さて、この条項で天皇は内閣からご指名があれば最高裁長官を任命すると定めています。
憲法第7条第5号で天皇は国務大臣などを「任免する」とありますが、最高裁長官は「任命するのみ」で解任することは規定されていません。
同じく第六条第1項でも内閣総理大臣を「任命するのみ」で解任することの規定はありません。
本日はその辺を考えて行きたいと思います。
最高裁長官をどう選ぶかということは実はこの条項以外規定がありません。
長官に限らず、最高裁判事の任免のインターバルや次のようになっています。
第6条 | 第2項 | 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。 |
第79条 | 第1項 | 最高裁判所・・・の長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。 |
第2項 | 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。 |
第3項 | 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。 |
第5項 | 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。 |
第79条第2項で定める国民審査で罷免された裁判官って過去にいません。それで読売新聞社の改憲案などを見ると国民審査なんて止めてしまえというのが多いようです。私はまっこうからこれに反対で
裁判官は選挙で選ぶべきだと確信しています。
いえ、これはエキセントリックな妄想ではないのです。
憲法第15条第1項を実現しようとしますとそうならざるを得ません。
そしてまた最高裁長官って定年になるまでその任に留まるというのが恒例のようです。
漢字変換で「恒例」を出そうしましたら「高齢」とでてしまいました。
現実を暗示するようです。

歴代最高裁判所長官 |
歴代 | 氏名 | 就任 | 退官 | 生年 | 没年 | 退任時年齢 |
1 | 三淵忠彦 | 1947 | 1950 | 1880 | 1950 | 70 |
2 | 田中耕太郎 | 1950 | 1960 | 1890 | 1974 | 70 |
3 | 横田喜三郎 | 1960 | 1966 | 1896 | 1993 | 70 |
4 | 横田正俊 | 1966 | 1969 | 1900 | 1973 | 69 |
5 | 石田和外 | 1969 | 1973 | 1903 | 1979 | 70 |
6 | 村上朝一 | 1973 | 1976 | 1906 | 1987 | 70 |
7 | 藤林益三 | 1976 | 1977 | 1907 | - | 70 |
8 | 岡原昌男 | 1977 | 1979 | 1909 | 1994 | 70 |
9 | 服部高顯 | 1979 | 1982 | 不明 | 不明 | 不明 |
10 | 寺田治郎 | 1982 | 1985 | 1915 | 2002 | 70 |
11 | 矢口洪一 | 1985 | 1990 | 1920 | - | 70 |
12 | 草場良八 | 1990 | 1995 | 1925 | - | 70 |
13 | 三好達 | 1995 | 1997 | 1927 | - | 70 |
14 | 山口繁 | 1997 | 2002 | 1932 | - | 70 |
15 | 町田顯 | 2002 | - | 不明 | - | - |
文言についての疑問ですが、
まず、任命した者が解任する者であることは論理的に間違いないところと思います。
「天皇が国務大臣を任免する」(第7条第5号)というのは論理的に正しい。
内閣総理大臣は天皇に任命されるだけ(第6条第1号)で罷免されることはない。
しかし、第69条で不信任されたとき、第70条で総選挙後には総辞職すると決めている。だから論理的に矛盾は起きない。
私は語義からいえば、辞職ではなく失職ではないか?と考えているが・・・
しかし最高裁長官は・・・
第78条 心身の故障のためを除いて罷免されない。
第79条第3項 投票者の多数が罷免を可とするとき、罷免される。
とある。
いったい誰が罷免するのか?主語はない、 英語原文も同じ・・・
先ほど書いたように論理的には任命した天皇であるはずだ。しかし天皇の行為には最高裁長官の罷免はない。
罷免とはどう読んでも自発的に職を辞すことではない。
日本語でも原文のremoveもしかり
remove:to make somebody leave him/her job or position
ならば罷免する人が必要なのだが・・・
と、悩むこともないか?
なにせ愛しきマッカーサー憲法はそのすべてが論理ハチャメチャなのだから、
では本日の結論は
いかなる職も任命されると実効性のない国民審査だけで勤務評定もなく、定年までその職にいるということはあってはいけないことです。
私は読売新聞改憲案に全面賛成ではありません。しかし読売案にあるように裁判官は有期の任期で就任し、満了時に審査を受けて再任命あるいは任命されないという仕組みとすべきでしょう。
私は本来は裁判官を選挙で選ぶべきと考えます。
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