次世代DVDについて

LAST UPDATED 6/24 2009

DVDの後継となる規格について、ソニー&松下陣営のBlu-ray Disc(BD)と東芝陣営のHD DVDが規格争いをくり広げていた。
BDはDVDとはまったく異なる構造を採用する事で獲得した大容量をアピールし、HD DVDはDVDの延長線上にある構造を採用する事による低コストをアピールした。これは奇しくもDVD時代の東芝規格(SD規格)対ソニー規格(MMCD規格)とちょうど逆の主張となっていた。
HD DVDはDVDフォーラム公認ではあったが参入メーカーが実質東芝のみという厳しい状態であったが、2008年1月に最大手のワーナーブラザースがBD専 売を発表した事により大きく劣勢になった。2008年3月には東芝も撤退を決め、HD DVD規格の終焉を迎えた。
BDとHD DVDはディスクの構造が物理的に全く異なるが、中身のデータ自体は共通する部分が多くあった。

Blu-ray Disc(ブルーレイディスク)
Blu-ray Disc(BD)は青紫色半導体レーザーと0.1mmのカバー層の光ディスクを使うことで大容量を確保したメディアであり、第1世代が2003年に商品化 された。ディスクはCDやDVDと同じ直径12cm、厚さ1.2mm。これまでの光メディアは再生用規格から策定し、その後記録用規格を策定するのが常であり、記録用規格は再生用規格と互換性をとるために苦労していた。
DVDでは再生用規格はDVD-ROM1種類だったが、記録用規格はDVD-R、DVD-RW、DVD-RAM、DVD+R、DVD+RWの5種類に分裂してしまった。
こ の反省からBDは記録用規格から開発がスタートし、2003年に第1世代(BD-RE Ver1.0)の機器が商品化された。第1世代の時点で既にディスク容量は片面1層23GB/25GB、2層50GB(転送レートは36Mbps)を実現してい た。ディスクはカートリッジで保護されていた。

そ の後、カートリッジに保護されていないベアディスクでの再生用規格(BD-ROM Ver1.0)が策定された。2006年前半にプレーヤーが北米で発売され、日本では2006年末になってようやく対応レコーダーとBD-Video再生機能を持つPLAYSTAION3が発 売された。この時点でBD-REは第2世代(Ver2.1)となり、ベアディスクが標準となった。ディスクを保護するため、ディスクの表面をハードコーティングする技術が追加されている。カバー層は0.1mmだが、片面2層の場合はさらに薄くなる。
同時期にBD-R(BD-R Ver1.1)も製品化された。BD-RはCD-RやDVD-Rで採用されている有機色素ではなく無機材料を使用していた。無機系は有機色素系より保存性が良いが価 格が有機色素系より高価なため、BD-R LTH type(BD-R Ver1.2)という新規格で有機色素系にも対応した。ただし使用するには対応する機器が必要となる(PLAYSTATION3はver2.20で対応)。
何れもディスク容量は片面1層25GB、2層50GB(転送レートは1.5倍速の54Mbps)である。
BD1層とDVD2層の片面3層ハイブリッドディスクも可能(規格化はされていない)。また、BD、CD、SACDを各1層ずつ収録したディスクもある。

再 生用規格のBD-Video(BDMV)は、「Blu-ray Disc Profile1.0」からスタートし、PinP機能を追加した「Blu-ray Disc Profile1.1」、ネットワーク機能「BD-Live」を追加した「Blu-ray Disc Profile2.0」と発展している。
Profile2.0に初めて対応したプレイヤーはPLAYSTATION3(ver2.20以上)で、徐々に対応機種が増加している。

BD-Video(BDMV)はMPEG-2 TS(MPEG-2 トランスポートストリーム)を採用し、ハイビジョン(HD)と標準画質(SD)が収録できる。対応解像度は720×480/60i、 1280×720/60p、 1280×720/24p、1440×1080/60i(MPEG-4AVC、VC-1のみ)、1440× 1080/24p(MPEG-4AVC、VC-1のみ)、1920×1080/60i、1920×1080/24p。ビデオ コーデックはMPEG-2、MEPG-4 AVC/H.264 MainProfileまたはHighProfile、VC-1の何れかが使用できる。
音声はリニアPCM(マ ルチチャンネル対応)、ドルビーデジタル、DTSの何れかが必須。オプションとしてドルビーTrueHD、ドルビーデジタルプラス、DTS-HD MasterAudio、DTS-HD HighResolutionAudioが使用できる。マルチチャンネルのリニアPCM、ドルビーTrueHD、ドルビーデジタルプラス、 DTS-HDはHDMI端子でのみ出力が可能。
メニュー等にはDVDと似たHDMV(High Definition Movie)とJavaを使用したBD-J(Blu-ray Java)が使用できる。BD-Jを使用した場合は、ゲームなどの高度なコンテンツが実現できる。
DVDと同様にマルチ音声、マルチ字幕等の機能もあり、字幕の表現力はDVDから格段に上がっている。
著作権保護機能にはAACS、BD+、BD-ROM Markの3つが採用されている。これらを組み合われて使用する事も可能。
リージョンコードも存在するがDVDとは異なり、日本と北米は同じリージョンコードAになっている。

