ラグビーシンポジウム
(1999.9.8 於:内幸町ホール)

パネラーは、上田昭夫慶応大学総監督、梶原宏之元日本代表、スポーツライター藤島大、ラグビー解説者小林深緑郎、そして東京中日スポーツの大友記者というメンバー。

まあなんて言うんでしょう。率直な話、ラグビーのシンポジウムなんて面白いのかなあ、と半信半疑で聞きに行ったのですが、これが予想以上。
上田氏の相変わらずの活きの良い饒舌さ、梶原氏のお茶目さ(朴訥で真面目なイメージだったのですが、案外と洒落が分かっていて話が面白い)は楽しく、藤島氏の情熱的な話し振り、スカパーでお馴染みの小林氏の脅威的なマニアック度、と各氏各様の個性を発揮。約二時間、とても楽しい時間を過ごさせてもらいました。

ラグビーのシンポジウムだなあ、と感じたのは観客の年齢層。
見事なまでの高さで、20代の方は数えるほどしかいなかったのじゃないでしょうか? 推定平均年齢41歳(勝手な推測(^_^))。これがサッカーだったらは少なくとも20歳くらいは違ってたでしょうね。やはり将来が不安ですねえ・・・。

二部構成で、まず「ジャパンがワールドカップでどこまでやれるか?」というのが第一部。
上田氏は、現ジャパンの首脳陣も選手たちも勝てそうなのはサモアということで一致しているのを不思議がっていました(彼自身は”アルゼンチンが一番戦いやすそう”と言っていました)。
上田氏が「これはオフレコだよ」と言いながら、バックスの某選手(一応匿名にしておきます)に「どこなら勝てそう?」と質問したら「サモアじゃないっすかー?」と答えたので「あいつもその気になってるんだよなあー」いう話には場内大爆笑。

小林氏も、「サモアの当たりの強さは半端じゃなくパシリムの日本戦などとは全く違う」(※私もそう思います。兎に角痛そうですよ、あのタックルは)という意見を述べました。「付け入る隙があるとすればサモアのプレーの精度の低さだろうが、ジャパンには何か秘策があるのかねえ?」とみんなで首を捻っていました。
ウェールズに勝つのは至難の技と誰もが思っているようで、司会の大友氏も盛り上げるのに困難を極め、どちらかというと"ウェールズは何処まで勝ち進めるか?"や"グラハム・ヘンリー監督の凄さ"という話に脱線気味。
アルゼンチン戦は、"サモア戦次第ではかなり勝目があるのではないか?"というのが大方の考えでした。

当たり前ですが、二勝してD組2位か、一勝二敗でもウェールズに善戦して(ウェールズに負けるのはトークではもう既成事実になっていた(~_~;))3位の最高チームになり何とかプレーオフに残って欲しい、というのは、パネラー、観客みんなの切実な願いでした。
「スクラムが何処まで耐えられるか?」ということと「バショップ、ジョセフを徹底的に抑えられた時どうするか?」というあたりを上田氏がジャパンの問題点として挙げていました。
(上田氏は、3日後に慶応大学の総監督として指揮を振るうためか、しきりに同じ時間に行われているケンブリッジ対同志社の試合状況を気にしていました)

休憩をはさんで、第二部は今回ワールドカップの見どころと優勝チーム予想、注目選手など。

上田氏は「決勝予想はニュージーランド対オーストラリア。ウェールズが何処までやれるかも見モノ」と発言。
梶原氏は、一番手にニュージーランドを挙げながらも、前回ワールドカップのレセプションで一人もアルコールに手をつけなかったストイックなまでの南アフリカの選手の凄さについて触れ、「南アの選手は試合になると目が完全にイッテる。特にファンデルベストハイゼンのあの目にはどこも勝てない!!もうロボットとしか言いようがない。彼が笑ったところを見たことがありません!そんな南アフリカの底力は捨てがたい」などとユーモラスに語っていました。

小林氏は、南半球と北半球のレフェリングの違いやルール解釈などが別の意味で争点になるのではないか?と問題提起。ジャパンの試合のレフェリーが決まったことも発表され、速攻を認めないレフェリーがサモア戦とアルゼンチン戦に起用されたことはジャパンにとってどうなのか?という辺りに注目していました。決勝予想はやはりニュージーランド対オーストラリア。
藤島氏は「南アフリカがダークホースということが恐ろしい。ウェールズはワールドカップで必ず一回は素晴らしい試合をするのでそれがどの試合になるか?イングランドもまだ見限れない」

大友氏は「不調だがフランスの爆発力に期待。特にカスタニエードのスーパープレイが見たい」と語っていました。
注目選手として、NZのウィルソン、カレン、クロンフェルド、ウマガ、イングランドのニール・バックやオーストラリアのイールズなどの名前が挙げられ、上田氏や藤島氏からは「バショップがどういうプレーをするのか?というのも見逃せない」という発言もありました。

最後は観客席からの質問タイム。
「ジャパンはもっと入れ替え制度を活用すべきなのでは?」という質問が出たとき、上田氏が「そういえば、ハーフタイムに第一列の三人全員交代したという試合も何処かでありましたね。何の試合だったっけなあ…」と言うと、後でしっかり小林氏が、「あれは去年の南アのカリーカップの決勝の○○対××の試合で誰々と誰々が交代して…」とスカパーではおなじみの博学奇才ぶりを発揮。観客から大きな拍手が送られていました。小林氏は予想通り、たった一人だけ分厚い資料を机の上に置いてのトークでした。

初めて参加したラグビーシンポジウム。
皆さんなかなかトークが面白く、「こういう催しを頻繁にやれば、多少なりともラグビー人気の回復に役立つのでは?」と思いながら、会場を後にしました。
※ちなみに、シンポジウム後の打ち上げでも、大体この雰囲気通りのキャラクターでの飲み会だったようです(笑)。
※このシンポジウムの詳しい内容は9月29日の東京中日スポーツに掲載されます。興味のある方は是非ご覧ください。

プロフィール(当日のパンフレットのまま)
<パネリスト>
上田昭夫氏
慶応高一慶大一トヨタ。慶応義塾総監督。創部百周年の今シーズン、母校を日本一にすべく学生を指導している。日本代表キャップ6。

梶原宏之氏
日川高一筑波大一東芝府中。山梨県立桂高監督。屈辱の第3回W杯、ニュージーランド戦で2トライが印象深い。日本代表、U-21,U-19コーチも務める。日本代表キャップ31。

小林深緑郎氏
スカイパーフェクTVラグビーチャンネル解説者。海外チーム、選手の動向については“CIA"と呼ばれるほど精通。

藤島大氏
スポーツライター。東京新聞夕刊「スポーツが呼んでいる」でスポーツヘの愛情あふれるコラムを執筆。W杯は3回連続取材。母校早大ラグビー部コーチも務める。

〈司会者>
大友信彦
東京中日スポーツ記者。「ナンバー」「ラグビーマガジン」にも執筆。豊富な取材体験と知識でラグビーファンの心をつかむ著書多数。

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