サラウンド規格

LAST UPDATED 4/23 2008

サラウンドとはリスナーを取り囲むように配置した複数のスピーカーを利用して立体的な音響を実現するもので、プレーヤーから出力された音声信号をAVアンプに入力してからスピーカーを鳴らすのが一般的である。
2〜3個のスピーカーやヘッドホンだけで仮想的にサラウンド環境を作る技術もあるが、制作者が想定した音響効果とは程遠いものになる。

現在、家庭で使用されているサラウンド規格の代表的なものを以下にまとめてみた。


ドルビーサラウンド
概要

ドルビーサラウンドとは、ドルビー研究所が開発した映画のドルビーステレオの家庭用規格名である。
右、左、センター、リアの4chで、リアの再生帯域は7MHzに限定されている。
ドルビーサラウンド・プロロジックでは、プロロジック回路によりチャンネル間の分離が良くなっている。
また、ドルビーサラウンド・プロロジック||では、ドルビーサラウンド・プロロジックよりも高度な処理がなされ、 ドルビーサラウンド収録されたものはもちろん、ドルビーサラウンド収録されていないものも5.1ch化される。(リアの再生帯域も制限されない)
ドルビーサラウンド・プロロジック||xでは6.1chまたは7.1ch化も行なわれる。

方式
ドルビーサラウンドの収録は、マトリクスエンコードという方式で右左の2chに4ch分の情報が収録されている。 具体的には、記録時に右左の2chにセンターchを同位相で入れ、リアchを逆位相で入れる。 再生時には逆の処理を行い、右左の2chからセンターchとリアchを分離する。
2chのままでの再生も問題なく可能だが、リアchの音声は逆位相で入っているため聞こえにくくなる。

放送や映像ソフトにはそのまま2ch音声にドルビーサラウンド録音された音声が入っているので、 家庭で映画館と同等の音響効果が得られる。
なお、DTSステレオも似た方式で、ドルビーサラウンドデコーダでサラウンド再生ができる。

接続方法
アナログ方式なので、AVアンプとの接続はRCA端子でもデジタル端子でもHDMI端子でも構わない。


ドルビーデジタル
概要
ドルビーデジタルとは、ドルビー研究所が開発した映画館で多く使われているドルビーステレオSR-D(デジタル)の別名、または家庭用規格名である。ロッ シー(不可逆)圧縮を採用。DVD、Blu-ray Disc、HD DVDの必須規格となっている。

フロント左右、センター、リア左右、サブウーファーの5.1チャンネル(サブウーファーは0.1チャンネルと数える)で、 各チャンネルが完全に独立しているので、マトリックス方式のドルビーサラウンドより定位がはっきりし、各チャンネルの干渉も少なくて済む。 リアチャンネルの周波数もフロントと同じ20MHzもあるので、ドルビーサラウンド(7MHz程度)よりダイナミックレンジが広く、リアチャンネルがステ レオになっている(ドルビーサラウンドはモノラル)。 最初はドルビーサラウンドAC-3(オーディオ・コーデックの3番目という意味)と呼称していたが、 突然ドルビーステレオSR-DとドルビーサラウンドAC-3をドルビーデジタルという名称に変更したので、少し混乱した。

方式
ドルビーデジタルは5.1chのデジタル信号をAC-3という圧縮方法で圧縮した方式。再生時は5.1chのデジタル信号に復号して から再生するが、元のデジタル信号とは全く同じにはならず、若干劣化している。
サ ンプリング周波数/量子化ビット数は48kHz/16bit。ビットレートは最大640kbpsのCBR(固定ビットレート)となっているが、LDは最大384Kbps、DVD、HD DVDでは最 大448kbpsに制限されている。Blu-ray Discには特に制限はなく最大640kbpsまで可能。DVDでは容量の関係から192kbpsや384kbps等の低めのビットレートが良く使われる。

DVDも標準規格としてドルビーデジタルが採用されている。 ただし、DVDではモノーラルやステレオ音声もドルビーデジタルで記録される事が多い。 2chで記録されているドルビーサラウンドを再生する時にはAVアンプの設定によっては、 ドルビープロロジック回路が動作しないので、注意が必要。

接続方法
LDはアナログトラックの右チャンネルを使って収録しており、 再生するにはに対応したLDプレーヤーと、ドルビーデジタルデコーダ(デコーダ内蔵AVアンプ)が必要になる。 しかし、デコーダにはLDプレーヤーの専用端子から出力されるRF信号をじかに受け入れないものもあるので、 その場合は別売のコンバーターが必要となる。 

