1999/1/24
全国社会人大会 準決勝
サントリー VS 神戸製鋼
サントリーVS神戸製鋼
16
13前半316
2TRY0
0GOAL0
1PG1
0DG0
3後半13
0TRY1
0GOAL1
1PG2
0DG0

※トライ数でサントリーが決勝進出

高橋(日大)FW中道(同 大)
長谷川(中央大)弘津(同 大)
中村(同志社大)清水(明治大)
エニス(BC大)トッド(ビロング高)
大久保(法政大)小泉(早 大)
ハッチンソン()小村(明 大))
清宮(早 大)富岡(明 大)
早野(帝京大)伊藤(法 大)
永友(明治大)HB堀越(早 大)
伊藤(明治大)ミラー(プケ高)
福田(明治大)TB増保(早 大)
ウルイナヤウ(MA工科大)八ツ橋(天理大)
沢木(日大)吉田(京産大)
青柳(早稲田大)大畑(京産大)
吉田(専修大)FB岩淵(青学大)


時間試合経過得点
10分サントリーは自陣右サイドでのペナルティから積極的に展開。SO伊藤からCTB沢木、トップスピードで入ってきたFB吉田が縦に突破して、左サイドを快走。最後は岩淵を振り切って左隅にトライG失敗。5-0
15分サントリー、中央23mPG成功。(オフサイド)8-0
25分サントリーは中央右サイド付近でのスクラムから左展開。ウルイナヤウが岡安からのパスをファンブル。ノックオンと判断した神戸バックス陣が止まったのを尻目に、ウルイナヤウはそのままディフェンスにきたFB岩淵を交わし、左隅まで走りきりトライ。G失敗。13-0
37分神戸製鋼、中央50mPG成功。(ライイングオンザボール)13-3
HALF TIME
1分サントリーFB吉田がミラーの蹴ったボールをインゴールでノックオン。神戸製鋼は、G前左サイドでの5mスクラムからNO8伊藤がいったん縦を突いてラック。SOミラーが右から左に回り込み、ディフェンスを交わしてトライ。G成功。13-10
9分 神戸製鋼、中央15mPG成功。(オーバーザトップ)
同点に。
13-13
21分 神戸製鋼、中央15mPG成功。(ライイングオンザボール)
神戸製鋼逆転。
13-16
37分サントリー、左中間15mPG成功。(オフサイド)16-16
40分神戸製鋼は、ハーフウェイライン付近でラックサイドをFB薬師寺が突破。増保にパスが通り、右ライン際を走る。トライかと思われたがFB今泉がぎりぎのところでタックルし、何とか阻止。戻ってきたウルイナヤウが押し出して、ノーサイド。16-16

感想
雪に変わりそうな冷たい雨が降りしきる秩父宮。
凍えそうな寒さの中でしたが、なかなかの好ゲームでした。

前半、神戸製鋼はSOミラーの正確なロングキックを軸に敵陣に攻め込みますが、サントリーは、ルーキーのロック大久保を中心に安定したラインアウトを起点に反撃。スクラムも押し気味で、ややサントリーペースで試合が進みました。サントリーの攻撃は、SO伊藤のハイパントが中心。要所で見せるライン攻撃では、ウルイナヤウを軸にしながらも、沢木や吉田の縦へのスピードを生かすことで、ポイントを絞りづらくさせていました。
前半最初のトライは、その吉田選手のスピードを生かした見事なサインプレー。スピードとスワーブでジャパンの岩淵選手を振りきりました。
二つ目のトライは、神戸製鋼にとってはやや不運なもの。一瞬、誰もがノックオンと思って(当のウルイナヤウ選手でさえも)スピードを緩めた矢先のことでした。

後半開始早々、神戸製鋼はサントリーG前のチャンスを確実にトライに結びつけ、反撃を開始すると、ミラー選手の正確なPGで点を加え、21分には逆転に成功。
結局、試合は、サントリーが37分にG前でペナルティをもらい、トライ数の差を計算に入れて、冷静にPGを選択。これを決めて凌ぎきりました。

