憲法も面白そうなところは論評しましたので最近は書いておりませんでした。
最後まで書こうと一大決心をして終戦処理に乗り出したところです。
日本国憲法の終戦処理はいつになったらできるのでしょうか?

この条文を読んでアレと思いました。文章としてどこかおかしくありませんか?
「処理する権限」を「行使する」という言い回しがダブっているような気がしませんか?
わたしは「国の財政は、国会の議決に基づいて、これを行わねばならない。」というのが自然ではないかと感じました。
しかしよく読むと、この文章は「財政を行う」のではなく「権限を行使する」ことを書いています。
更に読み直すと、この「権限の行使」について、いろいろな解釈ができることがわかります。
国の財政を行使する権限は、毎年国会の議決によって決定されるのでしょうか?
そうではなさそうです。
財政を処理する『権限』は『行政権』ですから、『国の財政を処理する権限』と『行政権』を入れ替えると、この文章は
「行政権は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」
これは、第65条の繰り返しにすぎません。単に改めてというかかっこよく書いたというのでしょうか?
注)ISO9001やISO14001では定義された語句とその定義を入れ替えるても、意味が変わらないことが保証されている。
『国の財政を処理する権限』というものが「個々の案件の処理」について語ったものと理解すれば、
「国家の財政の個々の具体的処理するにあたっては、(国会の議決結果である)予算に基づいて判断しなさい。」
とも思える。
いずれにしても『処理する権限』という語句がダブっているような気がすることは否めません。
ここで使われている権限はもともとはいったいどういう意味なのであろうか? 案外原文では全然関係ない言葉だったのかもしれません。
権限というとISOの世界の住人はauthorityを思い浮かべてしまう。責任(authority)と権限(responsibility)はセットで使われる。もちろんより一般的な組み合わせとして責任と権利というセットもある。
この二つのセットはチョット組み合わせが異なるのだが・・・
英語原文では
The power to administer national finances shall be exercised as the Diet shall determine.
「権限」に対応するのは「power」であった。Powerとは権限というより権力ではないかという気がする。
興味が湧いたので日本国憲法英文の「power」は、どのような言葉に翻訳されたのだろうか?
漏れのないようにと紙と鉛筆を持って目を皿のようにして探すことはない、ワードがひとりで探してくれる。
前文第一節★ (2箇所) | sovereign power power | 主権 権力 |
第1条 | sovereign power | 主権 |
第4条 | power | 権能 |
第7条5項 | full powers and credentials★ | 全権委任 |
第41条 | the state power | 国権 |
第65条 | Executive power | 行政権 |
第66条 | Executive power | 行政権 |
第76条 (2箇所) | judicial power | 司法権 |
第77条1項 第77条2項 | rule-making power | 規則を作る権限 |
第77条3項 | the power to make rules | 規則を定める権限★ |
第81条 | power | 権限 |
第83条 | power | 権限 |
Powerという単語が使われているのは14箇所、power単独で用いられているのは4箇所でした。
不思議なのは第77条1項と2項では『rule-making power 規則を作る権限』なのですが、3項になりますと『the power to make rules 規則を定める権限』となります。不思議としかいえません。法律や規則においては言い回しを同じにすべきでしょう。
単独で使われている4箇所において、対応する日本語は「権力」、「権能」、「権限」と違います。
このように使われている箇所により英語と日本語の対応がいろいろです。
日本語として考えて、主権、権力、権能、国権、行政権、司法権、規則を作る権限が同じはずはない。
規則を作る権限はauthorizeで異議はないのだが・・・
いずれにしてもこう英文から和文への語の変換がゆらいでいては、心もとない。
この条文は何を言いたいのかと法律の本を見ると、明治憲法では国家財政の運用について議会の権限ではあったが、例外規定が多々あり、内閣が自由に扱えたからそれを防ぐためであるとある。
私には、この条文が意味明瞭ではなく、あまり適切な表現でないと思います。
ところで、マッカーサー憲法を作った連中の国、アメリカ憲法ではどうであろうか?
実はあまり言い回しにこっていないのである。
Article. I. Section. 9.
No Money shall be drawn from the Treasury, but in Consequence of Appropriations made by Law; and a regular Statement and Account of the Receipts and Expenditures of all public Money shall be published from time to time.
国庫からの支出は、法律で定める歳出予算に従う以外は一切行われてはならない。すべての公金の収支に関する正式の予算決算書を随時公表しなければならない。(アメリカ大使館公式訳)
歳入歳出を含めてすべての法律はすべて議会が制定するのであるから、この表現で十分である。
マッカーサーは自国の憲法すら読んだことがなかったようだ。

このような意味不明瞭な文章ではなく、ぜひ単純明快、読み違いのないように言い回しを直したい。
なによりも私の性格には合わない。こんな言い回しでは、じんましんがでそうです。
第83条改正案
「国の財政は、議会が定める歳出予算によって行う。」
権限や行使なんて余計な言葉はいりません。たんたんと粛々と・・・これで十分です。
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