正確には本機以前にも先祖に当たるラップトップ機はありました。が、DOS/Vパソコンという形で登場した形態では、本機が直系先祖ということになるようです。
今では馴染みの深くなった
DOS/Vという名称も、本機とともに一般の目に触れていくことになった訳で、そういう意味では、大変大きな足跡を残したマシンなのかもしれません。
ノートパソコンが登場する以前、持ち運びができるパソコンといえばラップトップパソコンのことを一般的に指していました。
ラップ(膝)トップ(上)という意味とは程遠く、7〜8kgという重量ではオフィス内での移動もかなり辛かったのではないかと思われます。
本機は先にも述べましたが、DOS/V(対応)機として始めて登場した可搬型パソコンで、これ以前の機種では日本語の表示には特別なビデオカードを必要としたり、故にソフト的に互換性が保てないという問題がありました。
日本語表示をソフト的にすべて処理することで、ハード的にもソフト的にも互換性を高めるができるようになり、そして現在の
Windows時代へと繋がる礎を作った訳です。
本機は ATアーキテクチャ機ではなく、当時
IBMが推し進めていた MCA仕様機です。
ゴム脚が多少取れて失われている程度で比較的状態は良いのですが、寝起きが悪く、ハードディスクの故障などの事態が発生した場合、交換部品の入手は難しいのが心配なところです。
キーボードの状態。
その後の PS/55note等の配列にも通ずるものがあります。
手前のバーはキャリングハンドル(引き出した状態)、右奥の青い物は音量調整スライダー。
流石に本体厚が大きいだけに、キーボードのタッチ感はデスクトップ機用キーボードに比べて全く遜色ない(と言うよりそのもの)といった感じです。
液晶パネル右側には、上から液晶の反転スイッチ、コントラスト調整、輝度調整が端に縦に並んでいます。
コントラストと輝度調整については、N27SXのような回転式ボリュームになっています。
ちなみに液晶パネル側の厚みは3cm以上あるようです。
液晶パネルはバックライト付きのモノクロSTNで、解像度は当然ながらVGA(640x480)です。
キーボード左上のインジケータです。
これが内部に反射板(?)が組み込まれていて、この角度からは
FDD HDD
Powerの表示が見えますが、液晶パネルを閉じて上面から見ると
Powerのインジケータのみが見えるという凝った作りになっています。
また左に見える液晶パネルのヒンジ部分の下部は、(この画像では正規位置より凹んでいますが)正面と面一に隠し板が動く構造になっています。
液晶パネル上面右手前のエンブレム。
少々見づらくなっていますが、「IBM Personal System/55
5535S」と表記されています。
手前には、液晶パネルの放熱用のスリット穴が空いているのが見えます。
液晶パネルを閉じた状態。
薄型ノートを見慣れた目からすると、大都市部の電話帳の如く分厚く巨大な筐体に驚かされることでしょう。
斜め後方から見た本機ですが、初めて見る人からすれば一体何なのかさっぱり判りませんね、、、(^^;
横に寝かせておくとかなりのスペースを取るので、普段はこのように縦置きにして保管しています。
はっきり言って、ヘタな省スペースパソコンよりデカいです。
不安定そうに見えますが、電源系など重心は比較的後方(この画像では底面寄り)になっていますので、横から突付いても容易に転倒しそうにありません。
右側面には、FDDと電源スイッチ、マウス・キーボード用のPS/2ポートがあります。
縦置きの時には判り難いのですが、全体的にかなり傾斜している(台形になっている)のが良く判ります。
背面はAC電源入力の他、パラレルポートとシリアルポート(左下)、外部CRT出力(右側MCAスロット上段)があります。
中央には大きなファンがあり、稼動時にはかなり盛大な騒音を発してくれます。(^^;
左側面のスロットカバーを外した状態。
上段はビデオカードが実装されていて、下段は空きスロットになっています。
ご覧の通り、大きなカードでもほぼ筐体の全長を使って収納できるようです。
以前、「FDDの後ろ寄りには、HDDが格納されています。」と紹介しておりましたが、本稿を見ていただいた
5535Sユーザーの方から「メモリーとコプロソケットのボードではないか」とご指摘をいただきまして、実際に確認したところ、その通りでした。
(ご指摘ありがとうございました。>>木谷さん)
当初このボードが引き抜けず、黒いコネクタがカバー状に覆い被さっていたので憶測で書いてしまいました。申し訳ありません、、、
やっとの思いで引き抜いた、問題のサブボードです。
SIMMソケットがふたつと、コプロソケット(80387SX用)があります。
本機は
MCA機で、ハードの構成を変更した際にはリファレンスディスクで構成情報を設定しなさないといけないことがあります。
(N51SLCなどでは
F1キーブートでリファレンスメニューが呼び出せますが、本機は別途リファレンスFDが必要なようです)
CPU Intel386SX-16MHz (コプロオプション)
RAM 2MB Max.6MB(?)
HDD 40MB(ESDI)
LCD モノクロSTN
運がよければジャンク屋で発掘できるかもしれません。
MCAという仕様からして、今後の維持管理は難しいものとなる可能性大です。
- メモリは他のMCA系ノートの様に、専用のSIMMとなります。
- HDDは ESDI仕様でなければならないようです。一頃はジャンク屋でよく見かけましたが、流石に最近は見かける機械が減ってきました。
内部固定式(電源スイッチの手前辺りに内蔵)で、ユーザーの手で容易に交換できるのかどうかは不明です。- とても大きく、騒音も結構なものです。なによりも膝上で使うのは避けましょう。
(ほとんど江戸時代の拷問のような気分です。(^^;;;)- これでもまっとうな DOS/V対応機なので、とりあえずDOSベースのプログラムを動かすことはできます。
が、もはや当然ながら道楽の世界に入ってしまっています。コレクターでもないかぎり手を出しても意味を見出すのは難しいマシンです。
(2000/10/24 記)
(2001/01/27一部訂正追記)