1998/2/14
日本選抜 VS A C T





日本選抜
9-16
A C T
21-17
30
0
T
2
33
3
3
0
G
0
3
1
3
PG
2
0
0
0
DG
0
0
0

溝辺(東芝府中)
FW
ザミット (26才)
薫田(東芝府中)
カプート(25才 C5)
清水(神戸製鋼)
ノリエガ(26才 C22)
 桜庭(新日鉄釜石)
ラングフォード(29才 C4)
田沼(リコー)
ギフィン(24才 C3)
中村(東京ガス)
フィネガン(25才C14 )
小泉(神戸製鋼)
ロビンソン(28才 C15)
伊藤(神戸製鋼)
コーカー(32才 27)
大原(トヨタ自動車)
HB
ブラウンリー(21才)
ミルン(鐘淵化学)
ノックス(24才 C13)
増保(神戸製鋼)
TB
ロフ(22才 C25)
八ツ橋(神戸製鋼)
ハワード(24才 C20)
沢木(日本大学)
マグロー(26才)
大畑(京都産業大学)
ハーディ(26才 C5)
松田(東芝府中)
FB
ケイファー(20才)


第二戦に敗れたACTが当然目の色を変えて挑んでくると思われたこの最終戦。
日本選抜は第二戦と一転してミルン以外の外人選手を外し、大畑君も数に入れれば神戸製鋼が6人もいる若手中心のメンバー構成。
春一番到来を思わせる汗ばむほどの陽気と第二戦の勝利に誘われたのか、秩父宮バックスタンドは思いのほかの大入りでした(メインスタンドが使えないせいもありましたが)。

前半4分、日本はNO8伊藤の突進からラックを作り、右展開。いい形になったところで沢木がノックオン。チャンスを逸したかと思いましたが、この時ACTがオフサイドを犯したため22m付近でペナルティを得ます。このPGをミルンが難なく決め、まずは日本が3点先行します。
6分、ACTは日本22mライン付近でモールを押し込むと、今度は日本がたまらずオフサイド。ACTもこのPGを決めて同点に。
この後15分間くらい攻防が続きます。

この間、モール周辺での小競り合いから、コーカーと田沼が凄まじいパンチ合戦。先に手を出したのはコーカー。両者ともシンビンか、と思われましたが、何のお咎めもなし。結局この裁定に象徴されるような岩下レフェリーの曖昧なジャッジが、この後も試合の興味を殺ぐことになりました。

21分に日本は左中間のPGを確実に決めて6-3。
その直後、ACTは日本陣で左オープンに展開すると完全に左WTBが余って、左中間にトライし、8-6と逆転。
31分にも日本ゴール前まで攻め込んだACT。パイルアップ(ノックオン?)で日本ボールになりますが、そのスクラムに猛烈なプッシュ。一気にマイボールにするとすかさず展開。CTBがカットインして鮮やかにディフェンスを抜き去り、右隅にトライを奪い、13-6とします。

その後は、39分に日本が、ロスタイムにACTがそれぞれPGを決めて、前半は16-9とACTが7点のリードで折り返します。
後半、日本は負傷したミルンに代わって広瀬、プロップに中村直人、フランカーに安藤を起用。珍しく日本人だけの選手構成になります。

8分、ACT陣で得たペナルティを得るとタッチキック。ゴール前10m付近のマイボールラインアウトを獲得。このラインアウトをしっかりキャッチし、モールを形成すると、一気に押し込み、中村航が押さえてトライ。ゴールも決まり、16-16の同点。

12分に、今度はACTが日本と全く同じパターン(ペナルテイ→タッチキック→ラインアウト→モールを押し込む)でトライを決めて、21-16。
17分にも、ACTは連続攻撃から右オープンに展開、右隅にトライを奪って28-16と差を広げます。
日本も22分にACTゴール前に攻め込み、様々なアタックを繰り広げます。然しながら、さすがにゴール前でのACTのディフェンスは厳しく、なかなかゴールラインを割れません。

何とかバックスにボールを回しても人数不足、ナイスタックルを受け一転ピンチに変わるかと見えましたが、ここで右ライン際にポツンといた大畑選手が「こっちパントを上げろ」と手を挙げるとCTBの八つ橋選手がキック。これが素晴らしいコントロールで大畑選手の腕にすっぽり。虚をつかれたACTはディフェンスが追いつけず、大畑選手はそのままインゴールに。中央付近まで回り込みトライを奪って、28-23と再び5点差に。

