ThinkPad以前は PS/55noteという名称を付けられていた事は、このページをご覧になっている皆さんの中にも、ご存じの方はいらっしゃるでしょう。
では ThinkPadと PS/55noteの境目に当たる機種は?と言う疑問が湧いてくるかもしれません。
その境目に当たるのが、PS/55note C52(海外では ThinkPad700)と、本機になります。
本機は、IBMノートパソコンとしてカラー液晶を搭載した 2代目の機種ですが、ノートパソコンと呼ぶには巨大であった初のカラー液晶搭載機(PS/55note N27SX)とは違って可搬可能なレベルになっています。
全体的な雰囲気は PS/55noteそのものですが、いくつかリファインされたデザインや、現在のレベルから見ても美しい TFTカラー液晶、そしていくつかのスペック面において、PS/55noteシリーズとしての完成形であると言っても過言ではないでしょう。
この TFT液晶パネルは、ビデオチップに WD90C26が使用されており、256色表示可能です。
また、N27SXや C52の様な MCA仕様ではなく、ATベースのマシンとなっていて、セッティングはずっと容易になっています。
CPUは 386SX-25MHzです。
TrackPointが無いところが、PS/55note然としています。(^^;
ちなみにこの画像では判りにくいのですが、液晶パネルの爪が入る穴は、パネルを開いた際に内部から蓋がされるという芸の細かい作りになっています。
(この機構は、PS/55noteシリーズで見られる特徴の一つです)
日本国内向けモデルとしては、C52と共に初登場した「ThinkPad」のエンブレムが誇らしげに見えます。(^^)
N27SXに比べるとコンパクトになったとは言え、液晶パネル部の厚みは額縁部分で
3cm近くもあり、今時の薄型ノートと比べると隔世の感があります。
液晶パネルを閉じた状態です。
判る人が見れば「おや?」と思うところですが、ThinkPadエンブレムのお陰で、700番代と見間違えそうです。
メモリソケットはキーボード右上にあります。
汎用の72pSIMMのSIMM-IDを加工して、15MBまで認識した実績があります。
(画像のSIMMは純正品 8MB)
左側面の状態です。
奥側から、本機で初めて採用された PCカードスロット(TypeIIx1)、HDDパック(IDE)、バッテリーパックの順に配置されています。
特に PCカードスロットと HDDパックは、以降のThinkPadシリーズに於ける汎用性と拡張性の基礎ともなっています。
PCカードスロット部直後の背面。
青いボタンがカードノイジェクトボタンです。
同時発表された上位機種の C52には PCカードが搭載されておらず、下位モデルの本機に先行して採用されたところが興味深いところです。
(AT仕様の本機の方が、容易に搭載できたので先行採用されたという話もあるようです)
PCカードスロットの装備により、それまで伝統的に装備されてきた内蔵モデムスロットが廃止されています。
本機で採用されたハードディスクパック。(80MB)
このパック形式は同時発表の C52でも類似形状の物が採用されていますが、本機は汎用性の高い IDEでした。
このパックは C23Vの他、ThinkPad550/555BJや ThinkPad330C(s)でも採用されています。
横長のバッテリパックは前面に配置され、ほぼ全幅位の長さがあります。
形状や装着位置は、その後のThinkPad701C(s)にそっくりです。
本機は初期のカラー液晶搭載機ということで、価格も高価で、バッテリ運用時間も短く、重量も比較的重いです。
その為か、なかなか持ち歩くには勇気が必要で、手元の本機は持ち歩くことは殆どなかったのか、とても綺麗な状態でした。
C52が海外で評価の高かったこともあって本機はやや地味な存在ですが、個人的には本機も以降の ThinkPadに大きな影響を与えた重要なモデルだと思います。