海外愛犬事情

ミラノより

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青木邦子 

優良家庭大普及協会の皆様、お元気でしょうか。

 私は昨年7月、2頭のゴールデン・リトリバーを連れ、ミラノに参りました。シリウス5歳、その息子プロキオン4ヶ月、横浜から成田まで、ご近所の犬友達の男性、そして私の息子が送って来てくれました。成田空港の駐車場から飛行機に乗せるまでが一番大変でした。犬は、空港内はバリケンに入れて運ばなければいけないということで、駐車場でバリケンに入れ、手押し車に乗せ、空港内五階の検疫センターまで運びました。が、手押し車がバリケンより小さいため、犬が動く度に落ちかけてしまい、それを何とかしながら、検疫センターの入り口までやっとたどり着いたかと思うと、検疫センターの入り口が大変狭く、バリケンを縦にしたり横にしたりしなければならず、どうしてり一をつけて犬を歩かせてはいけないのだろうかと、大変腹立たしい思いをいたしました。

 飛行時間11時間余り、ミラノに着きました。さて我が息子達はと思う間もなく、大きな手押し車に二つのバリケンを乗せ、陽気なイタリアの小父さんが私の所へ連れて来てくれました。見ると、シリウスもプロキオンも大変元気そうで、その時は本当にうれしくて涙ぐんでしまいました。そのまま、何のチェックも受けることなく税関を出て、主人か出迎えてくれていた所でバリケンから出してやりました。主人も大変うれしそうにシリウスと対面、プロキオンはとみると、空港の正面自動ドアの真ん前で、ウーンとうなって山盛りのウンチ、それには迎えに来た犬も、周りにいたイタリア人達も大笑いをしたものです。それが記念すべきイタリアの第一歩でした。

 住まいとなる所はミラノの中心部より車で30分程の郊外の団地です。犬のためにということで主人か選んだ所で、緑が大変多く、すぐ近くに大きな公園が二つあり、散歩するには大変良い所です。この団地には二千軒位いの家族が住んでいるようなのですが、広い所に転々と、日本でいうマンションのような建物が芝生を囲んで建っています。芝生には常に水がまかれ、一週間に一度はカットされ、それはきれいに手入れされています。それでも犬が入っていけない所は殆どなく、散歩の時間ともなると、どこから出てくるのか、沢山の犬達がりードをつけることもなく、悠々と飼い主の後について散歩しています。一番多く見るのがシェパードで、日本で見るのより大きく、皆ちょっと太り過ぎの感じがします。この団地内だけで百頭以上はいるのではないでしょうか。また、よく見かけるのがボクサー、ダルメシアン、ドーベルマン、シュナウザー、極め付けはグレートデン、公園内では車で伴走していたりして、これにはびっくりです。

イタリアの人はどうも強い感じの犬が好きなようで、ゴールデン・リトリバーはあまり見かけません。また日本に多いシェルティにはまだ一度も出会った事がありません。リードをつけない犬があまりにも多く、またそれが大きな犬ばかりで、私たちが散歩していると、新入りが来たゾーと思うのが、近づいて来るのです。最初の頃は、私もシリウスも緊張して固まってしまっていたのですが、プロキオンは子犬のためか、大きな犬が来でも大丈夫なのです。でも小さな犬が吠えるのはダメで近づこうとしません。でも不思議なことに、小さな犬は殆どリードをつけて散歩しているのです。こちらに来て間もない頃、近くのパン屋さんのボクサーが近づいで来たことがあります。シリウスは低くウーッとうなり始め、これは大変なことになるかなと思っていると、そのボクサーは悠然とシリウスの周りを回り、そのまま立ち去っで行きました。その時ボクサーには飼い主もついてはおらず、一人の散歩でした。主人日く「すごい奴」。それ以来我が家ではその犬をすごい奴と呼んでいました。後で分かったのですが、その犬の名前はランボーと言います。やはりすごい奴にふさわしい名前でした。

 こちらの犬は皆ランボーのように大変きちんと躾けられでおり、大きな犬の喧嘩など見たことがなく、飼い主も絶対自信を持っでいるのか、犬同士が近づいたりしてもあまり気にしません。こちらが怖がっていると思うと自分の犬を呼んでくれるのですが、また犬もよく言うことを聞くのです。どうしたらあのように育てられるのか、すべでの犬が訓練所などに行っているとは思えないのですが、本当によく飼い主の言うことを聞くのです。6ケ月間そのような犬達を見て、一つだけ分かった事は、アイコンタクトが非常によくできていると言うことでしょうか。犬が何かしていても、飼い主が呼ぶと必ず飼い主に集中する、それは殆どの犬ができているようです。中にはできていない犬もいるのですが、それには飼い主がきちんとリードをつけ、危ないと思うと向こうから「オーイ、うちの犬は男の子だけど、アナタの犬はどっち」と聞いて来ますので、私も大きな声で「うちは二頭とも男の子よ」と答えると、ちょと待ってくれとが、道を曲がってくれとが言ってきますので、今まで危ない目に会ったことは殆どなく、毎日楽しく散歩しています。

こちらでは飼い主が犬を叱っているのをあまり見かけません。つい最近プロキオンに弟のような子犬がてきました。名前はエリオット、生後3ヶ月の白いゴールデン・リトリバーてす。一緒に遊ばせながら飼い主の様子を見ていると、呼んでエリオットが走って来ると、ポケットから何か食べ物を出して、「あなたはいい子ね、本当にすばらしい」などと言いながらあげています。エリオットが大きくなるまで、しっかりと躾の様子を見ていきたいと思っています。

 また、犬を取り巻く環境も日本とは違い、バスにも電車にもタクシーにも乗せることができます。夏にスイスからの帰り(行きは車で行ったのてすが、ちょっとした事故て車が使えなくなり)小さな村からバスで列車がとまる町まで行き、そこから列車でミラノ中央駅へ、駅からはライトパンのようなタクシーで帰ってきました。それがとても自然にてきるのです。犬が列車に乗っていても、驚く人はなく、「やぁ、ー一緒だね。」という感じでとても自然なんてす。歴史の違いなのか、価値感の違いなのかわかりませんが、人間と動物のかかわりあいが非常に自然な感じがするのてす。いつも飼い主と―緒にいるのが当たり前という考え方、だから勿論ホテルなんかも一緒です。

 犬にとっては大変よい環境、そしてすばらしい犬が沢山いるイタリア、それでもやはり心ない人がいるためか、ヴァカンス・シーズンの前になると街のあちこちに、犬と猫がバスケットに入った大変可愛らしいポスターが貼られます。それには「私達を捨てないで」と書かれてあり、どこの国でもそのような人がいるのかと思うと心が痛みます。

 私もこれからシリウス、プロキオンとどんな経験がてきるのか、大変楽しみにしています。犬が行ける所はいつも一緒に行動してみようと思います。そしてイタリアの人達と犬を介して少しでも多く関わってみたいと思います。また色々な経験をしましたら皆様にご報告させていただきたいと思います。 
   

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優良家庭犬普及協会広報誌 「OHワンダフル」創刊号(20.March.1995)に掲載
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