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2004.9.12  サーモンポテトクリームソースのフェットチーニ

 これもランチメニューで出しているが、もともとは京都にいたときにあったメニューがベース。そのときはリングイーネと合わせて、オプションでキャビアを添えていた。そのとき自分は作っていなかったのが、美味しいという味の記憶があったので、やってみることにした。

 サーモンの入ったクリームソースのパスタはそれほど珍しくないが、これはポテトを加えていることでサーモンとの相性もいいし、クリームだけだとただ単調に重たくなりがちなところを少し抑えていると思う。私は玉 ねぎとフェンネル(ういきょう)の根の部分をスライスして炒め、ポテトを加え、ブイヨンで煮たあとにクリーム、牛乳を入れてミキサーで回してソースとしている。塩もその段階で決めた分量 を入れて、鍋の上で塩味をなるべく決めなくていいようにしている。ただそこはそんなに単純ではなくて、永遠のテーマではあるが。

 仕上げにはディルの葉(フェンネルの葉でもいいのだが、最近は根の部分だけもらっているので)、黒胡椒、飾りと食感の意味でとびこを軽く散らす。 これは実際にやってみて、割とオーダーの率も高いし、ホールなどの印象を見ていても割と満足度も高いようなので(どこかに問題もあるだろうが)、しばらくは続けようかと思っている。

  どんなメニューでもそうだが、まずお客さんがメニューを見た時に、食べてみたいと思わせる食材、ネーミングであることが必要だと思う。ごく当たり前のことのように思えるが、案外ここに落ちていなかったりすることも多い。これはメニューを見ただけで、お客さんがどういうものか想像もでき、食べたいと思わせることもできる意味で、そこそこいいところに落ちていると思う。うまいかまずいかの前にまず注文してもらわないといけないので。

 その上でそのメニューが実際に美味しいのか、毎回美味しい状態で出しているのかどうかが大事だ。当たり前のことだが、ここが本当に難しい。店の形態やキャパシティーなどによっても変わってくるし、毎日安定していい状態で出していくのが難しい。このパスタも麺の茹で具合、ボイラーの塩加減、ソースの量 、詰め具合、黒胡椒の振り加減など美味しく仕上げるためのポイントがいくつかある。そのポイントを毎回しっかりやっていくことが料理人として必要だと思う。

  試作などで作ってみて、美味しくても実際にメニューに載せて、何回も何皿も作っていると本当にいろんなことがある。オーダーが同時にたくさん入ってきたり、キッチンから離れたお客さんに出している状況では一回一皿作った時にはわからないことがよく起きる。最近はそれも踏まえて、試作の時の感触が良くても、常に何か問題が後から起きることを想定して、改善していけるような心構えを持っている。

 かつてお世話になった浅井氏は人を叱った時に「毎日当たり前のことを当たり前にやるのが一番しんどいんだ」と言っていた。今でもいろんなシチュエーションに出会った時にその言葉を思い出す。どんな店にいてもそうだがそんな難しい仕事に関わっているんだなと日々思う。一回きりの料理コンテストならばまた違うかもしれないが、当然ながら料理人としての実力は、一皿として美味しいものを作り、それを毎回、いろんなお客さんに同じ美味しさで出せるかどうかにかかっていると思う。それがプロの仕事だと思う。

 F1が好きでよく見ているが、1周の速さが際立っていても、レースでは50周ほど安定して速く走れなければ優勝はできない。マシンに関わる様々な要素やレース中に起きる様々なアクシデントも踏まえなければならない。フェラーリというチーム、M.シューマッハーというドライバーを見ていると、プロの仕事として全てにおいてレベルが高く尊敬している。チームとドライバーを店と料理人に置き換えて考えてみると共通 している要素も多いと思う。どんな仕事や世界に置き換えても同じことが言えるかもしれない。

 自分の仕事を評価すればできていないことなど挙げ出せばきりがないかもしれないとも思う。日々改善しようともしているが。 それも本当に永遠のテーマだと思う。

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