17.04.24
ISOはPDCAの考え方を採用しているそうだ。すばらしい!なんて喜んではいけない。私が知る限り、人間が作った仕組みの9割はフィードバック機構を持っている。ラジオの増幅回路だって、会社の仕組みだって、学級委員の選出だって、結果(アウトプット)をチェックを把握して評価し類似のことがおきたときそれを考慮(インプット)する仕組みがないものはない。まあよほどプロセスが簡単とかおもちゃのようないい加減なものでなければフィードバックのないオープンループのものはない。
人間は皆その行動にフィードバックをかけるだろう。知恵ある鳥や動物でも同じだ。オオカミが羊を襲おうとして何も遮蔽物のない草原を走っていったら羊飼いに見つかって大勢が集まって来て猟銃を持った猟師までやってきた。これはいかんと引き上げる。そして考える。今度は羊たちが林の傍を通ったときやぶの中から飛び出そうとか・・・

おっと、童話「オオカミ少年」のお話は、過去に騙された大人たちが騙されなくなったというフィードバックの物語である。
まあそういうのは当たり前というか、その繰り返しが人生というものでしょう。もちろんフィードックをかければ成功するというわけではありません。しかし既に起きた失敗を再びしないためにはフィードバックは必須であり、それはPDCAのループとなる。
ではISOの元締め、認定機関や認証機関はどうなのかということを本日は考えます。
毎年JAB主催で大会を開催している。名前は何度か変わったが、今は「JABマネジメントシステムシンポジウム」と称して有楽町にあるマリオンで3月に開催している。かって東京ビッグサイトの国際会議場でしていたが、参加者が少なければそれに見合ったところになるのもフィードバックというものだろう。2017年の今年は3月7日に催された。
毎年テーマを決めて有名な先生の基調講演のあと、ふつうみっつとかよっつの小グループで検討会をした結果を報告し、それを基にパネルデスカッションをしてトラブルなくおひらきになる。著名な人たちが集まって討論するのだからさぞかし素晴らしいお話が聞かれるだろうと、アッ、あなた笑いましたね!

もう何年も前から私が不思議だなあと思うことがある。それは「JABマネジメントシステムシンポジウム」の毎年のテーマがとりとめがないということだ。とりとめがないというと失礼だろう。テーマが千変万化、常住不断、変幻自在、自由自在と言おうか。
言いたいことはひとつのテーマを取り上げて討論するのはいいが、その結論がまとまらず、対象となった問題についての対策も決まらずに討論会は終わり、翌年はそのテーマをきれいさっぱり忘れて新しいテーマを語り合うということを、もう10年も繰り返している。それって不思議だと思いませんか?
本当か?という声がかかるだろう。
証拠なく語ってはいけない。証拠を上げよう。過去13年間のJAB主催の討論会のテーマの一覧である。
JAB主催の大会のテーマの推移
開催時期 |
JAB/ISO9001公開討論会 |
JAB環境ISO大会 |
概 要 |
2003年度 |
内部監査-ISO9001:2000の有効活用 ・企業による事例発表 |
環境ISOは日本の特徴-将来何をすべきか ・改善のポイントは- |
将 来 に 向 け た 楽 観 的 テ | マ |
2004年度 |
自律的QMS構築のための内部監査プログラム ・内部監査計画 ・内部監査員の力量 ・監査結果のフォロー |
世界をリードする責任 ・地域経営とISO ・これからの審査登録機関の使命 |
2005年度 |
経営ツールとしてのISO9001活用 ・組織として動くことのできる体制の確立 ・環境変化への対応 ・アウトソースしたプロセスの管理とは? |
製品・サービスの進化 |
2006年度 |
ISOを楽しむ ・基盤構築 ・技術能力向上 ・トップを動かす |
今までの10年、これからの10年 ・効率的なシステムづくり -中小企業への普及のために- ・ISO 14001の効果的活用法と審査のあり方 ・設計段階から環境負荷を配慮した製品を実現するために |
