1999/10/31
ニュージーランド VS フランス
ニュージーランドVSフランス
3117前半1043
1TRY1
0GOAL1
4PG1
0DG0
14後半33
2TRY3
2GOAL3
0PG2
0DG2


時間試合経過得点
2
フランスSOラメゾン、左中間40mPG成功。(オフサイド)0-3
4分ニュージーランドSOマーテンズ、中央48mPGはポストに当たって失敗。0-3
6分ニュージーランドSOマーテンズ、左中間48mPGは右に外す。0-3
8分ニュージーランドSOマーテンズ、中央15mPG成功。(オフサイド)3-3
14分ニュージーランドは右展開でカレン、ウィルソンと渡りフランスG前に迫る。3-3
16分フランスゴール前ラインアウトからモールを押し込んで一端ラック。フランスがハンドの反則を犯し、ニュージーランドSOマーテンズが右中間20mPG決める。6-3
19分フランスはハーフライン付近で左に展開。WTBドミニシが切れ味鋭いステップで抜け、なおもニュージーランドディフェンス3人を交わし、G前に迫りラック。素早く右にボールを振ると、ニュージーランドディフェンスはがら空きでSOラメゾンが中央まで回りこんでトライ。G成功。6-10
21分ニュージーランドSOマーテンズ、左中間35mPG成功。9-10
23分ニュージーランドはフランス陣で左展開。WTBロムーが一人、二人とディフェンスを交わし、ゴール前に。最後は4人に囲まれながらも力で突破し、左中間に飛び込みトライ。G失敗。14-10
28分フランスはハーフライン付近からWTBドミニシがライン際を抜けてニュージーランド22mライン内へゴロパント。追走したFBガルバジョサが再びキックでインゴールに蹴りこむが、強過ぎてデッドボールラインを越え、トライならず。14-10
31分フランスは自陣からFLマーニュが右ライン際を快走。SOマーテンズのタックルを振り切るとインゴールにキック。ニュージーランドFBウィルソンとフランスWTBベルナサル、マーニュそしてロムーをも加えた4人が追走するが結局ウィルソンのタッチダウンが認められ、ドロップアウトに。(僅かの差でトライには至らなかったが、”相手ディフェンスの裏、インゴールに蹴りこむ”という同じような二つのプレーが、後半は結果的に成功し、勝利を呼び込む事になる)14-10
39分ニュージーランドSOマーテンズ、左隅30mPG成功。(オフサイド)17-10
42分ニュージーランドSOマーテンズ、左隅25mPG外す。17-10
HALF TIME
5分フランスのハイパントをハーフライン付近でキャッチしたニュージーランドFBウィルソンがカウンター。ロムー、ウィルソン、再びロムーと渡りフランスディフェンスを4、5人交わして左中間にトライ。G成功。24-10
7分フランスSOラメゾン、中央30mDG成功。24-13
8分フランスSOラメゾン、中央35mDG成功。(試合の流れからいうと、この二本連続のドロップゴール成功が大きかった)24-16
10分フランスSOラメゾン、中央38mPG成功。24-19
14分フランスSOラメゾン、左中間40mPG成功。(オフサイド)24-22
16分フランスはSOラメゾンがハーフライン付近でのラックからニュージーランド陣にハイパント。そのボールをWTBドミニシがワンバウンドで上手くキャッチしてSOマーテンズのタックルを振り切り独走。中央まで回りこんでトライ。G成功。フランス逆転。24-29
20分フランスはモールを押し込んだ後、ニュージーランド陣22mライン内でのラックから出たボールをSOラメゾンがインゴールへショートパント。競り合いながらCTBドゥルトがこのボールを押さえてトライ。G成功。24-36
27分フランスはニュージーランド陣右中間30m付近でペナルティを得るも狙わず、タッチに。(狙って安全圏内の15点差にすべきではないかと思ったが・・・結果的に影響は無かった)24-36
33分ニュージーランド怒涛の攻撃でフランスゴール前に迫る。22mライン内でのスクラムから左に展開するが、フランスの早い出足の前にWTBウマガがノックオン。このこぼれ球をSOラメゾンがニュージーランド陣深く蹴りこんでFLマーニュが追走。マーニュが再びキックしてボールはニュージーランドインゴールに。このボールをニュージーランドFBウィルソンとフランスWTBベルナサルが追いかけるが、タッチの差でベルナサルが押さえ、ゴールポスト左にトライ。G成功。24-43
38分ニュージーランドは連続攻撃でフランスゴールライン付近のラックからFBウィルソンが抜けて中央にトライ。G成功。31-43


感 想
ブラウン管に映し出された光景に私は戸惑いを覚えていた。
歓喜するトリコロールブルーのジャージを身にまとったフランスの選手たち。一方、うつろな眼差しでピッチを引き上げようとする黒衣のニュージーランドオールブラックス。いつもは威厳を見せる漆黒のジャージも、この時ばかりは死者を葬送する喪服のように見えた。
ニュージーランドが敗れた。
しかも準決勝で。今大会不調のフランスに。
目の前の光景はまぎれもなくその事実を伝えていた・・・・。

確かにジョン・ハート監督は物事を科学的に分析することに長けた人物だ。
第1回ワールドカップの直後、オールブラックスのコーチとして来日した彼の発言をラグビー雑誌で読んだとき、その緻密な分析力と卓越した合理的精神に驚いた記憶がある。しかし、逆に人間の情念とか怨念とかいうものを軽く見過ぎていたのではないか? (オールブラックスを軍隊に体験入隊させ、精神力の鍛錬までさせた彼がどうして? とも思う)

