ThinkPad 760EL (9547-J4H)

重厚剛健、ハイエンドの貫禄。

ThinkPad760EL(9547-J4H)は、755系の後継モデル760系の第二世代シリーズ中のミッドレンジモデルです。
上位モデル(760ED)に比べると仕様の簡素化がいくつかなされているようですが、それでもハイエンドモデルならではの貫禄ある存在感が十二分に感じられます。

 

今の視点からはややクラシカルな雰囲気の755系に対して、760系は曲面を随所に取り入れるなどして、大変優美で高級感あるデザインとなっています。

スペック面でも、初代760シリーズに比べて、PCIバスアーキテクチャの導入や、全モデルCD-ROMドライブ内蔵対応デザインの筐体など、完成度が確実にアップしています。

手元の本機は、560Zを入手するまでは当HPの作成用に使用していました。
Pentium-133MHzというスペックでは、ガリガリ作業をこなすには流石に辛いところでしたが、ハイエンドモデルでないと体感できない、使っているときの精神的なゆとりという面では、現在でも他のモデルにひけをとらないものがあります。

 

液晶パネルを閉じた状態ですが、流石に本体厚は相当なものがあります。(5cm以上)

故に存在感は抜群ですが、持ち歩くにはかなり辛いです。
実際にThinkPad235を使っていた当時にサポート機としてしばしば持ち歩くことがありましたが、どうしようもなく肩が疲れるという思い出ばかりが残っています。(^^;

 

本機のキーボードは有名(?)なチルトアップ機構となっています。

パームレスト部分の肌触りはなんとも絶妙ですが、ひょっとして塗装が剥げるのでは?と心配です。

このキーボードにはどうも問題が多いようで、いくつかのキータッチが妙に渋く、本機入手時にそれを解消するためか、潤滑スプレーを吹いた形跡が残っていました。

 

各種状態表示用として、キーボード上部には液晶式のインジケータが装備されています。

充電状態やディスクアクセスといった状態が表示され、特にバッテリー残量(この画像では残88%で充電中の表示となっています)は大変重宝します。

しかし、以前私は某社のノートで、清掃中にこのような液晶表示部分を壊したり(ホコリが付着していて、拭き取ったら割れてしまった、、、)、表示がおかしくなって周囲を触っていたら割れてしまったという経験もあるので、キーボードのすぐ上でしかもチルトアップ式となると、変に圧力がかかったり指が強く触れてしまった際に壊れてしまわないかと少々気になってしまいます。(^^;

 

左側面の様子。
キーボードはチルトアップさせた状態です。

電源スイッチとオーディオ入出力がありますが、上位モデル(760ED)と共用設計のため、ビデオキャプチャーポートやTV出力ポートの穴だけが残っています。
また、内蔵モデム(Mwave)ジャック部分も閉鎖板で埋められています。

本機はMwaveDSP未搭載なので、ESSのオーディオチップを搭載しています。

 

チルトアップ機構の詳細。
f型のパーツがキーボード下のプレートを引き起こして、キーボードが浮き上がります。
キーボードが浮き上がる分、液晶パネル基部も立ち上がっています。

このチルトアップは、755CD(V)で内蔵CD-ROMドライブのトレイ引出し時に本体自身をチルトアップできないという問題から発案されたと言われていますが、思ったよりシンプルな機構で驚かされます。

また、未搭載ポートの閉鎖板の状態にも注目。

 

チルトアップ機構の機能する状態。

f型のパーツの爪が液晶パネルの縁のレール(?)によって引き上げられ、これによって、左右のf型パーツの間にある板を引き起こし、キーボードを持ち上げるという寸法です。

この機構は、f型パーツのロックつまみを動かすことで、チルトアップを無効にすることもできます。
また、引き起こされた状態でも、爪を手前にスライドさせれば簡単に水平に戻せます。

ちょっと言い訳になってしまいますが、なんだかゴミだらけで汚くなっていますが、これは先に触れましたキーボードの部分に潤滑スプレーを吹いた形跡のひとつで、やたらとホコリが付着してしまっています。

 

前面は右側にネームプレート貼り付け用の窪み、その下には赤外線ポートが僅かに見えます。

左側はディスケットドライブが搭載されていますが、オプションのCD-ROMドライブを組み込むことができるようになっています。
(この辺のデザインは、755CDとほぼ同じようなつくりになっています)

 

右側面はセキュリティロック穴とPCカードスロット、PS/2ポートが配置されています。

PCカードスロットは、シャッターつきになっていて、CardBus対応となっています。
・・・が、手元の760ELは、CardBusの動作がちょっとおかしいようです。
PCカードコントローラやOSの関係で、初期のCardBus仕様PCカードはトラブルが多いという話をよく耳にしますが、本機もそういった問題を抱えているのかもしれません。

 

背面のコネクタ類の配置は、755系とほぼ同じになっていますが、755CD(V)では見られなかったFDDコネクタが拡張バスの上に追加されています。

また、本機では省略されているMIDI/JOYSTICKコネクタ(760EDには装備)が閉鎖板で埋められています。

 

再び戻って FDD部分のクローズアップ。

それでは、実際にFDDからCD-ROMドライブに交換してみましょう。

 

実際に組み込むCD-ROMドライブです。
(裏返してラベル面を撮影)

純正品ではなく、T-ZONEでサードパーティー製という名目で売られていた物です。
(速度は20倍速?で、私の購入時は 3,980円)

純正品の4倍速と比べますと、イジェクトボタンに位置と色が微妙に異なることと、取り付けたときにベゼルが僅かに浮いてしまう(^^;といった点が異なります。

ドライブ自身はサンヨーのもので、純正4倍速もサンヨーのものを使っていました。

 

