゾンビ映画の違いって何なんかなー。

【デッド・ドント・ダイ】(5/10)
原題:【The Dead Don't Die】
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:ビル・マーレイ、アダム・ドライバー、ティルダ・スウィントン、クロエ・セヴィニー、スティーヴ・ブシェミ、ダニー・グローヴァー、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ロージー・ペレス、イギー・ポップ、トム・ウェイツ、他
製作国:アメリカ

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U-NEXTでウディ・アレン監督の【レイニーデイ・イン・ニューヨーク】を視聴。お金持ちでいろんな才能に満ち溢れているけど、恵まれすぎているせいか自分が何をしたいのかよく分からない青年が主人公。何だコイツ~?(ジョイマン風)と思ったけど、根がいい奴なのが救い。

この青年が恋人とロマンチックな休日を過ごそうとニューヨークを訪れたけど、運命の歯車がどんどんズレていって予想もしなかった結果が生まれるという話。ウディ・アレン監督は最近陰鬱な話が多かったけど、本作は軽やかな中にも人生の機微が感じられる良作だったと思う。

しかし、本作はアメリカでは未だに公開されていないとのこと。#MeToo 運動には賛同するけれど、ウディ・アレン監督に関する疑惑はミア・ファロー氏が言い出した当初からかなり不可思議な点も多いので、他の件と一緒くたにするのではなく、この件独自の検証が必要なんじゃないかと思う。

この件に関して猿渡由紀さんが両者の言い分を記事にしている。(かなり公平な記事だと思う。)第三者である我々には本当のところは分からなくて、どこまでも憶測で観測するしかできないのは歯痒い。いつか決定的な事実が明るみに出たりすることはあるのだろうか。

【レイニーデイ・イン・ニューヨーク】(7/10)
原題:【A Rainy Day in New York】
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:ティモシー・シャラメ、エル・ファニング、セレーナ・ゴメス、ジュード・ロウ、ディエゴ・ルナ、リーヴ・シュレイバー、他
製作国:アメリカ

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U-NEXTでフランソワ・オゾン監督の【グレース・オブ・ゴッド 告発の時】を視聴。

カトリック神父による児童への性的虐待はアメリカの【スポットライト 世紀のスクープ】などで既に取り上げられており、個人的に最近オゾン監督の作品は今一つという感想が多かったのでこの映画も当初はスキップしていたのだが、これは大変な傑作だった。

この事件は現在も裁判で係争中だそうだが、フランソワ・オゾン監督は映画を撮る前に実際に関係者に何度も会ったのだそうで、彼等の要望で、ドキュメンタリー映画を作るという当初の計画を変更し、俳優に演じてもらうフィクション映画として構築したのだそうだ。

【スポットライト…】は大スキャンダルとなるスクープを追う記者達とそれを妨害しようとする勢力との戦いというサスペンスとしての要素が強かったが、本作ではむしろ、事件の記憶に今も苦しめられている被害者の一人一人が事件とどう向き合いどう克服していくかに主眼が置かれているようだった。

オゾン監督がこんな社会派的な題材を採り上げるなんて意外だと感じていたが、ジャーナリスティックな視点よりもむしろ人間の内面に目を向けたドラマに重きが置かれているところが、いかにもフランス映画的でありオゾン監督らしいと思った。

【グレース・オブ・ゴッド 告発の時】(8/10)
原題:【Grâce à Dieu】
監督・脚本:フランソワ・オゾン
出演:メルヴィル・プポー、ドゥニ・メノーシェ、スワン・アルロー、ジョジアーヌ・バラスコ、エレーヌ・ヴァンサン、他
製作国:フランス

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U-NEXTで古厩智之監督の【のぼる小寺さん】を視聴。ボルダリングのことばかり考えている小寺さんと、彼女に感化されて自分も一生懸命になれるものを見つけようとする周囲の人達がそれぞれ愛おしい。ボルダリング部の先輩もいい味出してる。