準決勝の試合前に、決勝戦までの練習スケジュールを発表する。
それは確かに彼らの確固たる強い意志の表れなのかもしれない。しかし、そのことが相手チームやラグビーファン、マスコミ(小林氏によれば、かなりのマスコミが反発していたようだ)、そしてトゥイッケナムの観衆にどういう気持ちを抱かせるか?それを甘く見過ぎていた。もちろん、今となっては、ニュージーランドの敗因を様々な観点からいろいろとあげつらうこともできる。

曰く
「今回のニュージーランドの強さはスピードだ。一度劣勢に立ったとき、スピードを信条とするチームではなかなか盛り変えせない」
「バックスリーの連携には不安がありそうだ」
「ロムーはアタックは凄いが、ディフェンス面は付け入る隙が十分ある」
「今回のオールブラックスには精神的リーダーがいない」
等々。

しかし、それはあくまでも今回の結果からの判断で、ならばもう一度「ニュージーランド対フランス」という対戦があるとしたら、一体どちらが勝つと思うだろうか? ブックメーカーがオッズをつけるとしたら、少なくとも9対1ぐらいの差がつくはずだ。全体的な戦力としては、誰が見てもニュージーランドの方が上だからだ。

となれば、この結果はやはり"ラグビーとはハート(このハートとはジョン・ハートではありませんよ、念のため(^_^))でやるスポーツだ"ということを如実に表しているのではなかろうか。
いつの日本シリーズだったか、巨人を三タテして日本一に王手をかけていた近鉄。三連勝した試合後のインタビューで勝利投手になった近鉄の加藤投手の言い放った一言が、その後のシリーズの流れを180度変え、近鉄を奈落の底に引きずり落とした。

「巨人は弱いですね。ロッテ(そのシーズンパリーグでは最下位)より弱いんじゃないですか」
彼にすれば、ここで自らを鼓舞すると同時に人気のないパ・リーグの強さをもアピールする、という狙いだったのかもしれない。しかしそれはあまりに余計な一言だった。この言葉に発奮した巨人は選手一丸となって近鉄に立ち向かい、第6戦ではその加藤投手を木っ端微塵に打ち砕き、見事に4連勝して日本一の栄冠を勝ち取る。

加藤投手からホームラン(ヒットだったか?)を打って1塁ベースに向かいながら,
某選手(駒田だったかな?)は彼に対して心の中でこうつぶやいたと言う。「ざまあ見ろ」。
むろん、紳士のスポーツであるラグビーで、勝者となったフランスの選手たちがニュージーランドのジョン・ハート監督に対して、これと同じような気持ちを抱いたかどうかは私の知るところではない。

ただし、ニュージーランドの行為が、或いは対戦前の下馬評の低さが、フランスチームのハート(このハートも・・・・もう言わないでもわかりますね)に火をつけたことは間違いない。
ラグビーは、精神力だけで出来るスポーツではないが、精神力なしには出来ないスポーツである事もまた事実だろう。

恐らく、今回のニュージーランドとフランスの力は、点数として見ると優に20点程度の差はあると思える。しかし、いわゆるモチベーションの差でこの20点はどうにでもなる。今回の対戦は、フランスが見事にプラス20点のベストゲーム。逆にニュージーランドはマイナス20点のワーストゲーム。モチベーションの違いが今世紀最大のビッグアップセットを生み出した。フランスの気迫には大きな拍手を送りたい。

戦術面で見れば、徹底して相手の裏に蹴りこみ快速バックスの走力で勝負する、というフランスの戦法が見事に功を奏した。
勝負を決めたのは、後半20分にインゴールへのショートパントをドゥルトが押さえたトライ。そして33分のターンオーバーからキックを蹴りこんで同じようにインゴールでベルナサルが押さえたトライ、と共に走力で挙げたものだ。前半28分と31分にもトライにこそ至らなかったが同じような場面があった。

これはかなり考えに考えた挙句の戦術だったのだろう。
ゲームの流れとしては、後半7分、8分とSOラメゾンが立て続けにDG決めたことも大きかった。

それにしてもニュージーランドは不甲斐なかった。
リードされてもまだまだ余裕があったように見えたが、それは逆に過信の継続を生み、気づいた頃には時すでに遅く、天下のオールブラックスも選手全員が地に脚が着いていないような状態だった。(手にボールがついていない、と言った方が良いかもしれないが・・・・)終了間際、ウィルソンが意地のトライを見せたが、試合の趨勢はすでに決まっていた。

さて決勝戦。オーストラリア対フランスという予想外の組み合わせになったが、この対戦となれば、第一回大会の準決勝での名勝負を思い出さずにはいられない。あのゲームを凌ぐような素晴らしい試合を期待したいが、やはり力の差があるのではないか? フランスが二試合続けて最高のパフォーマンスを演じられるのかどうか? フランスの戦い方がある程度見えただけに、展開次第では思わぬ点差がつきそうな気もする。

もう一つ、忘れてならないのは、この結果でニュージーランド対南アフリカという興味深い三位決定戦が行われることだ。両チームのモチベーション次第だが、もし4位となれば次のワールドカップの組み合わせにもかなり影響するだけに、結構力の入った戦いが見られるのではなかろうか?

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