ThinkPad 750C (9545-3J6)

弁当箱はここから始まった・・・

ThinkPadの長らくの特徴であった、弁当箱方式と呼ばれる独特の構造は、この ThinkPad750Cから始まりました。
オプション組込や筐体強度の維持に貢献したこの構造以外にも、ATアーキテクチャ化やサウンド機能の搭載など、その後のモデルに大きな影響を与えました。

 

tp750c_1.jpg (10579 バイト)この基本形態が長く続いたので、思ったより古くないモデルと錯覚してしまいそうですが、本機の登場は 93年なのです。

CPUは 486DXをベースに周辺の統合と低消費電力化を図った 486SL-33MHz。
386SXの延長線上にあった従来の IBM486SLCに比べて、かなりの高速化とより高度なパワーマネージメントを提供してくれました。
ちなみに海外版 ThinkPadでは 486SLを搭載したモデルは数機種存在しますが、日本で販売された 486SL搭載モデルは、本750C(s)シリーズのみです。

なお、486SLはピン互換CPU は存在しない様で、改造によるパワーアップは困難です。

tp750c_3.jpg (9483 バイト)液晶パネルは本機では 10.4" TFTですが、ご覧の通り輝度とコントラストのふたつのスライダーがあります。

同時発色数は 256色のままですが、液晶パネル自身の発色可能数は従来の 4096色から 26万色となり、パネル表面の反射も改善されるなど、着実に進化が進んでいることが判ります。
なんと言っても液晶パネル自身の厚みと重量は劇的に小さくなっており、大幅なバッテリ駆動時間の向上もあって、「実用的可搬レベル」のマシンになりました。

ビデオチップは WD90C24で、V-RAMは 1MB。
Windows3.1 なら、CPU処理能力と共にまずまず快適に使える能力を持っています。

tp750c_2.jpg (8372 バイト)TrackPointのボタンは、その後低価格モデルに広く流用された半円筒(土手)型ボタンです。

各機能制御が Fnキーとの組み合わせで利用できるようになったのも、本機が注目に値する点のひとつです。

tp750c_4.jpg (7098 バイト)本体左後コーナー付近にまとめられた、DC電源入力コネクタと、オーディオ入出力ジャック、電源スイッチ。

本機は何故か本体にマイクが搭載されていません。
また、音量調整つまみもありません。
(音量は Fnキー操作かソフトウエア設定で調節します)

tp750c_5.jpg (3858 バイト)背面は ATバス拡張コネクタがあり、拡張ユニットに接続できます。
この拡張バスも、長らく後継機に採用されていました。

tp750c_6.jpg (7978 バイト)PCカードスロットと PS/2マウスポート。
このレイアウトもその後の機種のモデルとなっています。

先代の 720Cにも PCカードスロットは搭載されていましたが、イジェクトボタンの改善により使いやすくなり、更に拡張ユニットによっても PCカードスロットが増設可能になり、拡張性や汎用性が高まっています。

なお一緒に写っているスロットカバーは、オリジナルの物かどうかは不明です。

tp750c_7.jpg (10443 バイト)キーボードを跳ね上げたところです。

左から FDD、バッテリーパック、HDDという配置順自体は、本機が最初という訳ではなく、PS/55note C52/486SLCの時点でできあがっていました。
(バッテリを中央に配置することで、持ったときの重心が安定します)
更に本機からは、この弁当箱方式により、構造の簡素化とオプション交換時の利便性を両立させることができた素晴らしい構造となった訳です。

tp750c_8.jpg (6754 バイト)FDD、バッテリーパック、HDD、メモリーカードを取り払ったところ。

メモリーカードは左側の黄色の部分に取り付けます。
右のふたつの四角い穴は、HDDパックからのセキュリティ金具の為の穴です。

ちなみにこの状態ですと重心が後ろに偏ってしまうので、後方にひっくり返ってしまうので注意。

tp750c_9.jpg (5567 バイト)メモリーカード(D-RAMカード)です。

本機は EasySetup(BIOS設定)で、パリティ有り・パリティ無しいずれの D-RAMカードも使用できます。
(この画像はパリティ無しカードのものです)

IBMの保証範囲は 16MBカードまで(本体と合わせて計20MB)ですが、当方では32MBカードの使用実績があります。(計36MB)

いずれにせよ、それまでの IBM486SLC搭載機で越えられなかった「16MBの壁」を破って、Windows3.1 などが快適に使用できる容量まで拡張できる様になったのは大きなポイントです。

tp750c_10.jpg (7621 バイト)内蔵の 3.5"フロッピードライブです。

2.88MB対応の 4モードで、これも長い間、700番代ThinkPadの標準仕様となったもので、本機がその始まりとなっています。

tp750c_11.jpg (8223 バイト)バッテリーパックは Ni-MHで、制御回路付きのインテリジェントな物です。
(右手前の赤いスイッチが、制御回路のスイッチの様です)

奥の階段状の切り欠きは、PCカードスロットを物理的に避けるためのもので、本機が母体となった ThinkPad360Cなどにも見られる物です。

tp750c_12.jpg (9368 バイト)ハードディスクパックはプラスチックジャケットの物です。

なお、この画像は 340MBのディスクパックで、本来の 9545-3J6搭載パックとは容量が異なります。
(オリジナルは 170MBのパックを搭載しています)

なお、I/Fは E-IDE対応になっています。

tp750c_13.jpg (10254 バイト)ちょっと見難いですが、キーボード及び液晶パネルのロックつまみです。

本機はキーボード跳ね上げ式の最初のモデルなので、このつまみの形状はごくごくシンプルな物になっています。
これがモデルを重ねるごとに少しずつ形や大きさが変わっていっていますので、店頭で見比べてみるのも面白いかと思います。

 

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