BDMVのフォーマットは、ビデオカメラのAVCHD規格にも採用されており一部互換性がある。AVCHDはDVDの他、SDHCメモリカードやメモリースティックPROにも記録できる。

BD-REやBD-R等にデジタル放送等を記録する際にはBDAV(DVDのDVD-VRに相当)を使用する。
BDAVもMPEG-2 TSを採用し、放送波(MPEG-2、AAC、データ放送)を劣化なく記録する事ができる他、映像をMPEG-4 AVC/H.264に変換して記録する事もできる。
DVDはMPEG-2 PS(MPEG-2 プログラムストリーム)を採用しているため、DVDからBDにコピーする際に変換が必要となる。
こ の実装はメーカーによってまちまちで、ソニーのように内蔵HDDにコピーする際に変換し、BDにコピーする際には高速ダビングする機種もあれば、松下のよ うに内蔵HDDにコピーする際は高速ダビングでBDにコピーする際に変換する機種もある。いずれにせよ、変換時に再圧縮を伴うため画質の劣化は避けられない。(原理的には再圧縮無しで変換可能なので将来的には無劣化で行なえるようになるかもしれない。)
BDAV フォーマットをDVDに記録したものをAVCRECと呼ぶ。主にMPEG-4 AVC/H.264の番組を記録するものだが、規格上は放送波を劣化なく記録する事(DRモード)も可能。だが、実装している機種はまだない。コピープロ テクションはAACSをCPRMで代用するため、CPRM対応のメディアが必須(プロテクト無しのものはCPRM非対応でも可)。
なお、AVC記録した時のドルビーデジタル音声に松下機とソニー機で互換性問題が生じていたが、2008年秋モデルで松下がAAC音声に変更したため、最新機種では互換性は問題ない。
DVD± RやDVD±RWは他機種で再生する時にはファイナライズする必要があったが、BD-R、BD-REは必要ない。また、CD-RやDVD- R等で問題となっていた反射率がROMより低いため、プレイヤーによって読めないといった現象も発生しない。

HD DVD
HD DVDはDVDフォーラムによって策定された次世代DVD規格。BDと同じく青紫色半導体レーザーを使用するが、ディスクのカバー層はDVDと同じ 0.6mm。そのため、容量は片面1層15GB/2層30GBでBDに大きく劣る(片面3層51GBも規格化されたが、実現性は低かった)。ディスクはCDやDVDと同じ直径12cm、厚さ1.2mm。DVDフォー ラムには東芝を始め、ソニーや松下等も参加しているが、実際にHD DVDを支持したメーカーは東芝、三洋、NECのみ。その中で実際に製品を発売したのは東芝だけであった。
HD DVDは従来の光ディスクと同じく再生用規格から策定を始め、後から記録用規格を策定した。そのため、記録用規格の商品展開に遅れが生じ、相変わらずファイナライズという無駄な作業が必要になってしまった。

記録用規格は色々と変遷があった後、HD DVD-R、HD DVD-RW、HD DVD-RAMの3種類に決まった。しかし、なかなか製品化されず、結局HD DVD-RWは一部のノートパソコンのみしか採用されず、HD DVD-RAMは製品化されなかった。

HD DVD-VideoはBDと同じくMPEG-2 TS(MPEG-2 トランスポートストリーム)を採用し、ハイビジョン(HD)と標準画質(SD)が収録できる。ビデオ コーデックはMPEG-2、MEPG-4 AVC/H.264 HighProfile、VC-1の何れかが使用できる。
音声はリニアPCM(マ ルチチャンネル対応)、ドルビーデジタル、DTS、ドルビーデジタルプラス、ドルビーTrueHD(2ch)の何れかが必須。オプションとしてドルビーTrueHD、、DTS-HD MasterAudio、DTS-HD HighResolutionAudioが使用できる。
メニュー等にはマイクロソフトのiHDを採用。簡単な記述でインタラクティブコンテンツを作成できた。Blu-rayがBD-Liveで実装したネットワーク機能は当初から盛り込まれていた。
著作権保護機能にはAACSのみ。リージョンコードは導入されなかった。
DVDとHD DVDを1層ずつ収録した片面2層ハイブリッド盤も存在した。