2007年度 |
ISO9001認証を考える ・信頼されるISO 9001認証制度 ・サプライチェーンにおけるISO 9001認証の活用 ・組織にとってのISO 9001認証の価値 |
持続可能な社会の実現に向けて環境 ・パフォーマンス向上のための環境コミュニティの役割 ・EMSの普及促進のために ・マネジメントシステムの統合に向けて −4者への提言− |
信 頼 性 問 題 対 策 |
2008年度 |
審査を変える〜QMS認証の価値向上〜 ・QMSの有効性をみる〜ISO 9001逐条審査からの脱却〜 ・社会・組織の期待に応える審査〜現行制度の枠内でどこまで可能か〜 ・組織からみた価値ある審査〜審査の活用と期待〜 |
環境ISOの有効活用と活動の見える化に向けて ・企業における改善事例の紹介 |
2009年度 |
ISO9001認証の社会的意義と責任 ・求められるQMS能力〜QMS運営能力を有していると判断するための審査〜 ・認証付与の判断基準〜認証機関によるISO 9001適合の判定〜 ・組織によるISO 9001適合の実証〜組織自らによる能力の実証とそのメリット〜 |
環境ISOの有効活用と活動の見える化-事例研究- ・企業における改善事例の紹介 |
2010年度 (注1) |
QMS能力実証型審査〜真の有効性審査を求めて ・QMS能力実証型審査の基本的考え方と計画 ・QMS 能力実証型審査の方法と実施 ・組織の視点でのQMS 能力実証型審査の価値の追究 |
情報開示-環境ISOの信頼性向上のために ・環境ISOの情報開示の意義と課題 「組織の目線から」 ・環境ISOの情報開示の意義と課題 「認証機関の目線から」 |
2011年度 |
ISO 9001 認証のブランド価値を高める ・消費者の視点から〜お客様の期待を裏切らない製品の提供〜 ・社会の視点から〜安全・安心で豊かな社会の実現〜 ・社会の視点から〜安全・安心で豊かな社会の実現〜 ・産業の視点から〜産業競争力強化への貢献〜 |
地域社会と組織を支える環境 ISO とその将来展望〜東日本大震災を乗り越えて〜 ・ISO 14001 改正の概要と論点 ・東日本大震災を乗り越えて〜地震・津波・原発事故・節電対応への EMS 活用に関する事例紹介〜 |
東 日 本 大 震 災 特 集 |
2013/3/5 (注2) |
第1回マネジメントシステムシンポジウム マネジメントシステムにおける最近の課題とその対応〜ISO 9001改訂、複数マネジメントシステム規格、Annex SLを中心に〜 ・組織力を強化するISO 9001改訂〜基盤としてのQMSとその推進力に着目して〜 ・複数のMS規格を活用する〜複数のMS規格を活用したMSを構築・運用する際の考え方〜 ・IMS運用による改革事例紹介 |
I S O 規 格 改 定 対 応 |
2014/3/13 |
第2回マネジメントシステムシンポジウム 複数のMS規格を効果的に使う ・マネジメントシステム規格の開発動向 -ISO 9001を中心に- ・複数のマネジメントシステム規格を採用したMSの構築 〜MS構築の視点〜 ・統合マネジメントシステムとその審査について考える 〜MS審査の視点〜 ・Annex SLから読み取れる経営者へのメッセージ |
2015/3/19 |
第3回マネジメントシステムシンポジウム 2015年改訂に対応するマネジメントシステム WG1:ISO/DIS 9001が製造業のQMSに与える影響・インパクトを考える WG2:ISO/DIS 9001に基づくQMS構築のポイント〜サービス業におけるQMSを改めて考える WG3:ISO/DIS 14001への具体的な対応例 |
2016/3/3 |
第4回マネジメントシステムシンポジウム 「2015年改訂に対応するマネジメントシステム構築」 WG1: リスクに着目したプロセスアプローチを実現する WG2: EMS規格改訂における製造業の対応 WG3: ISO 9001:2015改訂に対応する〜認証の価値向上〜 |
