1999 ジャパンセブンズ 予選プール観戦記

午後から天気が崩れるという予報のせいか、客の入りもいまひとつ。
年に一度の国際トーナメントということもあり、、朝10時から午後5時近くまでカメラを構えながらずっと見ていましたが、さすがに7時間にも及ぶロング観戦は疲れます。予報通りに午後からはしっかり雨が降り出し、ずぶぬれになってしまったし…・。

ジャパンセブンズは、インゴールで各国の選手がアップをするので、スコアボード寄りの最前列に座ると、かなりの至近距離で選手の表情を見ることが出来、普段の試合とはまた違った楽しみがあります。

なかでも、フィジーの選手達の印象は強烈です。昨年もそうでしたが、彼らの真剣な表情は他チームの選手とは全く違います。7人制では絶対に負けられないという気持ちの表れなのでしょうか、アップの時でも笑顔を見せる選手は1人もいません。無駄口をほとんどたたかずに黙々と試合前のトレーニングに取り組みます。そんな彼らが突如練習を中断する時があります。宿敵ニュージーランドの試合が始まると、その時だけは練習を中断して、食い入るような眼差しでニュージーランドの選手達のプレーを見つめています。

セブンズの大会はお祭り的な意識が強いせいか、緊張感の感じられないプレーを見せる選手もたまにいますが、ことフィジーの選手達のプレーにはそんな姿は微塵もありません。彼らの試合前の姿は一見の価値があります。

さて、午前10時から国内トーナメント予選プール第一節が開始。
明治がトヨタに7-47、京産大が東芝に0-20、慶応は神戸製鋼に0-57という結果で、やはりセブンズでも大学と社会人の間にはかなりの開きがあるように思えました。それでも、昨シーズン取り組んだ徹底したフィットネス強化はセブンズでこそ効果が現れるはず、と勝手に期待した第4試合の早稲田大学。サントリーに17-24と僅差で敗れはしたものの見応えのある戦いを演じてくれました。

午後の相手はクボタ。クボタは主将とはいえ、何故か赤塚選手を起用。だいたいセブンズにロックが起用されること自体ナンセンス。よほど走力のあるロックならともかく、彼の体型を見る限り、とてもそうは思えません。案の定、午後の試合では早稲田大学がしっかり勝利をものにして場内から大喝采。ところがそのクボタは最終戦でサントリーを破るという番狂わせ。結果、Dプールは3チームとも一勝一敗で、得失点差でクボタが1位となるのだからラグビーも奥が深い。結局サントリーが最下位で、ボウルトーナメントに回る羽目になりました。横断幕を用意して気合いの入っていた応援団もさぞやがっかりしたことでしょう。

(この落胆振りが選手にも伝染したのか、サントリーは翌日のボウルトーナメント決勝でも明治相手にまさかの敗戦。逆に早稲田大学は好調を維持し、プレートでも決勝で東芝府中を破り優勝という快挙。Dプールの予選の成績が見事に明暗を分けました。
早稲田大学はボールをワイドに展開するラグビーがようやく板に付いてきた感じ。7人制とはいえ、社会人の強豪を2度も破ったのだから大したもの。このまま順調に力をつけていけば、久々の大学日本一も夢ではなさそうです。)

それ以外の国内トーナメント予選の試合は、順当に社会人チームが勝ち上がりました。

国内トーナメントで目に付いた選手は、三洋電機の古賀選手、ラトウ選手、神戸製鋼のミラー選手、早稲田大学の井手上選手、関東学院の四宮選手、ジャパンの三木選手等々。慶応からは期待の栗原選手も負傷が癒えて出場しましたが、まだまだ本調子にはほど遠い出来でした。

お昼休み、売店で私が牛丼を注文すると、すかさず「おおお、牛丼ちゅうのはぬくいんか? そうか。ならわしは牛丼と焼きそば」と関西弁のだみ声でアルバイトの女の子に呼びかける隣のおじさん。どこかで聞いた声だな? と思って顔を見たら、三洋の元監督、宮地さんでした(^_^)。

さて本命の国際トーナメント。フィジー、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、サモアなどの強豪チームが鎬を削りました。お昼のハイライトは日本対フィジー。何といきなり日本が先制トライを挙げて場内が沸きます。前半を僅差で折り返し、フィジーチームもまさかの事態に真剣な表情。その後さすがに力の差を見せつけられ敗れましたが、12-33と予想以上の大善戦。もっともこの試合で目が覚めたのか、フィジーはこの日の最終戦で南アフリカを40-0と完膚無きまでに叩きのめしました。

Dプールの2試合目、日本対南アフリカは途中までは全くのがっぷり四つ。7-19で敗れましたが、ナワル塾による強化は着実に実ってきていると感じました。
(ところが日曜日のボウルトーナメントの準決勝では韓国にまさかの敗戦。やはり精神的な弱さなのでしょうか?)

Aプールはニュージーランド、Bプールはオーストラリア、Cプールはサモア、とセブンズの強豪が順当にカップトーナメントに進出しましたが、オーストラリア対アルゼンチンや、サモア対カナダなどはなかなかの好ゲームでした。
ただし、総じて、国際トーナメントと国内トーナメントのレベルの差は如何ともしがたく、国内トーナメントの試合は、15人制ラグビーをそのまま7人でやっているだけというようなゲームが多く、日本ではまだまだセブンズラグビーの認識が薄い気がします。

7人制で大事なのは、まず第一にスペースを作るという感覚、それから瞬時の状況判断、個々の瞬間的なスピードや一対一の場面での確実なディフェンス(或いはタックル)などですが、それが全く出来ていないチームの何と多いことか。
(この4つのポイントは15人制でも通用することだと思いますが…・)

スペースを作るというのは、サッカーと同じで「ボールを持っていない選手が如何に動いて上手くスペースを作るか」ということ。なのに、動いているのはボールを持った選手ばかり。他の選手がぼーっと立っている状況では、どんなトライも生まれようがありません。ところがそう思ってみていると、逆に個々のタックルが非常にお粗末で、簡単に突破してトライが取れたりするから始末に悪い。
国際トーナメントと国内トーナメントでは全く違うラグビーを見ているようです。

日本の選手のドロップキックもお粗末で、ほぼ正面の位置でも外してばかり。見ていて情けなくなります。
セブンズは15人制とまた違った面白さがあるわけですから、もっと多くの大会を行って普及につとめるべきではないでしょうか? 冷静に考えれば、15人制よりもこちらの方が体の小さい日本人が世界と対等に戦えるスポーツに成り得るはずです。10年後には、日本がフィジーと肩を並べるようなセブンズの2大強国になっていることも夢ではありません。とりあえず、国内で一番人気のある大学チームの間で全国選手権を開催してみるというのはいかがでしょう?

ただ、その前に、15人制と7人制は全く異なったラグビーであるということを指導者がしっかりと認識することが重要かもしれません。せっかく目の前でフィジーやニュージーランドやオーストラリアなどのレベルの高い戦いに触れられるのですから、それをしっかりと肌で感じとって、今後に活かしてもらいたいと思います。

プレー以外でこの日一番印象に残ったのは、試合途中メインスタンドスコアボード寄りに集ったフィジーやトンガ、サモアなどの応援団の人たちの澄んだ歌声。元々はどういう時に歌う曲なのかわかりませんが、遠く南太平洋に沈む夕陽を思い出させるようなその歌声は、心の奥まで沁みいる素晴らしいものでした。

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