東京・国立能楽堂 18時30分〜
鍋八撥
浅鍋売り:野村万作、羯鼓売り:深田博治、目代:野村又三郎
笛:一噌幸弘
花子
夫:野村万之介、妻:石田幸雄、太郎冠者:野村萬斎
----やはり、「花子」は中年過ぎの男の恋物語であり、大曲意識ばかりに目が行くと、この恋物語が変に重くなって、単なる稽古曲みたいになってしまうんでしょうね。若いときには体力でこなせるが、年を経て演ると舞う体力、謡う気力が限界に達すると、如何にもマスコミ受けしそうな枕詞がこの「花子」に冠せられてしまっていますが、その色眼鏡をとっぱらってくれたのが、今回の「花子」です。事実、あの恋心の謡の詞章は、中年じゃないとしっくり来ないです。また、舞もきっちり舞っただけでは、恋に迷う風情は出ません。名手と言われる人が舞って、最悪のパターンが重たくなるだけという結果も待っているわけです。
太郎冠者や妻との掛合いで、必要以上に下司っぽくなればなるほど、この恋心との落差が面白くなります。一緒に見た先輩も「こんなに分かりやすい花子は初めてだ」と言うくらいのものでしたからね。
それと客層が、いつもの狂言の会に来られる層と趣が違った気もします。万作の会に来られるように、名手拝見主義でもなく、若手狂言師の追っかけでもなく、非常に落ち着いた感じだったですね。花子が橋掛かりを道行く際も、見所一帯が息を詰めて見ていたのに、台詞の掛合いではしっかりと理解して反応していましたからね。きっと、あの見所に居った方達は「花子」の大曲さより楽しさを知ってもらえたと思います。
見所の雰囲気も重要なんです。万作さん、萬斎さん、羨ましいでしょう(^^;
ここまで褒めちゃうと臭くなるので、この辺で止めにしておきます(^^;。舞の所など、もうちょっとスムーズだったらとか、台詞の掛合いももうちょっと上品にという欲もありますが、前に良かったと言ったところと矛盾してしまいますね。この微妙なバランスが舞台なんですよね。妻はやはり石田さんでなくてはならなかったですね。本当にわわしい女を演らせたら、絶品です。僕にあんな妻が居たら、12年以上帰らないでしょう(^^;;;。萬斎の太郎冠者は、ちょっと強かったかなぁ。「花子」の曲自体から考えると、中高年の召し使いには、昔から使えている爺やみたいな人でないとおかしいんだよね。主人の妻に、いろんな縫い物をプレゼントしてあげるからと煽てられるのは、若い召し使いじゃ勘狂っちゃうでしょう。だからと言って、万作さんが冠者をしてたら、シテを喰っちゃったかもしれないです(^^;。
このサイトで先生の会を紹介してて、先生の舞台には波があるので正直言って不安なことも多いです。ですから、曲が始まって今日は調子いいのでホッとした気持ちもあります(^^;。(これ見たら、何様だと首締められますね)。
今回来場された方が、また次回も来られるように、面白い公演を続けて欲しいです。そのためには、大曲か?という気持ちもありますが、やはりいつもは見られない曲で、しかも先生でないと味が出ない曲を選んで欲しいですね。大曲や希曲は曲に振り回されてしまうけど、そうじゃない狂言も知って欲しいですよね。少なくとも、重たくならずに、男女の情や老いた風情を出す点では、万作さんでも敵わないと思います。
「鍋八撥」ですが...... う〜ん。悪くはなかったと思いますが、シテに花が欲しいです。こればかりは稽古だけでは、獲られないですよね.....
東京・宝生能楽堂 13時〜
牛馬
牛商人:山本東次郎、博 労:山本 則直
目 代:大島 寛治
庵之梅
庵主 :野村又三郎、
里ノ女 :野村小三郎、佐藤 融、野口 隆行、井上 靖浩、奥津健太郎
地謡 :藤波 徹、佐藤 友彦、井上 祐一、松田 高義
(素囃子)早舞 舞返
大:柿原 弘和、小:鵜沢洋太郎、太:助川 治、笛:松田 弘之
大般若
僧 :野村 万蔵、神子:野村 良介
施主:野村 英丘
宝の笠
太郎冠者:野村小三郎、主:松田 高義、
スッパ:佐藤 友彦
----今回の舞台では、小さな子が則直の顔を見て「恐い」といったり、「大般若」で僧と神子の掛合いを喜んでみたり、しゃぎりで留めた後つかさず笑ったり、思わぬ効果音となりました。4つ観た後、全体的に感じたことは番組のバランスが洗練されていないことですか。カレーを食べた後に、寿司喰う感じでした。
狂言 神鳴 シテ(神鳴) 茂山千五郎
アド(医師) 善竹忠一郎
地謡 千之丞、茂、宗彦、逸平
能 山姥 シテ(前・女、後・山姥) 片山九郎右衛門
ツレ(都の遊女) 味方玄、
ワキ(都の男) 宝生欣哉 ワキツレ(供の男) 殿田謙吉、大日方寛
アイ(境川の者)茂山七五三
笛 光田洋一 小 横田貴俊 大 河村大 前川光長
地謡 大槻文蔵、上田拓司、山中義滋、上野雄三 他
----蝋燭能の時は、前から3列目までに座らないと、顔や面の表情が全く判断できないですから、今日も早めに行きましたね。正面・中正では座れなかったけど、脇正の1列目で拝むことが出来ました。聞くところによると、蝋燭能だと、囃子の共鳴が普段よりいいとか。これは見所がざわつかないからなのかなぁ。実際、今夜も謡本やパンフを捲る音がなくて、舞台に集中できて良かったです。
入間川
大名:野村小三郎、太郎冠者 :野口 隆行
入間ノ何某:松田 高義
(素囃子)序之舞 美奈保
大:筧鉱一、小:柳原富司忠、笛:竹市学
蝉
蝉ノ亡霊:野村又三郎、旅僧:野村 万作、所ノ者:井上禮之助
地謡:野村小三郎、松田 高義、奥津健太郎、野口 隆行
大:筧鉱一、小:柳原富司忠、笛:竹市学
文蔵
主:野村 万作、太郎冠者:野村小三郎
お茶の水
新発意:茂山七五三、住持:木村 正雄、いちゃ:茂山 正邦
----最後に、去年と同じく名古屋能楽堂でのチケットのもぎり方に不満だなぁ。一緒に見た名古屋の友人も認めていたけど、この能楽堂の構造自体が、素人会には向いてて、有料の会の催しに向いていない作りなんだな。受付となる入り口が、見所の外を分断している形で、住宅で言うと居間を通らないと台所の生ごみを出せない作りみたいなモノ(これはイッセーのネタにもあったな(^^;)。老松・若松の張り替えることも大事だけど、ここも検討した方がいい気がしますね。
能「景清」
景清:粟谷菊生 人丸:粟谷充雄 里人:福王茂十郎
人丸の従者:森本幸冶
笛:赤井啓三 小鼓:荒木照雄 大皷:辻 芳昭
地:友枝昭世、粟谷幸雄、粟谷明生、中村邦生ほか
-------余談ですが、拍手は幕までもうちょっとの一の松までありませんでした(^^;。やっぱり、緊張感のある時は、出来ないはずです。
「翁」
翁:梅若六郎 面箱:茂山 茂 千歳:大槻一文 三番三:茂山七五三
笛:藤田六郎兵衛
小鼓頭取:大倉源次郎 脇鼓:清水晧祐、上田敦史
大皷:山本哲也
地謡:泉 嘉夫、泉 泰孝ほか
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