HD DVD-R等にデジタル放送等を記録する際にはHD DVD-VR(DVDのDVD-VRに相当)を使用する。
HD DVD-VRは放送波のMPEG-2 TSを劣化なく記録する事ができる他、映像をMPEG-4 AVC/H.264に変換して記録する事もできる(音声はAACのまま劣化無し)。
また、DVDで採用されているMPEG-2 PSとの混在も可能なため、DVDから無劣化高速ダビングも可能になっている。
HD DVD-VRフォーマットをDVDに記録したものをHDRecと呼ぶ。CPRM対応のメディアが必須。
東芝の実装ではHD DVD-Rに記録した内容をほぼそのままHDRecに記録する事が可能になっている。
AVCRECとHDRecの互換性は全くない。
なお、HD DVD-VRで記録したHD DVD-Rは、HD DVD-VRに対応したプレイヤーでないと再生する事ができない。当初HD DVDプレイヤーで対応しているものは少なかったが、ソフトウェアのアップデートで一部の機種は再生に対応した。
しかし、XBOX360のHD DVDプレイヤーは対応していない。

アナログ出力について
Blu-ray Disc、HD DVDが共に採用する著作権保護機能「AACS」の運用方針は、アナログ出力は当初D2(480p)までという事になっていた。これはD3以上にコピープ ロテクトの仕組みがなかったからだが、多くのテレビがデジタル入力に対応していない現状から、2011年までの期間限定でD4(720p)までのアナログ 出力が許可された。2011年以降はD3以上のアナログ出力が禁止となり、2014年以降はアナログ出力が全面禁止となることが決定されている。しかし、未だデジタル(HIDMI)端子を持たないTVが多く流通している事もあって、混乱が予想される。
なお、DVDのアップコンバートについては著作権保護されたディスクについてはD2(480p)までしかアナログ出力が許可されていない。

ソフト会社の動向
規格がBDとHD DVDに分裂した事により、ソフトを発売する会社もどちらかの陣営に分裂してしまった。
当初、BD陣営はソニーピクチャーズ、20世紀FOX、ディズニーが支持を表明、
HD DVD陣営はワーナーブラザース、ユニバーサル、パラマウント(傘下のドリームワークスも)が支持を表明し、互角の戦いだった。しかし、ワーナーブラザー スとパラマウントが両陣営を支持するようになり事態が一変。ユニバーサル作品以外はBDで見られる事になり一気にBD優勢になった。
その後、(裏金で)パラマウントとドリームワークスがBD陣営の支持を撤回しHD DVD専売になり、少しHD DVDが劣勢を跳ね返したかに思えた所に、シェアの半分近くを握るワーナーブラザースがHD DVD陣営の支持を撤回しBD専売を表明。
このワーナーの決断にDVD時代から盟友だった東芝は大きなショックを受け、HD DVD事業の撤退に繋がっていった。

日本国内では次世代DVD自体に映画会社大手が消極的で、松竹がHD DVDを発売したくらいでほとんど発売されなかった。アニメのバンダイビジュアルは最初だけHD DVDとBDを同時に発売したが、すぐにBDしか発売しなくなった。

BD の初期タイトルはまだ圧縮技術が熟成していなかったため、MPEG-2を採用したものが多かった。音声もDVDと同じドルビーデジタルでコーデック的には 次世代を感じさせるものではなかった。その後、映像にMPEG-4 AVC/H.264を、音声にマルチチャンネルのリニアPCMやロスレスのドルビーTrueHDやDTS-HD MasterAudioを採用するタイトルが増加し、現在では(ワーナー以外)ほぼ主流になっている。BDの大容量と高転送レートならではといったところ か。

HD DVDは初期タイトルからマイクロソフトの協力でVC-1を採用したものが多く、ややのっぺりとした画質ながら良好な画質であった。音声も初期タイトルからドルビーデジタル・プラスを採用したものが多く、次世代らしかった。
その後、BDと同じく映像にMPEG-4 AVC/H.264、音声にドルビーTrueHD等を採用するタイトルも増えたが、容量不足のため、ロスレス音声が収録されない事も多かった。


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