DVDは全てのプレーヤーにドルビーデジタルデコーダは積んであるのだが、5.1ch出力機能を持つ機種は多くない。 5.1ch出力機能を持つプレーヤの場合は、AVアンプのRCA端子にアナログ接続できる。
それ以外は、AVアンプのデジタル端子(光または同軸)にデジタル接続するが、AVセンターがドルビーデジタルに対応していないと再生できない。

Blu-ray Disc、HD DVDはDVDと同様の接続方法の他、映像と同時に送信できるHDMI端子も使用できる。


ドルビーサラウンドEX
概要

ドルビーサラウンドEXは、ドルビー研究所が開発した映画館で使われているドルビーデジタル・サラウンドEXの家庭用規格名である。ドルビーデジタルの 5.1chにリアセンター(サラウンドバック)を加えた6.1chで構成される。ドルビーデジタルと同様の接続方法で使用できる。

方式
ド ルビーデジタルとの互換性をとるため、構造はドルビーデジタルと同じで、リアセンターの音声をリアの左右チャンネルに同位相でマトリックスエンコードす る。再生時にはマトリックスデコードを行い、リアセンターの音声を分離する仕組み。つまり、リアセンターだけはアナログ処理となる。
こうする事で ドルビーサラウンドEXに対応してない機器でも違和感なく再生できる。
データ自体はドルビーデジタルと同一であるが、 ドルビーサラウンドEX記録のものはEXフラグが付加されている。(一部のタイトルにはEXフラグがないものがある)


ドルビーデジタルプラス
概要
ド ルビーデジタルプラスはドルビー研究所が開発した家庭用次世代オーディオ規格で、ドルビーデジタルを上回る音質を実現している。ロッシー(不可逆)圧縮 を採用。Blu-ray Disc、HD DVDでのみ使用可能だが、Blu-ray Discではオプション規格となっている。

方式
ドルビーデジタルプラスは最大7.1chのデジタル信号をEnhanced AC-3という圧縮方法で圧縮した方式。再生時は元のデジタル信号とは全く同じにはならず、若干劣化している。
サ ンプリング周波数/量子化ビット数は48kHz/16bit。ビットレートはHD DVDが最大3Mbps、Blu-ray Discが最大1.7MbpsのCBR(固定ビットレート)となっている。ドルビーデジタルとの互換性も考慮され、ドルビーデジタルプラスをドルビーデジ タルに変換する機能もある。

ドルビーデジタルプラスはIndependent Substream(IS)という基本となるサブストリームと、その追加サブストリームとなるDependent Substream(DS)で構成され、各ストリームは最大5.1ch収録できる。
7.1ch 収録する場合はISに5.1ch分の情報を入れ、DSにリアチャンネルの4ch分の情報を入れる。これを5.1chの機器で再生するときにはISの 5.1ch分の情報だけ出力し、7.1chの機器で再生するときにはISの3.1ch分の情報とDSの4ch分の情報を合成して出力する。(ISのリア 2chを破棄する理由は、リア2chにDSの4ch分の情報をミックスして収録しているため)
しかし、現在7.1chで映画制作されていないため、ほとんど5.1ch収録となっているので、HD DVDではドルビーデジタルプラスをISのみ収録しているものと思われる。
し かし、Blu-ray DiscではISにはドルビーデジタルしか入れられないように決められている。そのため、5.1chの機器で再生するときにはISのドルビーデジタルの情 報だけ出力し、7.1chの機器で再生するときにはISの3.1ch分の情報とDSの4ch分の情報を合成して出力する。つまり、前方のスピーカーからは ドルビーデジタルの音が出て、後方のスピーカーからはドルビーデジタルプラスの音が出るといった不自然な仕様となっている。
そのため、Blu-ray Discのド ルビーデジタルプラス採用タイトルは今のところ存在しない。HD DVDはユニバーサルが積極的に採用している。

接続方法
ドルビーデジタルプラス本来の音声を聞く場合はHDMI端子を使用するしか方法がない。
プレーヤーが対応している場合はHDMI1.3以上でビットストリーム出力ができ、AVアンプ側でデコードする。
プレーヤーがPCM変換できる場合はマルチチャンネルPCMとして出力され、AVアンプで再生される。
また、Blu-ray Discでは7.1chでないとドルビーデジタルプラスが適応されない。
デ ジタル端子やドルビーデジタルプラスのビットストリーム出力ができない場合は従来のドルビーデジタル音声が出力される。HD DVDはトランスコード機能が働いてドルビーデジタルプラスがドルビーデジタルに変換され、Blu-ray DiscはISのドルビーデジタルが出力されるようである。


ドルビーTrueHD
概要
ドルビーTrueHDはドルビー研究所が開発した家庭用次世代オーディオ規格で、マスターと同じ音質を実現している。ロスレス(可 逆)圧縮を採用。Blu-ray Disc、HD DVDでのみ使用可能だが、HD DVDは2chの再生が必須、Blu-ray Discはオプション規格となっている。

