ThinkPad760C(9546-J22)は、ThinkPad755CXの後継機として登場したモデルです。
外観は従来の角張ったデザインから曲面を随所に取り入れたモデルチェンジがなされ、システム的にもメモリ周りの変更やビデオチップの変更などが行われていますが、VLバスベースのシステム設計という旧来のデザインも引きずっているという一面があります。
この
760初代(760無印)系は、CD-ROMドライブの内蔵の有無や液晶パネルの仕様・CPU仕様などにより、各モデルがかなり細かく作り分けられています。
設計の共通化でコストダウンを図っている今時のパソコンに比べると、何とも芸が細かいと言いますか、不合理なことをやっていたと言いますか・・・
この辺りは、バブルの影の濃いハイエンド機ならではといった感じです。
本機はこの複雑なモデルの中の中核モデルといったところで、CD-ROMドライブ未内蔵、10.4インチSVGA液晶、Pentium-90MHz、Mwave
DSP搭載といった構成になっています。
(同じ 760Cでも上位モデルは
CPUと液晶の仕様が異なっており、非常に複雑なシリーズ構成になっています)
760系では、チルトフットを起こした際に
CD-ROMドライブのトレイが引き出せない問題を解消する目的で「チルトアップキーボード」が採用されたのは有名なところです。
但し本機(760C)の場合、元々
CD-ROMドライブは内蔵しないモデルなので、この機構の存在はちょっと不思議に感じられます。
ところで
760系のキートップはどうも耐磨耗性が良くない様で、文字刻印が磨り減っている例が予想外に多いです。
特に本機を含む初代760系は、発売年次が古いこともあって、キーボードのコンディションの良いものを見つけるのには案外苦労します。
本体左側面。
電源スイッチ、ヘッドホン/マイクジャック、Mwaveモデムジャック、ウルトラベイ側面のカバーが並んでいます。
キーボードが傾斜している様子にも注目。
正面からの迫力あるローアングル。
FDD内蔵モデルとして設計された下部筐体のおかげで、とてもスリムな感じがしますが、実際 760系の中では最薄・最軽量のモデルとなっています。
ネームプレートのスペースのすぐ下には、前面赤外線ポートがあるのが判ります。
右側面には
PS/2ポートと
PCカードスロット、セキュリティロック穴があります。
(キーボードのチルトアップは解除した状態です)
PCカードスロットは長らくブランクカバー方式だったものが、シャッター式の蓋に変更されました。
紛失しやすいブランクカバーに比べて、大変使い勝手(異物の侵入防止効果)が向上しています。
また、イジェクトボタンもカード挿入時に折り曲げ格納できるタイプに改良されています。
背面のポート類の配置は、755CXに準じています。
CD-ROMドライブを内蔵しないスタンダードなモデルなので、FDDコネクタの他、MIDI/JOYSTICKコネクタもありません。
(これらはポートリプリケーターを接続するとポートが追加されます)
電源コネクタは 台形4pタイプとなっています。
液晶パネルを閉じた
760C。
760無印系
10.4インチ液晶搭載機の外観上の特徴である、液晶パネルの前縁がRになっている(角張っておらず面取りされている)という形状がよく判ります。
(760無印でも、12インチ液晶搭載モデルでは角張ったデザインになっています)
雰囲気的には、560にFDDを内蔵したようなイメージです。
760Cの底面。
何の変哲も無い底面に見えますが、755系とは異なり底面に移動したメモリー増設スペースの蓋があります。
また、キーボードのチルトアップ機構により不要となったチルトフット(傾き調整脚)は省略されています。
底面メモリースロット蓋を開けて、メモリ増設ドーターボードを取り外したところ。
従来の D-RAMカード又は
72pDIMMによる増設から、88pDIMMによる方式のみに変更されました。
メモリーは標準で 8MB、メーカー公称値で最大40MB(16MB-DIMM
2枚搭載時)まで増設できますが、なんでも 32MBのDIMMも存在するんだそうです。
(となると、最大で
80MBまで増設可能ということになりますが・・・果たして??)
