2002/1/3

大学選手権 準決勝
早稲田大学 VS 慶応大学
早稲田大学VS慶応大学
3615前半07
2TRY0
1GOAL0
1PG0
0DG0
21後半7
3TRY1
3GOAL1
0PG0
0DG0



結局、極論から入れば、この試合を象徴しているのはPR大江のトライだったろう。
プロップが相手ディフェンスをステップを切って次々と交わし、70m走りきってトライを奪う。そんな光景を国内の試合で今まで見たことがあるだろうか?
5カ国対抗、トライネーションズ、ワールドカップなどでは時折見かける光景だが、国内では私の20年以上のラグビー観戦歴でも殆ど記憶にない。もはや第一列はスクラムだけ強ければ良いという時代が完全に過ぎ去ったと言う事の証しだ。パスが出来、ステップが切れ、状況が読め、80分間走りきり、ハードタックルを決められる、そんなトータルスキルが第一列にさえ求められるのが現代ラグビーなのだ。

昨年のサントリー路線を受け継ぐ清宮監督が教え込んだ、切れないフィットネスを根幹とした、フォワードもバックスも区別のないトータルラグビーの重要性。それをまざまざと見せつけた感のある素晴らしいトライだった。

この日の私はバックスタンドのスコアボード側ゴールライン付近前から2列目での観戦。長年待ち望んでいた日本におけるトータルラグビーを象徴するシーンとも言えるプロップのダイブを、観客席から目の前で見ることの出来た私は幸せモノなのだろう。

11月の早慶戦同様、今日もSH田原、SO大田尾のHB陣のパス回しは冴えわたった。CTB山下大吾はかなりマークされていたにもかかわらず、自ら2つのトライを奪い、その圧倒的な存在感を見せつけた。期待していたFL上村も活躍したが、完全復調にはまだまだと感じた。(彼の潜在能力はこんなものではない。密集での仕事、接点での力強さこそ発揮していたが、ランニングフィットネスでは7割ぐらいの復調度合いではないか?)それでも最後に慶応の息の根を止めるとどめのトライを奪ったのは彼だった。

前半25分過ぎまでボール支配率は圧倒的に早稲田。
慶応はシャローのディフェンスで懸命に凌ぎ、0対0が続く。局面を打開したのはやはり山下大吾の個人技。慶応のディフェンス3、4人をステップで軽く交わし、ゴール真下にトライ。慶応にとっては、それまで厳しいタックルでターンオーバーなどを奪っていたものの、何故かこの瞬間は、ふっと気が緩んだようなディフェンスのミスだった。

そして、その後に前述の大江のトライが続いた。
このトライは、SH田原の状況を良く見極めたサイドチェンジが伏線となっている。当初左サイドにボールを回そうとした田原だったが、人数を判断して素早く右に切り返し、パスを放った。(早稲田の素早いアタックを継続させるポイントは、実はこのSH田原が握っているように思える。決勝戦で、関東学院は彼を狙ってくるのでないか? ※これは関東学院法政観戦記で詳しく後述します)

慶応はアタック面では、セットプレー、特にラインアウトで再三のミス。これが痛かった。早稲田陣深くまで責め込んでマイボールラインアウトのミスなどをすると攻撃の拠点が作れなくなる。ディフェンスも80分間の全体的な質としては高かったように思えたが、山下にトライを奪われた時は、魔が差したかのように簡単に綻びが生まれた。

試合展開としては、早稲田が15-0で前半を折り返し、2トライ2ゴール差で追いつけない点差をつけた状況で、後半どちらが先に点を奪うか、ここが勝敗の分かれ目だった。

しかし、ここでも前半のビデオでも見るかのように、山下大吾にステップで抜かれてG下にトライを奪われる。ここぞとばかり攻め続ける早稲田は、前半トライを取った大江に代わって投入されたPR安藤が慶応ディフェンスをなぎ倒し右隅にトライを奪い29対0と差を広げる。

この点差になって、早稲田フィフティーンは勝利を確信したのだろう。
学生が恐いのはこのメンタル面であり、大逆転などが起こるのは得てしてこういう展開が多い。

余裕の見え始めた早稲田は、タックルが僅かながら甘くなり、慶応CTB瓜生に大きくゲインを許し、最後は再び、瓜生、NO8山本、WTB加藤とボールを回され、初のトライを奪われる。これで29対7。残り約20分。まだ慶応に逆転の目は残っており、ここからが今シーズンの両チームの本当の強さが試された。
一転して慶応ペースとなり、瓜生がゴール前に迫り、トライかと思われたが、タッチに押し出され、及ばず。再三良い走りを見せていたFB広瀬が大きくゲインして右に大きく飛ばしパス。受けとめたFL野澤が走りきれるかと思いきや、WTB中山も簡単には抜かれず、懸命のタックルで野澤のスピードを殺し、やはりトライならず。

逆に早稲田は、ターンオーバーから慶応ゴール前に迫ると、こぼれたボールを上手くFL上村が拾い上げトライ。Gキックも決まり、36対7。これで勝負あった。

今年の慶応は得点能力(攻撃力)は高いものの、魂のタックルと呼ばれる伝統のディフェンス力には不安があるチームだった。結局、ディフェンス能力の差が、勝敗を決めた。知将上田監督なら、来年はまずこのディフェンス力をポイントに修正してくるだろう。

点差はついたが、なかなかの好勝負。目まぐるしく攻守が入れ替わり、予想通り、見ていて非常に面白い試合だった。

早稲田対関東学院の決勝予想は、関東学院対法政の観戦記の最後で書きたいと思います。 m(__)m

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