「センテニアル」ジェームズ・ミッチナー
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出版社 | ISBN | 初版 | 定価(入手時) | 巻数 |
河出書房 | なし | 1976 | 1500 | 全3巻 |
日本人が出目、主義思想に関わりなく誰でも楽しめて、勇気がみなぎり、誇りが持てるそんな小説、物語、あるいはノンフィクションがあるだろうか?
司馬遼太郎の『竜馬が行く』なんかそうかもしれない。でも幕府方だった会津藩や新撰組ゆかりの人は面白くないだろう。
あなたの誇りは私の悲しみでは困る。
センテニアルとは百年祭という意味、この本は1974年にアメリカ建国200周年を機に書かれた。
それより以前の西部開拓やアメリカ建国の物語は、キリスト教が絶対、白人がインデアンや野獣、厳しい自然に立ち向かい築き上げたというニュアンスが強く出ている。ケネディ大統領が支援したといわれる1964年の『西部開拓史』(How the west was won)は当時としてはかなりインデアンにも配慮した書き方だったがそれでも黒人や中国人をはじめとする非白人は活躍してない。
センテニアルにはイギリス系、ドイツ系、その他のコーカシアンが出てくるし、中国人、黒人、日本人が主要人物として出てくる。その舞台には争い、戦争、犯罪、災害、疫病さまざまな困難があり、彼らの行く手を拒む、しかしすべてのアメリカ人がアメリカを作っていく、そんな物語だ。
アメリカ人はすばらしい、アメリカは誇り高い国、アメリカ国歌が聞こえてきそうだ。アメリカ人なら白人、中国系、黒人、日系誰でも感情移入できてそして自信と喜びをもてるだろう。これを読んだアメリカ人でない人はアメリカ人でないことを残念に思うだろう。それが100%真実かどうかはまた別問題である。まったくの小説でも一億の日本人すべてが喜べる本は思い当たらない。
そしてこれは単なる小説じゃなく地球誕生から現代までの科学的な解説本であり、登場人物(?)としては人間だけでなく恐竜や哺乳類の祖先まで出てくる。
何代もの世代と時代を書きながらドイツ流大河小説とはまったく異なり、ミッチナー流なのだ。『ハワイ』や『人間の歴史』も同じくスゴ〜イのだ。
どうすごいかは一読するしかない。(^^)
作者ジェームズ・ミッチナーはベストセラー作家で文学的な評価はどうか知らない。でも彼の作品はスゴイの一言。人を泣かせて、うれしがれせて、誰も悪人にしない。
私は日本人もセンテニアルのような国民全部が楽しめる、すばらしい物語を持てたらな〜とため息をつくしかない。
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