『けいおん!』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』【若おかみは小学生!】の吉田玲子氏の脚本が冴えるとてもとてもいい映画だと思うんだけど、公開時期がよくなかった上に、その後、メインキャストの一人が謹慎になり出演予定作も軒並み降板になってしまった中で埋もれてしまった感がある。

古厩監督の作品には好きなものがたくさんあるのだが、監督は何か今一つ評価に恵まれていない気がする。日本映画界のためにとても勿体ないことだと思うのだが……。

【のぼる小寺さん】(8/10)
監督:古厩智之
脚本:吉田玲子
原作:珈琲
出演:工藤遥、伊藤健太郎、鈴木仁、吉川愛、小野花梨、両角周、田中偉登、中村里帆、小林且弥、他
製作国:日本

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アマプラで【#ハンド全力】を視聴。松居大悟監督のオリジナル作品。熊本地震の煽りでやる気を失った元ハンドボール部員が、昔の写真に「#ハンド全力」とハッシュタグをつけてSNSに投稿するとバズってしまい、いやいやながらまたハンドをやる羽目に…といった話。

近い時期に公開された【のぼる小寺さん】と同じく部活をモチーフにした青春ものだけど、方やクラシックでオーソドックスな趣き、方やSNSに振り回される男の子といういかにも今時の展開と、切り口が全然違って面白い。

加藤清史郎さんを始め、【天気の子】の主人公の声を担当した醍醐虎汰朗さん、鈴木福さん、蒔田彩珠さんなど、既に名前を知られていてこれからの活躍が期待される俳優さんが多く出演しているのも見どころ。もしかすると、何年か後にはいろいろ引用されるような映画になっているかもしれない。

【#ハンド全力(ハッシュタグハンドゼンリョク)】(7/10)
監督・脚本:松居大悟
共同脚本:佐藤大
出演:加藤清史郎、醍醐虎汰朗、蒔田彩珠、芋生悠、佐藤緋美、坂東龍汰、鈴木福、岩本晟夢、磯邊蓮登、甲斐翔真、田中美久、渕上晃、篠原篤、椎木樹人、宮﨑大輔、仲野太賀、志田未来、安達祐実、ふせえり、田口トモロヲ、他
製作国:日本

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U-NEXTで藤井道人監督の【宇宙でいちばんあかるい屋根】を視聴。原作小説の映画化作品だけど、父親と継母を受け入れられずに悩んでいる時に不思議な老婆と出会うという少しファンタジックなお話で、とのギャップに面食らってしまった。

久々に桃井かおりさんの演技をたっぷり楽しめたし、清原果耶さんのフレッシュな魅力が存分に詰まっていて何年か経ったらお宝映画になる可能性がありそう。けれど、本作も謹慎になった某若手人気俳優が出演していて、宣伝には難儀したかもしれない。

ともあれ、藤井監督の振れ幅の広さは面白い資質だなぁと思った。藤井監督がこれから先どんな映画を撮るのか楽しみだ。

【宇宙でいちばんあかるい屋根】(6/10)
監督・脚本:藤井道人
原作:野中ともそ
出演:清原果耶、桃井かおり、伊藤健太郎、吉岡秀隆、坂井真紀、醍醐虎汰朗、水野美紀、山中崇、他
製作国:日本

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Netflixでデヴィッド・フィンチャー監督の【Mank/マンク】を視聴。フィンチャー監督の父ジャック・フィンチャー氏の脚本を、監督が満を持して映画化した作品とのこと。

脚本家ハーマン・J・マンキーウィッツは何故【市民ケーン】を執筆したか?という話で、過去の話と脚本執筆中の現在の話が交互に現れる。本編を見る前に【市民ケーン】は絶対見ておいた方がいいけれど、それだけでは少し分かりにくかったので、主な登場人物をざっとまとめてみた。

