日本選手権の見どころ

社会人4チームと学生4チームの対戦という形では初めての日本選手権が行われます。
常識的に考えれば、優に50点差がつくくらいの実力差があります。社会人のモチベーションとコンディショニング、メンバー構成などの要素次第で、その点差が20点程度に縮まるのか、或いは100点ゲームになるのか? という程度のものだと思います。
学生にとって不利なことに、この時期は試験とも重なります。ただでさえ、実力に開きがあるのに、コンディションも万全ではないとなれば、自ずと結果は見えています。

以前、日本選手権では慶応が結構健闘するかもしれない、と書きましたが、試験のことをすっかり忘れていました。関東学院、明治、早稲田、慶応の4チームのなかで、恐らく最も試験がシビアなのは慶応。先日の合同練習には選手が半分も集まらなかったと聞きます。これでは、もはや望み薄。

早稲田の正木主将や、慶応の上田監督がどんなに意気込んでも、所詮、試合の見所は勝敗云々よりも、学生のプレースタイルがどこまで社会人に通用するのか? それによって各社会人チームの弱点が顕在化するのか? 或いは、学生選手権で素晴らしいプレーを見せた選手達が、はたしてレベルの高い社会人相手でも同様なプレーが出来るのか? というあたりになります。

関東学院対東芝府中
四宮選手はジャパンになれるのか?
早稲田戦、明治戦と相手バックスを縦横無尽に切り裂いた四宮君ですが、果たして天下の東芝府中のバックス陣相手でも同じような活躍ができるのでしょうか?マコーミック、和田、松田というジャパンのバックス相手にどういう走りを見せてくれるのか、非常に興味深いところです。そして彼のディフェンスはどうなのか?どんなにアタックで素晴らしいプレーを見せてもディフェンスが出来なければ世界では通用しません。関東学院が守勢に回ったときの彼のプレーに注目しましょう。
立川選手のディフェンス力は?
同様に、アタック面では非凡なものを見せる立川選手。宿沢氏は、学生の時の松田選手(現東芝府中)以上とも評価していました。しかし、ひとたびディフェンスに回るとこれがお粗末。やる気のなさそうなタックルではジャパン入りは夢のまた夢。怪我のせいもあるのかもしれませんが、あのディフェンスでは神戸製鋼に進んでもレギュラーになれるかどうか?真価を問われる試合になるかもしれません。
その他にも淵上、矢口、吉岡、萩谷と学生NO1と唱われるタレント揃いのバックス陣には、ジャパンスコッド入りにチャレンジするつもりで望んで欲しいです。

慶応対サントリー
野沢選手はどこまで通用するか?
大学選手権に入ってからの慶応を支えたフランカーの野沢選手。小柄ながらあたりの強さと凄まじいまでのスタミナで、要所でボールに絡み、ルーキーとは思えない活躍を見せてくれました。社会人相手にそのプレーはどこまで通用するのか?不安よりもその可能性に期待したい選手です。

栗原選手の出場はあるのか?
現在、学生のバックスプレーヤーのなかでは、四宮、ニールソン、或いは淵上選手などと並び、かなりジャパンに近い位置にいるスーパーウィング。対抗戦中盤までの慶応快進撃の裏には、彼の走りと正確なキックがありました。惜しくも怪我のために後半戦と大学選手権を棒に振りましたが、日本選手権では復活という噂があります。もし出てくるようなら見もの。
現ジャパンの増保、ツイドラキ、大畑などの牙城を崩すのは容易ではありませんが、彼にはキッカーをつとめられるアドバンテージがあります。広瀬選手がSOをつとめる場合はともかく、岩淵選手起用の場合のジャパンのキッカーは誰がなるのか?そう考えると、栗原選手が食い込める余地もまだまだありそう。もし故障上がりの完調ではない状態でも、社会人と互角のプレーが出来るようなら、大抜擢も夢ではありません。

明治対神戸製鋼
今年も明治は善戦できるか?
昨年は対サントリー戦で大変身。奔放なバックスプレーを披露して国立を沸かせた明治ですが、今年はどうでしょう?
9月の定期戦では大差の完封負け。あの試合よりも点差は縮まるのか、はたまたもっと開いてしまうのか?関東学院と互角の戦いを演じたバックスプレーも、どこまで老獪な神戸製鋼に通用するのか?明治のディフェンスの頑張りが試合の大勢を決めそうな気がします。
選手ではやはりNO8の斉藤選手。神戸製鋼の対面は現ジャパンの伊藤選手。相手にとって不足はなく、迫力のある対決が見たいですね。そしてFBの福田選手には大学選手権決勝のような切れのある走りを披露して欲しいところです。

早稲田対トヨタ自動車
早稲田のラグビーは社会人チームに通用するのか?
グラウンドをいっぱいに使う早稲田のワイドなオープン攻撃は、はたしてトヨタにどこまで通じるのでしょう?確かにトヨタにしてみればこれまで経験しなかった「運動量の多いゲーム」になるかもしれません。後半の残り20分あたりから、トヨタフォワードが突然ばて始める恐れもないとはいえません。しかし、その時点でどのくらいの点差になっているでしょうか?
早稲田のディフェンスが前半から簡単に破綻するようなら、すでにその時間帯には取り返しのつかない大差になっている可能性さえあります。
試合終了時、20点以内の差になっていれば、早稲田にとっては大善戦でしょう。

いろいろ書きましたけど、学生チームには、怯むことなく、観客を感動させるようなけれん味のないプレーを見せてもらいたいですし、社会人チームには、どんな点差になろうと、決して手を抜かない厳しいプレーを期待したいと思います。