1999/1/24
全国社会人大会 準決勝
東芝府中 VS トヨタ自動車
東芝府中VSトヨタ自動車
140前半1037
0TRY1
0GOAL1
0PG1
0DG0
14後半27
2TRY4
2GOAL2
0PG1
0DG0


溝辺(関東学大) FW戸崎(岐阜一高)
薫田(筑波大)金城(大体大)
中村(筑波大)高橋(大体大)
釜沢(大東大)山下(名古屋工)
安田(専修大)椎村(龍谷大)
渡辺(日体大)菅原()
臼井(大東大)石井(三好高)
ゴードン(オタゴ大)バシャロ(ナドロガ高)
村田(専修大)HB大原(大体大)
島崎(佐賀工)広瀬(京産大)
和田(東海大)TBツイドラキ(CP大)
小山田(浪速工)朽木(日体大)
マコーミック(Cチャーチ高)勝野(日体大)
秋山(法政大)オト(大東大)
松田(関東学院大)FB仙波(関東学大)



時間試合経過得点
7分トヨタ、中央40mPG成功。(オーバーザトップ)0-3
41分東芝は、トヨタ陣で再三攻撃を仕掛けるが、トヨタの厳しいディフェンスの前にゲイン出来ずに、ボールを受けた島崎が勝野のタックルでファンブル。こぼれたボールを拾ったツイドラキがすかさずオトにパス。ディフェンスの整わない東芝府中バックスを尻目に、オトが約80m右サイドを独走。最後は右中間に回り込んでトライ。G成功。0-10
HALF TIME
11分東芝は、自陣22mライン付近でのスクラムから村田が右サイド突破を試みるが、FL菅原に捕まりボールをファンブル。こぼれ球をツイドラキがインゴール蹴り込み、自ら走り込んで押さえ、左隅にトライ。G失敗。0-15
15分 東芝は、自陣22m付近でのスクラムから左展開。トヨタCTB朽木が、東芝SO島崎から小山田への飛ばしパスを完全に読み切って
ナイスタックル。こぼれ球をオトが拾って最後は勝野にパス。右隅にトライ。G成功。
0ー22
20分デインジャラスタックルでトヨタFL石井シンビン。
22分トヨタは、東芝陣でFB仙波、CTB勝野などの縦突破を絡めた連続攻撃でゲイン。ラックからSO広瀬がインゴールに絶妙のパント。CTB朽木が押さえて右中間にトライ。G失敗。0ー27
26分トヨタ中央25mPG成功。(オフサイド)0ー30
30分東芝はハーフウェイライン付近からマコーミックミックが突破してゴードンがフォロー。最後は途中出場のWTB薬師寺がポスト下にトライ。G成功。王者東芝が後半30分まで無得点でした。7-30
33分トヨタはフォワード、バックス一体となって連続攻撃。最後は広瀬のパスを受けた石井が飛び込んで右中間にトライ。G成功。7-37
37分東芝は、トヨタ陣左サイドでのラインアウトから右展開。ゴードンが突破して、最後はマコーミックがステップでディフェンスを振り切り中央にトライ。G成功。14-37


感想
久々に見た!! こんなすごい試合。

接戦が予想された花園での準決勝。
秩父宮でサントリー対神戸製鋼の試合終了後、トヨタ圧勝の報を聞いた私は、どうせ東芝は日本選手権ねらいに切り替えたのだろう、と勝手に推測したのですが、これがとんだ大間違い。
ビデオで見た花園の試合は、秩父宮以上に素晴らしい試合でした。
確かに東芝府中にはミスが多く見られました。でもこの試合では、やはりトヨタの驚異のディフェンスを褒め称えるべきでしょう。
不思議なのは、どうしてこのトヨタが、リコー戦では客席からブーイングされるような退屈な試合をしたのか? ということ。やはり手の内を隠していたのでしょうか?

試合経過を見ればわかるように、トヨタ自動車の得点は、ほとんどが東芝府中の攻撃を厳しいディフェンスで寸断し、そのターンオーバーからのものです。これこそ、まさにアタックル。

サントリー対神戸製鋼を見て、ナイスゲームと納得していた私ですが、このゲームには全く及びません。トヨタのディフェンスは、強い外国のチームを見ているようでした。一人一人のタックル、或いは一つ一つのタックルに魂が込められ、常に東芝を凌駕していました。トヨタの気迫のディフェンスがこの試合のすべてを決めたといっても過言ではありません。(試合後の大原主将のコメントを聞くと、マスコミの低い評価に反発したようなニュアンスがありましたが、そのアナウンス効果だけではないでしょう)

これこそジャパンの目指すべきラグビーの一つの姿です。ラグビーファンなら絶対必見の試合といえます。
『攻撃は最大の防御』という言葉がありますが、この試合では『タックルは最大の攻撃手段』ということを見事に立証してくれました。
この試合のトヨタに勝てるチームは日本に存在しません。(うーむ、ちょっと言い過ぎか…・)
東芝府中の自滅でも何でもなく、この試合に関して言えば、それこそ圧倒的にトヨタの方が力が上でした。