方式
ドルビーTrueHDは最大7.1chのデジタル信号をMLP-FBAという圧縮方法で圧縮した方式。再生時には元のデジタル信号に戻す事ができ、理論上音質は劣化しない。
サ ンプリング周波数/量子化ビット数は7.1ch時は48/96kHz、16/24bit。192kHz、16/24bit時はHD DVDが2ch、Blu-ray Discが5.1chとなる。ビットレートは最大18MbpsのVBR(可変ビットレート)となっている。ドルビーデジタルとの互換性はないが、Blu- ray Discでは最大640kbpsまでのドルビーデジタルを同一ストリームに併録している事が多いので音が出ないことは少ない。HD DVDでは最低2chでの再生が必須となっている。
国内での初採用作品はバンダイビジュアルから2007年7月にHD DVDとBlu-ray Discで発売された「機動警察パトレイバー」「王立宇宙軍オネアミスの翼」。
当初は採用作品は少なかったが、現在では当然のように収録されるようになった。

接続方法
ドルビーTrueHD本来の音声を聞く場合はHDMI端子を使用するしか方法がない。
プレーヤーが対応している場合はHDMI1.3以上でビットストリーム出力ができ、AVアンプ側でデコードする。
プレーヤーがPCM変換できる場合はマルチチャンネルPCMとして出力され、AVアンプで再生される。
デ ジタル端子やドルビーTrueHDのビットストリーム出力ができない場合はドルビーデジタルが併録されていればドルビーデジタルが出力される。(HD DVDは2chのリニアPCMで出力されるかも)


DTS Digital Surround
概要
DTS(Digital Theater Systems)は、デジタル・シアター・システムズ(DTS)社が開発した映画館で多く使われている規格名または家庭用規格名である。ロッシー(不可 逆)圧縮を採用DVDはオプション規格、Blu-ray DiscとHD DVDは必須規格となっている。

DTSは競合するドルビーデジタルと同じく5.1ch構成で、ドルビーデジタルと比べライセンス料が安くビットレートが高いため高音質であるが、DVDにおい てはオプション規格であるため、採用されるタイトルはさほど多くない。
LDのデジタル音声部分にDTSを入れたDTS-LDというものもあった。

方式
DTSは5.1chのデジタル信号をコヒーレント・アコースティックス符号化(Coherent Acoustics Coding)で圧縮した方式。再生時は5.1chのデジタル信号に復号して から再生するが、元のデジタル信号とは全く同じにはならず、若干劣化している。
サンプリング周波数/量子化ビット数は48kHz/24bit。ビットレートは最大1.5MbpsのCBR(固定ビットレート)だが、DVDにおいては容量の関係か ら半分の768kbpsが採用される事が多い。
(DTS-LDのサンプリング周波数/量子化ビット数は 44.1kHz/16bit。ビットレートは1414kbps)
世界初の採用DVDは「劇場版 天地無用!真夏のイヴ」。

接続方法
5.1ch出力機能を持つプレーヤーの場合は、AVアンプのRCA端子にアナログ接続できる。
それ以外は、AVアンプのデジタル端子(光または同軸)にデジタル接続するが、DTSのデジタルアウトに対応(初期のDVDプレーヤーの中には未対応のものがある)し、AVセンターがDTSに対応していないと再生できない。

Blu-ray Disc、HD DVDはDVDと同様の接続方法の他、HDMI端子も使用できる。


DTS-ES
概要
DTS-ESは、デジタル・シアター・システムズ(DTS)社が開発した映画館で使われている規格名または家庭用規格名である。DTSの5.1chにリア センター(サラウンドバック)を加えた6.1chで構成される。通常のDTSと同じ接続方法で使用できる。

方式
DTS-ESには2種類ある。
「DTS-ES Matrix 6.1」はドルビーサラウンドEXと同様に、基本的にはDTSと構造は同じで、リアセンターの音声をリアの左右チャンネルに同位相でマトリックスエンコードする。再生時にはマ トリックスデコードを行い、リアセンターの音声を分離する。
「DTS-ES Discrete 6.1」は「DTS-ES Matrix 6.1」に加え、エクステンション音声エリアにリアセンター音声を独立して収録する。
再 生時には「DTS-ES Discrete 6.1」対応であればリアの左右チャンネルに同位相でマトリックスエンコードされた情報を逆マトリックス処理で消去し、エクステンション音声エリアの音声を取り出す。 「DTS-ES Matrix 6.1」のみ対応の場合でも通常の「DTS-ES Matrix 6.1」の処理を行なうので問題ない。DTS-ESのストリームにはESフラグが付加されており、これをみてデコーダが自動で判定する。
なお、「DTS-ES Discrete 6.1」の採用タイトルはかなり少ない。


