1997/12/28
三洋電機 VS 神戸製鋼
【全国社会人大会決勝トーナメント一回戦】







三洋電機
10-0
神戸製鋼
16-21
26
1
T
0
21
1
3
1
G
0
1
3
1
PG
0
3
0
0
DG
0
0
0

松野(国士大)
FW
中道(同 大)
久米(東洋大)
弘津(同 大)
阿部(帝京大)
山下(淀川工)
岩津(大体大)
ラベタ(ビロング高)
島田(東洋大) 
ウェットン(OBG高)
青柳(大東大)
小泉(早 大)
ダクヤコ(SC高)
小村(明 大)
シナリラトゥ(大東大)
伊藤(法 大)
堀越(早 大)
HB
堀越(早 大)
バニポラ(トンガ高)
薮木(明 大)
小林(国士大)
TB
山中(同 大)
吉田(大体大)
元木(明 大)
米本(国士館大)
吉田(京産大)
木川(山梨学大)
富岡(青学大)
藤田(新田高)
FB
八ツ橋(天理大)



東日本リーグではまさかの4位。
予選リーグでもトヨタに敗れ、挙げ句はシオネ・ラトゥ選手の無期限出場停止と崖っ淵に立たされた三洋。神戸製鋼との因縁の対戦となってどこまで力以上のものを発揮できるかが見どころ。三洋の不振にも関わらず、秩父宮は社会人の試合としては今期初めての超満員。集まった観客の期待が伺われました。


ニコニコドー戦では15個のトライを奪い圧勝した神戸製鋼。「必要以上にモール・ラックに絡まない」一見理に適った安全な省エネラグビーは、いざフォワードの強いチームと戦った時に「必要な時でも動けない」ラグビーに繋がる『諸刃の剣』になりかねないのでは?という不安もありました。

前半6分、ハードタックルに行った小村主将が早くも退場。このあたりから神戸に暗雲が立ち込めます。三洋はマイボールスクラムから一人少ない神戸のサイドをラトゥ選手が突破。フォローしたダクヤコ選手がパスを受けてゴール下に飛び込み7−0とします。
負傷交替の合間に奪われたこのトライは大きく神戸の頭上に圧し掛かりました。

13分にも三洋はPGを決め3点追加して10−0。三洋ファンの多い秩父宮が沸き返ります。その後も30分頃までは殆ど神戸陣での試合展開。ようやく前半終了間際に神戸もチャンスを迎えますが、右展開して元木選手にボールが渡ると、この試合CTBとして起用された米本選手がハードヒット。神戸の攻撃の芽を摘みます。この後ライン際で三洋が反則を犯し、神戸がPGを狙いますが、富岡選手が蹴ったボールは僅かにポストを外れ前半終了。
前の試合で93点を奪った神戸製鋼がなんと前半無得点に押え込まれてしまいました。

後半1分、神戸陣22mのスクラムからラトゥのサイド攻撃。
そのラトゥにディフェンスが襲い掛かろうとした瞬間、トップスピードで走り込んだバニポラ選手にパス。そのままFBを簡単に交わしてゴール真下にトライ。バニポラ選手からはガッツポーズが飛び出しました。これで17−0となりますが、さすがにここからが神戸製鋼。

4分に三洋ゴール前での連続攻撃から伊藤選手がパスダミーを見せて自らゴール右に飛び込み、ゴールも決まり、まず7点を返します。7分には三洋ゴール前でのモールから右展開して元木選手が右中間にトライ。13分にも、三洋の蹴ったボールに飛びついた富岡選手が弾いたボールを三洋の選手がノックオンと思い、ディフェンスに行かないところを富岡選手が抜け、最後は左展開して余った山中選手が左中間にトライを奪ってついに21−17に。あれよあれよという間の逆転劇で、やはり順当に神戸の勝利かと思いましたが今日の三洋は一味違いました。


16分には代わった新井選手がしっかりとPGを決めて21−20と一点差に。逆に神戸は19分に左中間の比較的イージーなPGを外してしまいます。
28分には三洋のオープン攻撃の時、元木選手の強烈なタックルが木川選手の首の辺りに入りペナルティ。最近「ボールを殺す」とは名ばかりの高いタックルが多くなっている元木選手。日頃のツケが大事なところで現れてしまいました。このプレッシャーの掛かったキックを見事に新井選手が決めて、23−21と三洋が再逆転。

37分には前半にトライを決めたのと全く同じラトゥ、バニポラのキラーパスで自陣から抜けたバニポラ選手が50m近く独走。ゴール前で捕まりますが、神戸は勢い余ってオフサイドの反則。これをまた新井選手が決めて27−21とします。ここまでトライ数は3−2で神戸の方が多く、トライさえ取れば同点でも準決勝進出になるので、神戸も必死に反撃を試みますが、三洋も全員が良く走って何とか阻止。そのままノーサイドに。
予想を翻して三洋が準決勝進出を決めました。

三洋の勝利はディフェンスによる勝利。
3トライを奪われたものの前半終了間際の米本選手のタックルに代表されるようなきっちりしたタックルが結果的に勝利を呼び込みました。
またシオネ選手の出場停止は三洋にとってプラスの方向に働いたようです。今日の三洋フォワードはパワーだけでなく集散面でも神戸を上回っていました。シオネ選手は突破力はありますがディフェンスをさぼったり、体の大きさに頼ってスローな展開になることも多く、デメリットもある選手でした。彼のいない今日の試合、15人全員が良く動き、攻撃防御ともスピード感がありました。

シオネ選手を欠いたことで別の強さを見出した今日の三洋の戦い方は、ジャパンにとっても考えさせられるところかもしれません。バニポラ選手は東日本初戦の東京ガス戦で思った通り、SOの方が持ち味が出ます。正確なキックとスピード、ステップ、当りの強さは申し分ありませんでした。元木、吉田のジャパンセンター陣を止めた吉田、米本のタックルも見事。
とにかく三洋の良い面ばかりが出た試合でした。

敗れた神戸製鋼。
開始早々の小村主将の退場が響いたのは事実でしょうが、野球の巨人軍のように選手層の厚い神戸にとっては致命的なものではないはず。ジャパンが7人もいるのにそのチームが準々決勝で簡単に敗退するようでは、戦術面や指導面でどこかに問題があるのでは? と思ってしまいます。来年は京産大の大畑選手も加入しますが、素晴らしい選手をたくさん抱えながら結果を出せない今年の巨人みたいなチームにならないことを祈ります。

ジャパンの監督になった平尾氏がいまだに社会人チームのGMも兼任しているという状況も不思議な気がします。
ジャパンに神戸製鋼から多くの選手が選出されている状況から穿った見方をすると、自チームの選手が良く見えるだけでそれ故に他チームの優秀な選手が洩れているのでは? という危惧も生じます。収入面の問題もあるのでしょうが、ここは一つジャパンに専念されたほうが良いのではないでしょうか?


ニコニコドー戦では大活躍した八ツ橋選手。抜けてきたバニポラ選手に一対一の場面で二度とも簡単に抜かれるようではジャパンの選手として見ても心もとありません。流経大のニールソン選手なら止めたのでは? と思ってしまいました(そう簡単にはいかないでしょうが)。元木選手も最近心配されていたタックルの悪さが現れてしまいました。吉田選手もジャパンならもう少しましなキックを蹴って欲しいところです。伊藤選手は攻撃面ではまずまずながらディフェンスはもう少し頑張って欲しいと思います。

これで準決勝はトヨタ対サントリー、東芝対三洋の戦いになりました。
私の見る限り、東芝連覇の確率は70%。他の3チームがそれぞれ10%といったところでしょうか。
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