しかし25分に、ACTは日本陣22m内で得たマイボールラインアウトを日本選手が揃わないうちにクイックスローイン。そのままインゴールに持ち込み、あっという間のトライとなります。これは前半でも見られたプレー《多分ペナルティでタッチを切ると、ボールに近い二人のプレーヤーが、素早く行動してスローワーとキャッチャーになったのだと思います》で、その時はノット5mで難を逃れました。
その事を念頭に置いておけば対処できたと思うのですが、疲れもあったのか、誰も反応できませんでした。これで33-23とACTは安全圏に。この後日本選抜は何とかACTゴール前に攻め込んで、良い形を作りますが、トライを奪えず、時間を浪費。マイボールスクラムからフォワードのサイド攻撃の時、再三のACTのクレームに切れた(?)岩下レフェリーが認定トライを宣言。

このジャッジは観客にもよくわからず、勿論ACTの選手も理解できなかったようで、レフェリーの裁定を茶化すかのように、拍手をする選手までいました。

結局、この後ロスタイムにACTが日本陣内に攻め込んだあたりで試合終了。
33-30という僅差でACTが勝ちを治めました。

普通ならば、外人抜きの日本選抜が天下のACT相手にこれだけの善戦をしたのだから素直に喜ぶべきなのでしょうが、どうも今一つ興奮できない試合でした。

攻め込んだ場合での球出しが非常に遅いのは、フォワードが悪いのか? SHの大原選手が悪いのか? これではテンポが作れません。第二戦が非常に球出しの早い軽快なラグビーで金星を挙げたことを思えば、今日は雲泥の差がありました。やはりジャパンのSHは、「どんなにフォワードが劣勢であっても素早い球出しができる」SHでなくては厳しいと思います。そういう意味では、大体大、トヨタ自動車と強いフォワードのもとで力を発揮してきた大原選手がジャパンに対応するにはまだまだ時間が掛かりそうです。

後半、ミルン選手に代わってSOに入った広瀬選手。彼の持ち味はやはりキックですが、ラインアウトが取れない(これは体格的に直し様が無い)ジャパンにとって、「とりあえず敵陣」のような考え方はできません。いくら敵陣深く入るナイスキックを蹴っても、その後の相手ボールラインアウトとモールなどで押し返されるのは必至。ペナルティキックの正確さは認めても、「キックを中心にしたゲームメイク」という戦法が取れない以上、彼の起用は難しいところがありそうです。

八ツ橋、沢木のセンター陣。ディフェンスは共に良かったと思いますが、攻撃時には物足りなさが残りました。ここ一番のキラーパス、或いは一瞬で裏に抜けるスピード、というような一段上のスキルが必要でしょう。
大畑選手。さすがに学生相手のように簡単に突破というわけにはいかず、ディフェンスに捕まる場面がしばしば。もちろん国際マッチではそれが当然。となるといかに上手なダウンボールでフォローを待つか、ということもポイントになります。この点では落第点。ただ、バックスでの攻撃時の彼の活かし方自体が違っているような気もしますが・・・。ディフェンス面はもう少しスキルアップが必要でしょう。

増保選手。初の主将という大役を無難にこなしました。自らも再三突破役となり、良い動きを見せていました。
大畑、仙波、或いはツイドラキと自分のポジションを脅かす選手の出現は、彼を良い方向へと向かわせているようです。こういったレギュラー争いが激しくなればなるほど全体としての戦力アップになるのは明らかですから。
松田選手。第二戦のミルン選手と比べると相当な開きがありました。もう少ししっかりしたディフェンスをして欲しいところです。

ACTは前の試合で負けたことが結果的に悪い方向へ向かわせてしまったようです。背水の陣で挑んだ今日の試合。闘志がラフプレーへと豹変してしまいました。岩下レフェリーの曖昧かつ一貫しないレフェリングがそれを増幅。ストレスの溜まった選手達は至る所で小競り合いを起こしていました。

今日はこれまでの二試合に比べるとフォワード優先(スクラムの押しはワールドレベルの凄さをあらためて見せてくれました)。怪我人続出のせいもあったのでしょうが、第一戦で見せた胸踊るようなパスやランニングも余り見られず、「さすがスーパー12の準優勝チーム!」というプレーが陰を潜めてしまいました。(私などは、第一戦との余りの落差故に「日本に来て、みんなインフルエンザにでもかかってしまったんじゃ?」とさえ思いました。第一戦を見た方なら解ると思いますが、そりゃあ素晴らしいパスとフォローとランニングだったんですよ)

攻撃面ではいくつかの問題点こそ残したものの、防御面では大きな成長がうかがえた今日の日本選抜。とにかく一歩でも早く前へ出てのタックル、これが日本が世界で戦うための必要絶対条件です。後半バテ気味ながらも何とか踏ん張った選手達。パシリムの香港戦とは明らかに違う一面を見せてくれたことは大いに評価したいと思います。

連勝こそなりませんでしたが、始まる前は「このメンバーで一体大丈夫なのか?」という多くのファンの予想を翻しての大善戦だったことを考えれば、「とりあえず階段をまた一歩駆け上がった」と解釈するのが妥当なのかもしれません。
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