BOOK BAR 4 >   > アシッドな心配 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だんだんと あたたまってくる地球に住んでいるので

地球人の英知の結晶 温ナビなんてものができたなら

カーナビはともかく ちょっと携帯してみたい

 

地球の南のあたりでは 大きな大きなオゾンのホール

地球の北のあたりでも オゾンはもはや70パーとか

 

地球の北側 ぐるぐる回る球体がおこす穏やかな風は

炭坑の上のあたりで 硫黄や窒素の酸化物をのせ

丸い地球のその東側 日本の西に雪を降らせてきた 

 

人の顔は だんだんだんだん顎が細くなっていき

雪の結晶もまた

TやらI型のスレンダーなものが最近増えてきたらしい

君達の世界の流行なら良いけれど

私達の世界ではそれを奇形の結晶と呼ぶものだから

 

ダイオキシンと枯れ葉の悪夢

 

これから益々増えた場合に

なだらかな白銀の月山のシルエットが

コッホ曲線を描いてしまうのではないのかと

空からまっすぐ降ってきた雪が

ブラウン運動をとるようになり

見上げた子供が目を回してしまうのではないのかと

なによりも

なんだか大気中の埃がよく付着するようになり

太陽の光を反射することがなくなってしまうのではないのかと

心配で心配で

 

心配でたまらない

 

 

初出 「gui」51 vol.19 August 1997