我が家には日の出が三度ある 2005.05.15
ローマは世界を三度征服したなんてことわざがありました。
でもね、もっとすごいのがあるのですよ。
我が家には日の出が三度あるのです。当然、日の入りも三度あります。
といっても驚くことはありません。
私たち夫婦の住んでいるマンションのまわりには、たくさんのマンションやビルがある。
いつも言っているが、私は「マンション」という言葉を使うのにものすごい抵抗があるというか、恥ずかしさを感じる。
わが師から「マンションじゃないでしょう、フラットとかアパートじゃないか」という突込みがあるのでは・・・と怖れております。 
でも、日本ではマンションといわないと通じないのです。ビニールというのと同じですから、ご容赦願います。
私たちはマンションの低層に住んでいるので、一日のうち太陽の光が差すのはほんの一時(いっとき)である。
朝早く、いっときベランダの反対側に日が差したと思ったら、出勤する時刻には、もう太陽が動いて窓から日光が入りません。もちろんこの間は、前面のベランダ側には全然日はあたりません。

やがて昼前になると、ベランダ側に太陽が恥ずかしそうに「ちょっとだけよ」と顔を出します。
洗濯物を干すにはこの二度目の日の出を狙わないといけません。
ところが、太陽が見えたと思ったら、お昼過ぎには南側にある背の高いマンションの陰にまたお隠れになってしまい、二度目の日の入りとあいなる。
そして午後遅くになって太陽はマンションの西側からみたび表れ、弱い光が差してきます。やがて本当の日没よりはるか前にその隣のマンションに隠れ、そしてそのまま日没となる。
これが我が家の日照の状況である。
私は現在、首都圏に住んでいる。
都会、特に東京では、先祖代々からの住民以外はマンションに住むか、あるいは住所に字(あざ)がつく通勤時間がかかるようなところでないと一戸建てに住めない。
それは持ち家であっても借家であっても同じである。
一方、田舎に住んでおりますと、ほとんどの方は一戸建てに住んでいます。
大きな会社にお勤めの方が都会から田舎の工場に転勤してきて、田舎では珍しいマンションを買いました。
まわりの人がみんな言いました。「なんで一戸建て買わないの? 同じ値段なのにね」
その方は「マンションが都会の半額だ!」と喜んで買ってしまったのかもしれませんね。
田舎では建売といっても一戸建てなら敷地は70坪くらいありますし、車二台の駐車場が付いています。だって車二台ないと暮らしていけませんから。
田舎の住宅地では、せいぜいが二階建ての戸建住宅が並んでいるわけで、日照が問題になるということはまずない。朝、お日様が出れば日没までずっと日の光があたります。
マンションでは更にまた問題があります。
田舎から出てきてマンションに住んだとき一番気になったのは、日中でも家の中が暗いということです。
マンションというとどこも似たり寄ったりの間取りです。たいていは細長い長方形の短い一辺にベランダがあり、反対側の短い辺に玄関と申し訳程度の窓があります。しかし左右の長い辺はおとなりとの境の壁ですから当然窓がありません。中ほどにある部屋とかトイレは日中でも真っ暗で照明が必要です。
田舎の一戸建てというのはどの部屋も窓があり、
採光は最高です。
マンションに住んだ当初は、この暗さのおかげで気分まで暗くなりましたね。田舎者は太陽と自然に囲まれていないと元気が出ないのです。
なんだかんだといいながら、定年までこんな環境で暮らすのでしょう。
田舎では職がなく、都会では住環境が悪い。このトレードオフに悩んでいる人は私だけでなく大勢いるに違いない。
なぜ低層階かというと、同じマンションでも上になるほど家賃が高いからである。我が家は見晴らしが良いというだけに余計な家賃を払うほど余裕がない。
でもマンション高きがゆえに尊くはなく、上階が価値があるとも限らない。
北朝鮮では停電が多く、エレベーターが使えないので高層階は嫌われているそうである。エレベーターどころか水汲みも大変と書いてあるウェブサイトもあった。