ハーマン・J・マンキーウィッツ:本編の主人公。脚本家。【市民ケーン】を執筆。
ウィリアム・ランドルフ・ハースト:新聞王。つまり当時のメディア王。【市民ケーン】の主人公のモデル。
ルイス・B・メイヤー:映画会社MGAの創始者の一人。当時のハリウッドの絶対権力者。
アーヴィング・タルバーグ:メイヤーの部下の敏腕プロデューサー。早逝。
マリオン・デイヴィス:女優。ハーストの愛人。
ジョセフ・L・マンキーウィッツ:ハーマンの弟。映画監督。代表作【イヴの総て】など。
オーソン・ウェルズ:天才として名高い【市民ケーン】の監督兼主演俳優。
アプトン・シンクレア:社会主義寄りの小説家。選挙にも出馬し、ハーストやメイヤーから毛嫌いされていた。

こちらのサイトによると、【市民ケーン】がマンキーウィッツの単独作だと考えるのは実際には無理があるとのことだが、「自分たちが語る言葉の重要性を見出す人たちの物語」というテーマを表現するために、フィクションとしてこの物語を構築したとのことだ。

フィンチャー監督自身、自分が歳を取ってきて初めて、父親がこの物語に込めた「自分がこの世の中に対して何ができるのか」(意訳)というテーマが分かってきたという。なすべきことをなさねばならない。さて私はどうしようか。

【Mank/マンク】(9/10)
原題:【Mank】
監督:デヴィッド・フィンチャー
脚本:ジャック・フィンチャー
出演:ゲイリー・オールドマン、アマンダ・セイフライド、チャールズ・ダンス、リリー・コリンズ、アーリス・ハワード、フェルディナンド・キングズレー、トム・ペルフリー、タペンス・ミドルトン、トム・バーク、他
製作国:アメリカ

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Netflixでジョージ・クルーニー監督・主演の【ミッドナイト・スカイ】を視聴。地球に帰還しようとしている宇宙船の数名のクルーがようやくコンタクトを取れた相手は、人類が滅び行く中で一人地上に残ることを決めた男だった。

SFとして考えるなら、エッ?そんな都合のいい話が、という感じもあるが、人類の黄昏と、宇宙空間の孤独と、北極圏という土地柄と、この男個人が抱える人生の悔恨が重なり合って醸される青く冷んやりとした寂寥感に、独特の詩情があって嫌いじゃなかった。

【ミッドナイト・スカイ】(7/10)
原題:【The Midnight Sky】
監督・出演:ジョージ・クルーニー
脚本:マーク・L・スミス
原作:リリー・ブルックス=ダルトン
出演:フェリシティ・ジョーンズ、デヴィッド・オイェロウォ、ティファニー・ブーン、カイル・チャンドラー、デミアン・ビチル、ソフィー・ランドル、イーサン・ペック、カイリン・スプリンガル、他
製作国:アメリカ

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NHK BS1スペシャルの『黒澤明映画はこう作られた 証言秘蔵資料からよみがえる制作現場』を録画視聴。黒澤監督の関係者もご高齢になっているので今しか聞けない貴重なインタビューも多く、秘蔵映像も満載で、素晴らしい内容だった。

NHK BSプレミアムで放送された『三船敏郎・生誕100年 【サムライの真実・幻の大作映画・戦争と特攻】』を録画視聴。そういえばこれまで三船敏郎さんの経歴を詳しく調べたことがなく、初めて知ることも多かった。先日の黒澤明監督の番組同様、貴重な資料やインタビューも満載の見応えのある内容だったが、こういう番組をきちんと作れるところはさすがNHKだと思う。

NHK Eテレの「シュガー&シュガー」の最終回を視聴。アートディレクターの吉田ユニさんと映像クリエイターの山田智和さんがゲームで対決しててシビれた。民放ではまー通らない企画だろう。山口一郎さんのサービス精神が楽しくむっちゃ面白い番組だったのに、終了なんて残念。二期があるよう期待してます。

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