1997/12/14
明治大学 VS 流通経済大学
【大学選手権一回戦】



明治大学6531-310流通経済
34-7

5T0
61
3G0
21
0PG1
00
0DG0
00

黒崎(3年)FW 土屋(4年)
山岡(3年)碇(4年)
中村(4年)谷口(4年)
鈴木(4年)中西(1年)
石井(3年)井上(4年)
阮(2年)石川(4年)
岡本(4年)唐津(4年)
斎藤(2年)渡辺(4年)
田中(4年)HB池田(4年)
伊藤 宏(4年)加瀬(1年)
山品(4年)TB阿部(3年)
山口(3年)伊藤(3年)
松添(2年)大島(3年)
福田 茂(4年)島名(2年)
岩倉(2年)FBニールソン(2年)



いつもながらの流経大FBニールソン君の惚れ惚れするほど滞空時間が長く美しいキックオフボールが、冬の青空に舞い上がり、試合が開始されました。

あれだけ高く蹴られると攻撃側のロックも余裕を持って落下地点に到達できるので、条件的にはイーブンに近い状態になるのですが、今日の明治ロック陣はそのボールを確実にキャッチして、すぐに固いモールを形成し、逆に攻撃の起点としていました。(後半は流経もそれを避けるためか、キックオフを深く蹴り込む作戦に切り替えていましたが)

キックオフボールのキャッチングに代表されるように、今日の明治は今までの対抗戦のどの試合よりも、しっかりとした攻撃と堅いディフェンスで、隙のない戦いを演じました。大学選手権の緒戦では非常に淡白な試合をすることの多い明治が、流経の連続攻撃をフランカーやCTB陣の正確かつ気合いの入ったタックルでしっかりと止め、まるで今日のテーマを「相手をノートライに抑えること」とでも決めていたかのようでした。

攻撃面においても「ボールの継続」という意識が徹底され、次から次へと湧き出るようなフォロー、ミスのないハンドリングで、観客を唸らせるような見事な繋ぎのトライを奪うプレーが何度かありました。

明治が一回戦でこれだけ精度の高いプレーをするとは驚きです。早明戦の直後で集中力を持続することが難しいこの試合で、監督不在にもかかわらず、これだけしっかりと明治のラグビー部をまとめあげる田中主将のキャプテンシーは相当なものかもしれません。これでもし優勝するようなら、近年ではあの吉田、元木と並ぶ明治ラグビー史に残る名キャプテンと言っても良いでしょう。

スポーツ新聞では明治のフォワードコーチの鈴木氏が「前半フォワードで圧倒できなかった。おとなしすぎる」と不満たらたらで発言していましたが、単にフォワードの突進で相手を粉砕する所謂「明治のラグビー」よりも、フォワードとバックスでボールを繋いでいくラグビーがしっかりと出来たことの収穫の方が大きいような気がします。
どんなに学生間のゲームでフォワードが相手を圧倒したとしても、社会人相手ではそれだけでは通用しません。ましてや外国人相手にそんなラグビーをしていては、百年経っても勝ち目などないのですから。


前半5分、13分と、一度火の点いた明治フォワードの破壊力は素晴らしく、流経の一瞬の隙を突くと一気にゲイン、安々とゴールを陥れます。流経も26分にペナルティゴールを決めて3点返しますが、明治はその後も29分、35分、38分とフランカーの阮君や岡本君などが立て続けにトライを奪い、前半は31-7。

後半も、先に述べたような見事な繋ぎのトライなどを含めた6個のトライを奪い、流経を圧倒。とは言っても流経のタックルがそれほど甘かったわけでもなく、明治の力強さが目立ちました。流経も後半33分、FBのニールソン君が右オープンから抜けて待望の初トライ。結局65-10で明治が王者の実力を見せました。

今日の流通経済大学。
スクラムは予想以上に健闘したと思いますが(何度かコラプシングをとられましたが、明治相手では仕方ありません)誤算はラインアウトの失敗。明治の鈴木・石井のツインタワーのプレッシャー故か、前半攻め込んでのゴール前のマイボールラインアウトを二度ほどノットストレートにとられ、せっかくのチャンスをふいにしていました。

また何度かモールでの前進や、サインプレーが鮮やかに決まって、明治ゴールラインに肉薄するチャンスもありましたが、対抗戦でも見られなかった明治の確実なディフェンスの前に決めてを欠きました。個々の選手の上手さや力強さではやはり明治が一枚も二枚も上。もう少し個人のスキルアップが必要かもしれません。

それでも、初めて流通経済大学のラグビーを見た多くの観客に対しては「まとまった良いチーム」という印象を与えたのではないでしょうか。度々見せるスピード感のあるバックス攻撃や厳しいタックル、ウィングの阿部君の力強さや大学NO1フルバックという声もあるニールソン君のプレーなどには「リューケイやるじゃん」という驚きの声も洩れていました。

惜しむらくはSH池田君のスピードを発揮するチャンスがほとんどなかったこと。フォワードが常にプレッシャーを受け続けていたせいもあるのでしょうが、類希なスピードを持った(ジャパンの村田選手に匹敵する)SHなのですから、彼を旨く使った攻撃のバリエーションがもう少しあっても良かったのではないか、と思いました。

点差こそ55点と大差がつきましたが、内容的にはそれほどの差はありませんでした。
初めて大学選手権に出場した流経のラグビー史に残る一戦としてはなかなかの健闘をしたと評価しても良いでしょう。何せ昨年度まではリーグの二部に所属していたチームなのですから。
流経ラグビーの挑戦はまだ始まったばかり。ラグビークラブとして新しい試みに積極的に取り組もうというその姿勢には拍手を送りたいと思います。来年はどういうチームを作り上げてくるのか、非常に楽しみです。

また、この第二試合はどういう観客構成だったのかわかりませんが「はずせー」だの「ころせー」などといった罵声がほとんど飛び交うこともなく、お互いの良いプレーには惜しみなく拍手を送る、という観客ばかりで「ラグビー観戦はかくあるべき」といった感じの素晴らしい観戦風景でした。

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