選手名を挙げれば、まず大原選手。タックルが良く決まっていました。
広瀬選手も、自陣22m内から相手陣22m付近まで攻め込むキックや自在のパスなど、冴えわたりました。
CTB勝野選手のハードタックルは見ていて爽快感を覚えました。同じくCTBの朽木選手は絶妙のパスワーク。去年のサントリー戦で見せたパスが偶然のものではないことを立証しました。相手をなぎ倒すようなタックルはまさに正真正銘『朽木倒し』のタックルでした。

新人(どこから?)FL菅原選手も良く走っていました。
そして地味ながらも目に付いたのは元ジャパンのプロップ高橋選手。ワールドカップイヤーに入ったことで、熱い血が再びよみがえってきたのでしょうか? まだ30歳を過ぎたばかりで、プロップとしては充分に活躍できる年齢です。一時期に比べ、体も絞れたように見えました。最後まで、手を抜かずにタックルしていたのが非常に印象的です。
とにかく、フォワードからバックスまで、誰1人として休むことなくタックルに向かっていきました。

敗れた東芝府中。
想像以上のトヨタのディフェンスの強さに今日は完敗です。
やはり、昨秋から続く強行スケジュールの影響は大きく、ジャパンの選手達には疲労が見られます。それでもこのまま無策でいるはずはありません。スタンドの向井監督の表情にもまだ余裕がありました。コンビネーションもまだまだ完成途上。三週間の休みで英気を養い、日本選手権での雪辱に期待したいと思います。

ついでに決勝戦の見どころも挙げておきましょう。

ともに強力フォワードでは、一、二を争う東西の両雄です。はたして、どちらがフォワード戦で優位に立てるのかが勝敗を分ける一番のポイントになります。
スクラム、ラインアウトなどのセットプレーでは、サントリーの方が安定感があります。
ただし、ラック、モールへの集散、個々の突破力、サイドのディフェンスなど試合の流れの中でのフォワードの動きはトヨタの方が上ではないでしょうか?特にこの試合で見せたフォワードのディフェンス。決勝戦でも同じようなプレーができれば、流れはトヨタに傾きそうです。

次いでハーフバック陣のゲームメイク。
トヨタは、大原、広瀬というジャパンのハーフバック陣。対するサントリーは、百戦錬磨の永友とルーキー伊藤という組み合わせ。
トヨタの二人は今絶好調。特に広瀬選手。キックだけではなく、自分で突破を図ったり、ラインを動かしたりの状況判断に冴えを見せています。
サントリー側も、フォワード戦で優位に立てれば溌剌とプレ-出来るでしょうが、いざ劣勢になった場合にどうゲームを組み立てるか? やや不安が残ります。
そしてセンター陣。トヨタは、朽木、勝野。サントリーは、ウルイナヤウ、沢木。お互いにハードタックルで名の通った選手達です。

サントリーは当然ウルイナヤウを軸に組み立てるでしょうが、トヨタのCTB二人のディフェンスも強烈。骨の軋む音がスタンドに届くほどの、凄まじいタックル合戦が見たいものです。(特に勝野選手のぶちかましは見モノ)(逆に沢木選手はノックオンが多いのが気になる・・)
朽木選手の兄譲りのキラーパスも見逃せません。(お兄さんが引退してから、その技に磨きがかかったのは何故?)

WTBはツイドラキ、オトの外国人二人に対して、福田、青柳。ここはトヨタが攻撃面、防御面ともかなり上ではないでしょうか。(ジャパンの正WTBを狙うツイドラキ選手と、ジャパン返り咲きを目指すオト選手「ホント?」の方がサントリーの二人よりもモチベーションが高そうですし・・)

吉田、仙波の未来のジャパンを担うFB対決は、スピードで吉田、突破力で仙波に分がありますが、まず互角というところでしょう。(FBは今のジャパンの泣きどころ。特に二人のディフェンス力がポイントになります)
全体的に見れば、攻撃力ではサントリーがやや優勢で、防御力ではトヨタが上。
東芝戦のようなディフェンスをトヨタが再び出来れば、ターンオーバーからの得点という同じような試合展開でトヨタが勝利を手にしそうです。広瀬選手の正確なキックも大きなアドバンテージになります。

敢えて、点数予想をするなら、
トヨタ36(4トライ2ゴール4ペナルティゴール)対サントリー25(3トライ2ゴール2ペナルティゴール)というところでどうでしょうか?

とにかく、お天気が少し気にはなりますが、両チームとも観客を震え上がらせるほどの(寒さでではないですよ(^^;))好ゲームを演じてくれることを期待したいと思います。

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