今大会の注目選手
(と、変わったプレー・・・)

ここではチームの勝敗を離れて、純粋に注目選手を挙げてみましょう。

何といっても私の一押しはアイルランドのHO、キース・ウッド選手。
スキンヘッドの特異な風貌も好きなのですが(顔も愛嬌があってなかなか可愛い)フッカーの概念を変えた、運動量の多さに驚きます。いったい、いつのまにそんなところに?と不思議に思うほど、彼は様々な局面に顔を出します。特に凄いのが相手が22mライン付近にハイパントを上げてきた時。
必ず彼がそこに待ち構え、そのパントをキャッチし、カウンター攻撃の基点となるのです。神出鬼没、ポジションは違いますが、大学デビュー時の堀越選手を思い出します。それほど大柄でもないにもかかわらずハードな当たりを見せ、フォワードとは思えないスピードを持つ彼はアイルランドでも大の人気者です。彼がボールを持つとスタジアムは興奮の坩堝と化します。

続いてはやはりニュージーランドの黄金バックス陣。
クリスチャン・カレン、タナ・ウマガ、ジェフ・ウイルソンのバックスリーは今大会NO1と言って良いでしょう。
特にカレンの走りは、そのスペース感覚、一瞬のスピードなど、見てい
て震えが来ます。ひょっとすると今大会ではCTBとして起用されるかもしれませんが、その場合は彼の代わりにジョナ・ロムーがWTBに入るはずです。もちろん前大会のスーパースター、ロムーのプレーも見逃せません。
ディフェンスが来ても絶対交わそうとせずに真正面からぶち当たっていくあのプレーは日本の選手ではなかなか見られないものです。
ウマガもそのドレッドヘヤーにまず目がいきますが、怪物ロムーを押しのけレギュラーの座を奪ったプレーは、破壊力に満ち、運動量も豊富で、なるほどと思わせます。

先日のシンポジウムで上田氏が語った逸話ですが、
”スタジアムの周りを独特の長髪を揺らしながらランニングをする選手。回りの人たちから「ウ、マ、ウマガ、ウ、マ、ウマガ」という声援を受けながら走る選手は紛れもなくウマガ本人であり、みなに愛想良く手を振りながら颯爽と走り去っていった”ということです。

ウェールズのニール・ジェンキンスも注目です。
普通プレースキックはボールをかなり立てて置きますが、彼のプレースの仕方は独特。ボールの下半分を盛り上げた土の上にそっと乗せるように斜めに置き、その状態はさながらロケット砲を連想させます(うーん、説明が難しい。とにかく一度見て下さい)。その右脚から放たれるキックは正確無比。弾道の美しさは見ていて惚れ惚れするほどです。先日、トンガ戦で日本の広瀬選手がペナルティゴールの世界記録を打ち立てましたが、世界ナンバーワンキッカーとなれば、やはりこのジェンキンス選手でしょう。

南アフリカからはSHユースト・ファンデルベストハイゼン。
この舌を噛みそうなアナウンサー泣かせの難しい名前を持つ彼はどんなに大差のついた試合でも、決して試合中に笑顔を見せることはありません。一体いつ瞬きをするのか?と思えるほど一点に集中した彼の眼差しからはオーラさえ感じられます。今期不調を囲った南アフリカも彼の復帰でようやく調子を取り戻してきました。
もう一人、実際にそのプレーを見たことは無いのですが、近代ラグビーの申し子といわれるNO8ボビー・スキンスタッド選手にも注目です。

イングランドでは、おそらくこの大会を最後に一線を退くであろうCTBジェリー・ガスコット選手を挙げましょう。イングランド代表として輝かしい戦績を持つ彼ですが、世界選抜として出場したオールブラックス戦で見せた、ニュージーランドでは未だにラグビーファンの語り草、という”吉田義人選手のスーパーダイビングトライ”を演出した正確なパントキックも忘れられません。

優勝候補の一角オーストラリアからは、LOジョン・イールズ選手。三回目のワールドカップ出場になるイールズ選手。2mの長身ロックで類稀な運動量を誇りながらプレースキックもこなす万能選手。今大会はバークという彼以上のプレースキッカーが存在するのでキッカーとしての出番は少なくなりそうなのがちょっと残念です。

フランスからは銀髪の貴公子、SOトーマ・カスタニエード選手。
一見するとラガーマンには見えない優しい風貌の彼は、フランスシャンパンラグビー復活を賭ける創造性に満ちたランニングとパスワークの持ち主。五カ国対抗での怪我以降、やや精彩を欠いているのが気がかりですが、ワールドカップの大舞台で、必ずやその真骨頂を発揮してくれるでしょう。

ちょっと変わったところではトンガ勢。
三洋電機で活躍するSOエリシ・ブニポラ、CTBセミィ・タウペアフェ、或いはクボタのNO8ヴァーア・トロケ、横河電機のLOファラマニ・マフィ、更には近鉄のLOベンハー・キバル選手など日本で活躍するお馴染みの選手が目白押し。彼らが世界の桧舞台でどんな活躍を見せてくれるのかも注目したいところです。

話が大きく横道にそれると、昔からフィジーのプロップにはとてつもなく顔が大きく、一瞬、三頭身ほどに見える((^_^))選手が必ず一人はいます。彼を見ると、なるほどモアイ像というのはポリネシアの文化なのだ、と妙に納得するはずです。

最後に、日本の強敵サモアの変わったプレーも紹介しておきましょう。
昔「アストロ球団」という漫画がありました。そのなかで、確か○○三兄弟という、どんなホームラン性の当たり(本来なら絶対にホームラン)でも三人でそれぞれを踏み台にし、超人的なジャンプ力で必ずキャッチしてしまう荒唐無稽なトリオがいました。

先日、これと同じようなプレーをラグビーではじめて見ました。
間違い無くゴールバーを超えていたはずのペナルティキックを、ゴール前に陣取ったサモアの選手達が、ラインアウトのようにサポーティングしてブロックし、防いでしまったのです。そのプレーを見たとき、アストロ球団のこの三兄弟を20年ぶりに思い出しました(解説の小林氏も「昔、漫画でありましたね・・・」と語っていたところを見ると彼も恐らく「アストロ球団」を思い浮かべていたのでしょう。やはり、この人、只者ではない・・・)。

もっとも、本来ならこのボールをしっかりキャッチし逆襲に転ずるはずだったのでしょうが、ノックオンして相手ボールのゴール前スクラムになったため、すぐにトライを奪われ、結果的には、”3点を防いで7点取られた”というオチがついているのですが・・・。

えっと、まあこんなところで。オシマイです。

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