2017/3/7 |
第5回マネジメントシステムシンポジウム 「2015年版の運用後に検出された課題とその対応」 WG1: 事業に活用できる2015年版QMS WG2: 環境パフォーマンス向上に必要な組織の能力の検証 WG3: 2015年版に基づくマネジメントシステムを審査するための力量 |
注1: | 各年度の大会は年度末の2月から3月頃に開催されているが、2010年度のJAB/ISO9001公開討論会は東日本大震災の影響で次年度の2011年5月に開催された。 |
注2: | 2012年度(2013年開催)から、QMSとEMSを合わせて開催。 |
注3: | 2013年より年度表記ではなく「第○回マネジメントシステムシンポジウム」という表記となった。 |
上表のテーマを見るとその変遷が一目瞭然でしょう。
2006年まではノーテンキな夢を語っていたものの、企業不祥事が相次ぎその企業がISO認証していたものだからISO認証は信頼できないというマスコミなどの影響で経産省も一言いい、そのあおりで認証制度はグラグラというかバタバタというか大きく煽られたわけです。それが2005年、その結果2006年からはISO認証の信頼性をあげようというテーマから一転して夢よさらば、現実は厳しいと語りだしたのです。
まあ誰だって人の子、気持ちはわかりますよ。文句を言われたらそれに従ったふりをしてかわそうとしたんでしょうねえ〜
真面目ぶって信頼性を考えたり(考えるふりをしたり)、認証の価値をあげようとしたり、
先生
!質問です。
信頼性って何ですか? 認証の価値って何ですか?
そんな言葉を定義もせずに軽々しく使っては困ります。JABの中川某氏は「信頼性の指標は認証件数だ」なんて講演会で語っていましたが、100%間違いだと思いますよ。

認証の価値って何ですかね
?
人によって違うでしょうねえ。認証制度にとっては間違いなくお金が入ってくることでしょうし、供給者にとっては認証という事実がものを買ってもらえることにつながることでしょうし、消費者にとっては安心して物が買えることでしょう。でも信頼性という言葉は同じでも、立場によって意味が違うのですから同じものを意味するはずがありません。
おっと、話がそれた。
信頼性をまじめくさって語り合ったのもたかだか4年。東日本大震災のときISOとして何か貢献できないのかと語るのは気持ちはわかる。気持ちは、
まあそれはともかく、その翌年は4年もかけて結論も出なかったのに、ISOMS規格が改定されると信頼性を忘れてしまって、今度は規格改定対応を議論ですか?
熱しやすく冷めやすい、というか節操のないとしか言いようがありません。
PDCAが回っていないことは明白です。
前年の結果を実務にどう反映したのか、その結果をみて翌年の活動に反映しないのですからオオカミにもサルにも及びません。

おいらだって 反省はできるぜ
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「反省だけなら猿にもできる」というコマーシャルは1993年の大鵬薬品のコマーシャル。ISO認証制度はサルにも及ばなかったのです。
じゃあ、サルにも及ばない制度に属している審査員が語ることはサルよりはましなのか?
企業で働く人間が聞くに値するものなのか?
これは研究に値するでしょう。少なくても「審査員はサルではありません。サルより優秀で反省するだけでなくPDCAを回すことができます」ということを言葉でなく証拠で保証してくれなければ審査を依頼する価値がありません。
信頼性が問題になったとき、認証制度はアクションプランというものを作りました。プランですよ、そこ忘れないように。
そこでは企業が審査でうそをついたから、審査員が騙されて適合していない企業を認証してしまったのだといいました。
本当なんでしょうか?
