2001/11/23

早稲田大学 VS 慶応大学
早稲田大学VS慶応大学
5433前半921
5TRY0
4GOAL0
0PG3
0DG0
21後半12
3TRY2
3GOAL1
0PG0
0DG0


清宮恐るべし・・・。
「俺についてきたら勝たせてやる」という言葉通りの試合。選手全員に自信がみなぎっていた。試合前に選手がサークルを作ったときの顔が、以前までのような悲壮感の漂う表情ではなく、笑顔も混じった爽やかな顔も見えていたことからそれは予測できた。
「この大観衆の前でみんな試合を楽しもう」とでもいうような・・・。

昔、マコーミックがジャパンの主将だったとき、どんなに強いチームと戦うときでも、「これはチャンスなんだ!! 自分の力を試せるチャンスなんだ!」と常にポジティブシンキングを選手達に教えていたように。

慶応は早稲田のスピードに全くついて行けなかった。スピーディにワイドにボールを回しつづけられ、簡単にトライを許した。
早稲田のキーポイントは田原、大田尾のHB陣の小気味良いほどのリズムとテンポにある。

ラックの構成も学生レベルではかなり水準が高い。これは全員が走れている事の表れだ。ゲインしたプレーヤーが捕まった時、その次のサポートプレーヤーが遅れると、ターンオーバーされるか、ノットリリースザボールを取られるルールに変わったため、走れないプレーヤーは現代ラグビーでは全く役割を果たせないことになった。

ランニングフィットネス。
私が3年前から口が酸っぱくなるほど言って来たことの必要性が認められてきたのは、個人的にはものすごく嬉しい事だ。
HB陣に話を戻せば、田原はパスの正確性においてもスキルが高い。
SO大田尾の胸にすっぽり入るようなコントロールされたパス技術は昔の堀越を思い出させる。

SO大田尾も、前半三本目のトライを演出した針の穴を通すようなパススキルの高さがある。学生レベルでは秀逸だ。最初のトライに結びつけた一瞬のサイドチェンジや、後半開始早々、自陣から慶応のギャップを見つけ、抜け出してトライにつなげた状況判断も素晴らしく、この二人を影のMVPに挙げたい。
もちろん、今日の試合のMVPは誰が見てもCTB山下だろう。

昨年まではその強さを活かしたポイント作り、突破役、クラッシャー的な役割が多かったが、今日は抜けると判断すれば、敢えて当たりに行かず、鮮やかなステップで慶応バックスを翻弄してトライに結びつけた。体もあり、ディフェンスも強いので、近い将来ジャパンに顔を連ねる逸材になってきたと言える。
一方、慶応は明治戦でも指摘したように、SHの球出しがワンテンポ遅い。
判断が一瞬遅れる。この僅か数秒、或いは,コンマ何秒かの球出しの遅さのために、慶応バックスは早稲田のタックルの餌食になった。

あれよあれよというまに前半5つものトライを奪われ、33対9というまさかの大差での折り返し。後半は先に得点を奪い切り返して行くはずが、逆に早稲田にノーホイッスルトライを奪われては勝利の女神は近よって来なかった。
さすがの慶応でも、一度歯車が狂うとここまでなってしまう、というスポーツのメンタル面の怖さの証しだ。

メンタル面の怖さと言うのは、早稲田側にも現れた。
前述のトライで40対9となったことで、早稲田フィフティーンは勝利を意識したはず。そのため余裕が慢心に変わった。やや受け気味になり、慶応に2つのトライを許した。

わたしがメンタルトレーニングの必要性をいつも言うのは、スポーツというのは得てしてこういうものだからだ。
これをしっかりと認識しないと、ここ一番の大試合で必ずプレッシャーに負ける。
科学的なメントレ導入の必要性をどのチームも早く認識してもらいたい。
手前味噌だが、私の予想が良く当たるのは(笑)、チームの実力の見極めも然る事ながら、こういったメンタル面が、その試合毎に、どちらのチームにどの様に左右するか? を考えて予想しているからだ。(すみません、ちょっと自慢してみました(^_^))

まあ、それでも今日の早稲田はしっかりとした戦い振りが最後まで確立されていたため、その後盛り返し、逆に2つのトライを奪い、54対21という大差で試合は終了した。

早稲田は次の明治戦で勝てば、久し振りの対抗戦全勝優勝ということになるが、今日のように鮮やかに勝てるかと訊かれれば、簡単には断言できない。慶明戦で慶応が快勝したと言っても、力にそれほどの差は感じなかった。明治のモチベーション、或いは早稲田のちょっとした慢心次第では稀代の好勝負が演じられる可能性もある。それでも早稲田の勝利は揺るがないと思うが・・・。

さて、早稲田が勝つか、或いは負けても8トライ以上奪われない限り、対抗戦の順位は早稲田1位、慶応2位、明治3位ということになる。そうなると、先の話だが大学選手権で明治は二回戦で関東学院と当たる事になるだろう。となれば、関東学院の力は他のチームより頭一つ確実に抜けているので、私が9月の段階で予想した通り、国立での準決勝は関東学院対法政、早稲田対慶応ということになる可能性が高い。そして早稲田に超大物FL上村が戻ってくることと、キーとなる田原、大田尾のHB陣が怪我などで欠場しないという条件付で、決勝戦は関東学院対早稲田という組み合わせになるのではないか?

さすがにその結果まで予想するのは差し控えておきます。
どんな番狂わせが起こるのか解らないのが学生ラグビーですから。
いわばそこがメンタル面の怖さですので・・・。


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