DTS 96/24
概要
DTS 96/24は、通常のDTS音声(48kHz/24bit)とは別に96kHz/24bitの音声を記録した規格名である。通常のDTSと同じ接続方法で使用できる。

方式
「DTS-ES Discrete 6.1」と同様にエクステンション音声エリアにリアセンター音声を独立して収録する。
再生時にDTS 96/24に対応していればエクステンション音声エリアをデコードし、対応してなけば通常のDTS(コア)をデコードする。「DTS-ES Discrete 6.1」との共存はできない。
エクステンション音声エリアも最大1.5Mbpsまで使用でき、DTS(コア)と合わせると最大3Mbpsまで使用できる。


DTS-HD
概要
DTS-HDは、デジタル・シアター・システムズ(DTS)社が開発した家庭用次世代オーディオ規格で、マスターと同じ音質を実現するDTS-HD MasterAudioと、DTSを超える高音質を実現するDTS-HD High Resolution Audioの2種類ある。DTS-HD MasterAudioはロスレス(可逆)圧縮を採用。DTS-HD High Resolution Audioはロッシー(不可逆)圧縮を採用。Blu-ray Disc、HD DVDでのみ使用可能だが、Blu-ray Discはオプション規格となっている。

方式
DTS-HD MasterAudioは最大7.1chのデジタル信号をロスレス圧縮した方式。再生時には元のデジタル信号に戻す事ができ、理論上音質は劣化しない。
サ ンプリング周波数/量子化ビット数は7.1ch時は48/96kHz、24bit。192kHz、24bit時はHD DVDが2ch、Blu-ray Discが6chとなる。ビットレートはHD DVDが最大18Mbps、Blu-ray Discが24.5MbpsのVBR(可変ビットレート)となっている。

DTS-HD High Resolution Audioは最大7.1chのデジタル信号を不可逆圧縮した方式。再生時は元のデジタル信号とは全く同じにはならず、若干劣化している。
サンプリング周波数/量子化ビット数は48/96kHz、24bit。ビットレートはHD DVDが1.5〜3Mbps、Blu-ray Discが1.5〜6MbpsのCBR(固定ビットレート)。

共に7.1ch時はスピーカーの配置によって再構成するスピーカー・リマッピング機能もある。
通常のDTSと互換性を保つために、DTS-HD内にコアとして通常のDTSも収録してある。DTS-HDが再生できない環境の場合、コアのDTSが出力される仕組みになっている。

DTS-HD MasterAudioのロゴが付く機器はDTS-HD MasterAudio以外にもDTS-HD High Resolution Audio、DTS-ES Discrete、DTS-ES Matrix、DTS 96/24、DTS(コア)にフル対応していなければならないらしい。

接続方法
DTS-HD本来の音声を聞く場合はHDMI端子を使用するしか方法がない。
プレーヤーが対応している場合はHDMI1.3以上でビットストリーム出力ができ、AVアンプ側でデコードする。
プレーヤーがPCM変換できる場合はマルチチャンネルPCMとして出力され、AVアンプで再生される。
デ ジタル端子やDTS-HDのビットストリーム出力ができない場合はDTS(コア)が出力される。


MPEG2-AAC
概要
MPEG2-AAC(Advanced Audio Codec)はドルビー研究所が主導で開発し、Moving Picture Experts Group(MPEG)において規格化された。主に日本のデジタル放送(ISDB)で使用されている規格。一般的にはAAC-LC(AAC Low Complexity)が利用される。なお、MPEG4-AACはヘッダが異なるだけで内容はほぼ同じ。

放送はほとんどが2chで5.1chが使われることは滅多に無い。
5.1ch時のビットレートは320kbps(固定)程度のビットレートだが、音質的にはドルビーデジタルに劣るとされている。
MPEG2-AACのままBlu-ray DiscやHD DVDに記録する事もできる。

接続方法
主にAVアンプのデジタル端子(光または同軸)にデジタル接続するが、AVセンターがAACに対応していないと再生できない。 Blu-ray Disc、HD DVDはデジタル端子の他、HDMI端子も使用できる。


リニアPCM(マルチチャンネル)
概要
リニアPCMは単純にアナログ信号を量子化した無圧縮のデジタル信号で、Blu-ray Disc、HD DVDではHDMI端子経由でマルチチャンネル出力できるようになった。

接続方法
リニアPCMのマルチチャンネルはHDMI端子を使用するしか方法がない。HDMI1.1以降であれば対応している。


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