ともかく虚偽の説明は認証を取り消すなんて御大層な上から目線で言ったものです。
もしそうなら審査員を騙されないように教育訓練すべきです。時間が短いなら審査時間を増やせばいいでしょう。そういうことはなかったようです。
私が過去何年も継続してJABの広報やアイソス誌をながめてきましたが、信頼性向上アクションプランを実施結果、信頼性が上がりました、その証拠は・・なんて見たことがありません!
2015年改正は認証の信頼性を上げるためとか、企業の体制を形だけでなく実質を向上させるとかいいました。
本当なんでしょうか?
どうもそうではないようです。確かにshallどころか文言も構造も変わりました。でも虚偽説明対応の改訂ではありません。規格改定に「企業は審査で嘘をついてはいけない」というshallはありませんし、ISO17021にも審査員は騙されるなという文言も追加されていません。
実際に多くの認証機関は、2015年改定はいままでの要求事項と変わりません。何も変えなくても認証が継続できますといっています。
もし信頼性が虚偽の説明によるものなら、2015年改定はまったく意味のないことになります。
認証制度はそれについて説明責任があるでしょうね。
PDCAが回っているなら過去何年もの積み重ねがあるわけで、それを提示して説明できるはずです。そうでなければ是正なき組織なのでしょう。

本日の悩み
タイトルを「是正なき組織」としたが「是正しない組織」なのだろうか、それとも「是正できない組織」なのだろうか。まさか「是正を知らない組織」ということはないだろうと思うのだが・・
実を言って本文中「とりとめがない」と書いたが「波乱万丈」が正しいのか、あるいは別の四字熟語にするか悩む
外資社員様からお便りを頂きました(207.04.25)
是正なき組織
こういう会社、組織、人は、ある比率でおりますよね。
お役人様でも見かけますが、無謬主義者みたいな人もおります。
歴史の世界をみますと、希代の困ったチャン GD天皇も代表ですね。
(ファンも多いので、伏字です:笑)
スローガンや理想論は立派ですが、結局 ご当人に反省することがないので、失敗から学べない。 勢いがなくなると、失速します。
失速した時に自滅で終われば良いのですが、周りを巻き込む。
主義に殉じる信者は、それでも幸せかもしれませんが、抱える組織が大きいほど、大変な衝撃がおきます。
日本学術会議総会では「(北朝鮮の)弾道ミサイルを地対空ミサイルで迎撃してよいのか」と議論したという
この人達も、歴史に学んでいませんね。
「あの戦争で」とか言って、感情的に盛り上がっていましたが、日本の学術界は、中国戦線から二次大戦まで、反省するほど国家にも戦争にも貢献していませんよ。
英米は言うに及ばず、ドイツでも、学会は組織的に 戦争への貢献をしました。
戦争への貢献というとネガティブに思う人も多いですが、国民を守ることも重要ですし、駆り出された兵士の命を救うことも重要なのです。
また、直接 戦闘に関連しなくても、暗号解読、情報解析など、文系の能力が重要な部門もあるんどえす。
ですから、こういう論議をするならば、「国民を守る事」「兵士の命を守る」「インテリジェンス」ということの必然を
考えたうえで議論するべきでしょうね。
もちろん、その前に、あの戦争で、自分達は国民の命や財産を守ることに貢献できたかを考え直してほしいものです。
とりとめのない話で失礼しましたが、この会議については、本当に残念に思っておりましたので。
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返事が遅くなってすみません。
最近北朝鮮危機もありますし、韓国が慰安婦合意は白紙とかいいだしましたんで、朝日とかNHKとかデモ活動に参加することが多いのです。
私一人参加してもどうってことはないのはわかりますが、やむにやまれぬです。
是正の件
ISOはともかくとして、日本の政党も新聞社も学会もお花畑というか現実を見ていませんよ。
朝日新聞は以前「外国からミサイルが飛んできても一発だけなら誤射かもしれない」と書きましたが、頭の中身を見てみたいです。
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