問題のメモリーボード。
本機は環境さえ整えてあげれば
Windows95/98でもそこそこ使えるのですが、最大のネックになるのはメモリーの入手が難しいor割高なことです。
88pのDIMMは汎用品ではないようで、この760無印系のみでしか使用されていません。
この画像では 16MBのものが 2枚実装されています。
(手持ちの760無印は、16MBメモリーばかり搭載していますが、中には結構いい値段だったものもあります)
キーボードを跳ね上げた状態。
CD-ROMドライブ非内蔵型の筐体設計なので深さに余裕が無く、故に同じ 760系の中でも窮屈な感じがしてしまいます。
うっすらと見える文字から、バッテリーはリチウムイオン、ハードディスクは
720MBであることが判ります。
ウルトラベイのコネクタ部分。
従来は単に「フロッピードライブ収納部」といった程度の名称でしか表記されなかったウルトラベイですが、従来の
FDDやセカンドHDD、TVチューナーパックや増設PCカードスロットに加えて、セカンドバッテリーの搭載も出来るようになりました。
(この画像で青いカバーの付いたコネクタが、バッテリー用です)
セカンドバッテリーは形状的にメインバッテリーと違ったタイプのものを用意しないといけないケースが多々あったりしますが、本機ではそのまま同じ物を使いまわし出来ます。
画面がちょっと狭く、描画性能が遅い(VLバス接続になっている。755CXより気持ち速いかな?って感じです)ものの、解像度(SVGA)、CPU能力のバランスはまずまずで、現役でも用途を絞り込めば十分使えるでしょう。
とは言うものの、扱いにくい部分もありますし、ハイエンド系にも関わらず案外雑(^^;な部分も見受けられるので、過大な期待は禁物です。
(それでも今時の下手な低価格機よりも、作りはしっかりしているんじゃないかと思いますが・・・)
CPU Pentium-90MHz (L2:256KB)
RAM 8MB Max40MB(16MBx2)
HDD 720MB
LCD 10.4"TFT/SVGAカラー (800x600 65536色)
VGA Trident Cyber 9320 (V-RAM:1MB VL-Bus)
CPUが非力ですが、L2キャッシュがあるおかげで思ったより処理が速い気がします。
中古でも比較的手ごろになってきた初代760ですが、結構落とし穴がありますので、初心者の方でなくともセッティングや運用にハマってしまう可能性があります。
(初心者にはおすすめ度は「低」です)
- ハードディスクはバック式で、必要とあれば自力での換装も容易です。
但し当然ながらメーカー保証外の行為となってしまいますのでご注意ください。- 初代760辺りまでは、内蔵されている IBM製ハードディスクドライブのマスター/スレーブピンの処理の方法が一般とは逆なので、現在出回っているドライブを何も考えずに換装するとスレーブ設定にされてしまって起動できません。
端の 4本のピンを折ってしまうか、パックの配線を改造する必要が出てきますので気をつけてください。
(ピンを折って除去するのが簡単です)- メモリはよく出回っている 144pのメモリは使用できません。専用の88pタイプになってしまい、これがなかなか見つかりません。
たまたま手持ちがあるor入手予定の物に元々増設されているor金に糸目をつけない(^^;ということでなければ、後からの増設は相当な(お金と発見の労力面で)困難と努力が必要になりますので要注意です。- 液晶パネルは10.4インチSVGAなので、今となってはやや狭いのは否定できません。描画も遅め(Excelなんかでのスクロール時に唸ってしまうことでしょう(^^;)なものの、実用上我慢できる範疇です。
表計算等の作業などの場合は、フォントサイズを調整するなどの工夫をしてみましょう。- CD-ROMドライブは内蔵できません。Windowsアプリケーション導入時には、外付けCD-ROMドライブの入手が必須となります。
既に手持ちがあるのでしたら問題はありませんが、初めて中古で購入するような場合には、この分余計に投資が必要になることを考慮しておきましょう。- Windows95のインストール時に、ビデオチップ(Cyber9320)の検出でハングしてしまうことがあります。
インストール時のデバイスの検出を手動設定してあげる必要があります。
(これは私も一度ハマってしまったことがあります)- 音源とモデム用に MwaveDSPチップが搭載されています。
このため、セッティング時にドライバーの導入がやや煩雑になっています。
(IBMのサイトにドライバー類は置いてあります。ちゃんとインストールしてあげないと、音が出なかったりモデムが使用できなかったりといった症状が出たりします)- 中古では比較的安価で手ごろになってきましたが、メモリやCD-ROMドライブなどで思わぬ追加投資を強いられる可能性があります。
下手すると、性能・セッティングも本機より良好な 760E系が十分購入できる位の費用がかかってしまうことも考えられますので、安いからといって慌てて買わずに、じっくり他のモデルも含めて検討すべきだと思います。
(2001/02/25記)