タウト全集第一巻 桂離宮  bruno taut  昭和18年再版1000部 育生社弘道閣 定価8円 訳 篠田英雄他

鎌倉雪の下の木犀堂(もくせいどう)さんにて、三冊セットの全集の第一巻。買う時奥さんが「きれいな装幀よね...」と、撫でる。

索引のあたりのページが袋になっていたので、丁寧にその部分を切らないように注意して中を覗き込んで読む。これまでこの本を手にした誰もがこんなふうに覗いたのかも、と可笑しくなる。

後半に書帖『桂離宮の回想』

「1934.5、桂離宮を拝観して」と題した横長の画帳にタウトが絵とテキストを筆描きしたものをそのまま印刷して左ページに配して折り込み、右ページにはそれを縮小したものに、翻訳文を入れ替えて対応させている。しかも、折り込むことでできる厚みの違いを、ボール紙を細く切ってのど側に挟み込むようにして、本のゆがみを防ごうとしている。(↓)

そそる索引

索引の項目がおもしろいのでここに一部引用してみよう。
いんちき・ジエントルマン・渋い・常識・即興的なるもの・単純のなかの多様・釣合・床の間の裏側・日本・日本人・美の過少
名物(?)”日光東照宮との極端な対比”も楽しめる。

造本

タウトのこの書帖が楽しいというのはもちろんだが造本にも惹かれた。印刷はまがっているが文字組もゆったりと豊かに組まれていて、大切に造られた感じが伝わってくる。家に帰って改めてめくると、装幀亀倉雄策(1915-1997)とある。氏がまだお若いころの仕事、やっぱり、すごい。

なお、昭和9年の名著『ニッポン』については、酒井道夫氏のこちらのページに造本のことなども詳しく出ているので是非。