神戸製鋼は、常にミラー選手のキックを軸にしたゲームメイク。
確かに彼は良い選手です。キックはもちろん、パス、ディフェンスなどどれをとっても水準以上。この試合でも神戸の得点はすべてミラー選手によるものでした。ただ、ミラー選手は神戸製鋼にとって本当に必要な選手なのか?と考えるとやや疑問がわいてきます。

どんなにロングキックで相手陣深く攻め込んだとしても、相手ボールのラインアウトを取れなければ、攻撃権を得ることはできません。「とりあえず敵陣」という昔ならあたりまえのこの考えも、今では全く時代遅れのものです。
特にジャパンなどは絶対にやってはいけないラグビーのはずです。

多くのジャパン選手を抱えながら、なぜか退屈で地味なラグビーを演じ続ける神戸製鋼は、選手のポテンシャルを100%発揮していないように見えます。
もっと選手の個性を存分に活かし、弾けるようなラグビーの方が向いているのではないでしょうか?
あれだけのタレント集団を、今の形で埋もれさせるのは非常に惜しい気がします。

岩淵選手もやはりFBなどではなく、SOで奔放にプレーさせてこそ、その才能を発揮できるはずです。
今のままでは、「簡単には負けないチーム」ではあるものの、ここ一番の大勝負では「すんなり勝ちきれない不思議なチーム」になってしまうのではないでしょうか?

どこかで殻を破らなくては、万年優勝候補のままで終わってしまいます。
今、神戸製鋼に必要なのは、たとえば慶応の野沢選手のように、たった1人で選手全員を奮い立たせるという、気迫でラグビーをする選手なのかもしれません。
例年ならここでシーズンは終わりとなり、その課題は来期へと持ち越されるのですが、今年はまだ日本選手権というリベンジのチャンスが残されています。とりあえず、今シーズンはまだ現在の戦法に頑なに固執し続けるのか?それとも、この敗戦によって一気に変貌を遂げるのか?神戸製鋼は果たしてどちらの道を選択するのでしょうか?

サントリーは昨年から続くキャッチフレーズ、「ダイナミックサントリーA80」(80分間ボールをダイナミックに動かし続ける、というサントリーのビール『ダイナミック』の販促も兼ねた?フレーズ)がようやく実を結びつつあります。(ところで『ダイナミック』ってビールまだ売ってるんでしょうか?)

昨年は準備期間が短か過ぎたためか、志半ばにして断念、シーズン後半からは、重いフォワードを全面に出すゆっくりとしたラグビーに戻ってしまいましたが、今年は違います。特にSO伊藤、CTB沢木、WTB福田、FB吉田という生きの良いルーキーの加入で、バックスはさらにスピードが増しました。重いフォワードもさらに力強くなったようです。それに加え、戦略的交代の制度を非常に有効に活用。選手層の厚さも手伝い、試合の流れを上手く読みながら、選手を入れ替えています。
フォワードとバックスのバランスが取れ、なおかつ選手層が厚いサントリー。
トヨタとの決勝戦では、観客を唸らすような素晴らしいラグビーを見せて欲しいと思います。

トライも三つだけと、ロースコアの試合でしたが、それもお互いの厳しいディフェンスのせい。両チームとも最後まで良く走り、緊張感のある良い試合だったと思います。(なぜかサントリー側だけ異常にノックオンが多かったですけど…)

特に終了間際、あわや逆転と思われた増保選手の走り(目の前を彼が駆け抜けていったときは絶対トライだと思いました)を、一度は振り切られながら、再び追いついて止めたサントリーFB今泉選手のタックルは見事。まだまだ健在なところを見せてくれました。

追記
(前半、永友選手がボールを取りに来たミラー選手に対して、そのボールを外に大きく放り投げたプレーはあまり誉められたものではありません。昔は、相手ボールでも親切すぎるほど丁寧に相手選手にボールを渡していたものです。勝利至上主義が蔓延り、最近はあのようなプレーが良く見受けられます。
レフェリーにはミラー選手のラフプレーとして片づけられましたが、やや露骨すぎました。殴りたくなる気持ちもわからないではありません。結果的にはサントリーが得をしましたが、少し考えさせられるプレーでした。)

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