1998/1/11
サントリー VS 東芝府中
【全国社会人トーナメント決勝】






サントリー
6-14
東芝府中
0-0
6
0
T
2
14
0
0
0
G
2
0
0
2
PG
0
0
0
0
DG
0
0
0

長谷川(中 大)
FW
溝辺(関東学大)
坂田(法 大)
薫田(筑波大)
中村(同志社大)
中村(筑波大)
星川(関東学大)
釜沢(大東大)
栗原(早 大) 
安田(専修大)
エニス(B C 大)
渡辺(日体大)
天野(明 大)
高木(大東大)
清宮(早 大)
ゴードン(ボーイズ高)
永友(明 大)
HB
村田(専修大)
武山(日体大)
島崎(佐賀工)
吹田(青学大)
TB
和田(東海大)
今駒(早 大)
新里(浪速工)
ウルイナヤウ(オーク工大)
マコーミック(Cチャーチ高)
尾関(日体大)
森田(東洋大)
今泉(早 大)
FB
松田(関東学大)



最終スコアは、14-6。トライは前後半通じて東芝の二つのみ。
後半が0-0というのは今期のラグビーの試合では恐らく初めての出来事なのではないでしょうか?お互いに得点力がなかった、というよりも日本ラグビーのディフェンスもワールドクラスに近づいてきたのだ、と前向きに理解したい気がします。
高校の『国学院久我山対伏見工業』の試合を皮切りに、大学選手権の『明治対関東学院』、そしてこの試合と高校、大学、社会人の全国大会のすべての決勝戦がディフェンスの締まった素晴らしい試合になったことは、日本のラグビー界が確実にステップアップしていることの証なのでは?と思います。

東日本リーグではフォワードで圧倒し、完勝したサントリーでしたが、あの試合の東芝は珍しくミスが多く、「PからGO」も何故か途中までは敢えて封印し、勝負を度外視して今期のサントリーの力を測るような戦い振り。結果をそのまま鵜呑みにはできないような内容でした。あの敗戦で目覚めたとも言えるのでしょうが、テレビに映った試合中の向井監督の余裕の表情を見ていると、そんな穿った見方もまんざら違ってなかったような気がします。

東日本リーグの時との大きな違いは、ウルイナヤウ選手が完調じゃなかったことが挙げられます。あの試合では彼の個人技だけで14点取ったようなものでした。その後、膝の故障を慢性的に抱えてしまい、素晴らしいステップとスピードは影を潜めてしまいました。この試合でも彼本来の動きとは程遠く、途中交代となりました。


細かいミスが多く社会人の決勝としては物足りなかった、という意見もあるようですが、あの悪いグラウンドコンディションの中ではある程度仕方がないでしょう。それでも、東芝ゴール前のサントリーフォワードと東芝ディフェンス陣の物凄い攻防は、さすがに段違いの迫力で見ごたえがありました。
結局、何度かあったゴール前のチャンスをサントリ-はトライに結び付けることが出来ず、ノートライのまま試合終了。東芝府中が二年連続の栄冠を手にしました。

プレーヤーで目立ったのは何といってもゴードン選手。攻撃時にはサイドを突いて拠点となり、いざディフェンスに回ると、タックルしては立ち上がり、またタックルに行く、という獅子奮迅の活躍が目に焼き付きました。この試合では、マコーミック選手、サントリーのエニス選手も含めて、改めてワールドクラスの選手の凄さをまざまざと見せつけてくれました。こんなプレーを早く日本人選手が見せてくれるようになって欲しいと思います。

勝った東芝は、東日本リーグ、社会人選手権を通じてペナルティによる得点は1点もなし。(まあ、1点という得点はありえませんけどね・・)
その戦法に疑問を投げかける一部の外野の声にも『優勝』という結果を出すことで、自らの正しさを証明したといえるでしょう。
「PGで勝っても負けたような気持ちになる」とは朝日新聞に載った向井監督の言葉。
「ボールを持ち続ければ負けることのない」究極のラグビースタイルの完成に向けて一歩ずつ近づきつつあるのかもしれません。
次の試合は1月25日の日本選手権。もっと良いグラウンドコンディションのもとで、今日の試合では発揮できなかった「ボールを動かし続ける」という本来の東芝ラグビーを、思う存分発揮してくれることを願います。

負けたサントリーも今日は全力を出し切ったのではないでしょうか。
エニス選手の攻守に渡る活躍や、マコーミック封じのために抜擢されたベテラン今駒選手の渋いプレー、栗原選手や沖土居選手など懐かしい名前のプレーヤーもまだまだ元気なところを見せ、観客を楽しませてくれました。
例年ならこれでシーズン終了というところですが、幸い今年はもう一度チャンスがあります。また新たな気持ちで次の試合に臨んで欲しいと思います。
雪辱を期す日本選手権ー回戦の相手は関東学院に敗れた明治大学。数年前の日本選手権の再戦になります。あの試合で愚行を働いたA選手はいないとはいえ、お陰で一年間を棒に振ったエニス選手にとっては因縁の相手。あの時のお返しとばかり、血相を変えて迫ってくることが予想され、考えただけでも空恐ろしい気がします。いかに天下の明治フォワードといえども、怒りに満ちたエニス選手の突進を防ぐのは容易ではないでしょう。

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