取り外したフロッピードライブは、この外付け用ケースに組み込んで使用できます。
(現在も若松通商で取り扱っていると思います)

なんだか簡単な作りですが、1.5万円くらいしたような記憶があります。(^^;

あまりバカにできない値段ですが、CD-ROMドライブを組み込む際には、是非同時に入手しておきたいアイテムです。

 

実際の交換作業です。

まず電源を切って、液晶パネルを水平に開きます。

この後、キーボードを開いた際に後方に転倒してしまう可能性があるので、液晶パネルの下に支えとしてクッション等を敷いておくと良いでしょう。
(液晶パネル基部の立ち上がりが高いため、755系に比べて転倒しやすい傾向があるようです)

 

キーボードがチルトアップしている状態であれば、チルトアップ用の爪を手前に引いて、キーボードを水平に戻します。

 

いよいよキーボードを跳ね上げます。

左右の液晶パネルのロックつまみを奥側にスライドします。
755系ではこのつまみを手前に強く引かないとだめでしたが、760系では逆方向の奥側に押せば、簡単に開くことができます。
(この画像でもロックを解除して僅かにキーボードが浮いているのが判ります)

 

キーボードを跳ね上げたところ。

配置は755CD(V)に準じていますが、各パーツのラベルが色分けされているので、PCの内部という無機質なイメージが良い意味で裏切られおり、初心者でも目的のパーツを比較的容易に見つけ出すことができます。

 

それではフロッピードライブを取り外します。

青色のテープを引いてディスクドライブの固定ハンドルを固定位置から外し、ハンドルを引き上げればフロッピードライブを取り外すことができます。

なお搭載されているフロッピードライブは 3モードドライブとなっています。

 

フロッピードライブを取り外したら、ベゼルのすぐ後ろにあるスペーサーを取り外します。
底面の固定ピンを外して、スペーサーの左右をつまんで引けば取り外すことができます。

なお、このウルトラベイ底面は 755系ではメモリー増設用のスペースとなっていましたが、760では底面の専用スペースにメモリー増設ソケットが移動しています。

 

スペーサーを外したら、一旦バッテリーパックを取り外してからベゼルカバーのロックつまみを解除して、ベゼルカバーを取り外します。

これでバッテリーパックを再び取り付ければ、CD-ROMドライブの組み込み準備はOKです。

 

いよいよCD-ROMドライブの取り付けです。

この画像のように、フロントパネルから少しCD-ROMドライブを押し出した状態にして、あとはコネクタ部分を押し込めば組み込み完了です。

 

取り外したフロッピードライブは、外付け用ケースに組み込みます。
これで、再びCD-ROMドライブと交換しなくても、フロッピードライブを使用することができます。

 

組み込みが完了した本機。

やはりCD-ROMドライブ内蔵の方が貫禄が感じられますね。

 

本機のバッテリーパックです。

バッテリーはリチウムイウンで、約3時間程度の稼働時間があります。
ちなみにCD-ROMドライブ装着時には、1割程度の稼働時間減となるようです。

 

本機のハードディスクパック。

画像をご覧になれば判る通り、容量は1.08GBです。
ちなみにこの第二世代の760ELは、どのモデルも標準搭載容量は同じ(1.08GB)のようです。

ハードディスクパックの形状は 755系に類似していますが、厚みが薄くなっています。
オプションの 2GBパックも手元にありますが、このハードディスクキットには755系用でも使用できるように、厚みを調整するカバーが付属していました。

 

裏返した760EL。

キーボード側がチルトアップするようになったので、本体を傾斜させる脚は当然ながら省略されています。

この画像では不鮮明で、なんでも無さそうな底面に見えますが、中央に僅かな傾斜部分があります。

 

先にも少し触れましたが、メモリースロットは本体底面にあります。

メモリーはオンボードで16MB、144p/EDO-DIMM/32MBを2枚増設して最大80MBまで搭載できます。
残念ながら64MB以上のDIMMは認識できませんが、DIMMボード自身にメモリーを搭載して最大容量を増やすサードパーティーパーツも存在するようです。

なお、本機は中古ショップで購入した物ですが、本体底面銘板の上には「IBM PCD Marketing Promotion」という、どうやら本機はデモ機に用いられていたような経歴を示すシールが残っています。

 

本機のACアダプターです。

DCプラグは台形4ピンで、容量は35Wですが、従来の物に比べるとかなり小型化されています。
(とは言っても、560用などと同じ形状ですが)

 

全備状態の雄姿。

760系列は、このカッコよさからかどうかは判りませんが、しばしば映画でその姿を見ることができます。

詳細モデルは不明ですが、「コンタクト」でジョディー・フォスター扮する天文学者が愛用していたり、リュック・ベッソン監督の「TAXi」で、主人公(?)の刑事がF1レースゲームにハマっていたりしたシーンなんかがあります。
皆さんも是非探してみてください。

 

本機の基本スペック(J4Hモデル)

CPU    Pentium-133MHz
RAM    16MB Max80MB(32x2)
HDD    1.08GB
LCD    12.1"TFT/SVGAカラー (800x600 65536色)
CD-ROM   Option(内蔵可能)

セットアップやメンテナンスのポイント

今となっては CPUがやや非力な点が問題になるかもしれません。
それ以外はハイエンドモデルだけに大変しっかりしています。
ゲームとは無縁でE-mail程度が限度のエグゼクティブの方には、現在でも最高のマシンかもしれませんね。(^^;

 

(2000/5/6記)

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