おはよう
たくさん人がいるので
ひとつしかない電車に言う
いつものドアから乗り込んで
たくさんの人の
いつもの場所にまぎれる

一人ずつの頭を包む
ゼラチンの丸

まるまるの丸が
わふわふとたゆたう
良い風景

まるまるの丸と丸とがねっとり触れたら
たゆたいが止むのは
たやすい
そこに生まれた見るべきものの方向は
矢印になって丸を突き抜ける
スピードと角度がゲルの網をつりあげて
視界なき視力の交通が始まる

忙しいと列が見えなくなって
疲れていると老人も見えなくなる
見て欲しい相手がいるとそのほかの人が見えない

いいよ、
そんなときに私はヤサしい
マルを描き
その矮小な場所を塗りつぶしてあげる

fig. 1

fig. 2
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まるまるの丸

眼球依存の亜天然性ゲルなんです。二つの焦点がずれてるおかげでできる三次元の網目状のフレームが角膜を接着面に雪だるまをつくるみたいにして形になっていく感じ。透明の体液がたぷたぷと満ちるけど周りの状況によって濁ってみたりするのは恒常性の維持ってことで。ひたすら主を護るので他のものに混じることはできない。お気楽ゴ気楽だけど保護材はノイズを生むことをお忘れなく。収差なんてわかんないから治せないもんねまる
ま ん ま る の　まるまるの丸

『gui53』初出