96/97 report 018

1996/97 Mars Observation Reports -- #018--

1997年九月後半・十月前半 (16 September〜15 October)の火星面觀測


『火星通信』同人・南 政 次 (Mn)
 愈々今季の火星觀測も終焉を迎えた。火星は夕方の空に順行して残り、比較的西から離れて捉えられるのであるが、如何せん、赤緯が−23゜まで降りているので、薄明觀測もままならない。それに夕暮れが早くなっているのも却って具合が悪い。例えば岩崎徹(Iw)氏は九月中旬以降も、19, 20, 23, 28, 30 Spt; 5, 6, 8, 11, 13, 14 Oct と歸宅後何度も觀測を試みられたようであるが、視相が悪く、一度も成功しなかった由。そんな譯で今回は全體ぐっと觀測數も減った。但しポイントは押さえられていると思う。
今回の報告對象の期間は16 Spt (182゜Ls)から15 Oct (199゜Ls)であるが、實際の報告は次の如くである。この間中央緯度φは15゜Nから06゜Nとなった。北極域は見辛くなったわけである。一方、位相角ιは36゜から32゜となった。視直徑もδは5.4秒角から5.0秒角という動きで、どの觀測者も耐えている。

 ISHADOH, Hiroshi 伊舎堂 弘 (Id) 那覇 Naha, Okinawa, Japan
   9 Drawings  (19, 21 Spt; 3, 6, 12 Oct)  530, 720×31cm speculum

 MINAMI, Masatsugu 南 政 次 (Mn) 福井 Fukui, Japan
  18 Drawings (24, 28, 29, 30 Spt; 6, 9, 10 Oct)  480×20cm refractor*

 MURAKAMI, Masami 村上 昌己 (Mk)  藤澤 Fujisawa, Kanagawa, Japan
   5 Drawings  (29 Spt; 1, 8, 10☆, 13 Oct)  400×20cm refr (Tama Obs)☆ / 315×10cm refr

 NAKAJIMA, Takashi 中 島  孝 (Nj)  福井 Fukui, Japan
   4 Drawings  (28 Spt;10 Oct)    480×20cm refractor*

                             *福井市自然史博物館天文臺 (Fukui City Observatory)

WFSのマイエル氏から、ドレスデンのメッティッヒ氏の觀測が送られて來た:


 METTIG, Hans-Joerg ハンス-イェルク・メッティヒ(HMt) ドレスデン Dresden, Deutschland
   48 Drawings  (1, 2, 9 Feb; 2, 7, 8, 9, 11, 31 Mar; 2, 12, 13, 19, 20, 23 Apr; 
                 1, 3, 10, 16, 19, 28, 30 May; 2, 3, 4, 6, 7, 9, 10, 14 June)
     225×15cm Coude

日本から

 期間中觀測は伊舎堂弘(Id)氏の19 Spt (11:30GMT)ω=188゜Wから、東回りで、村上昌己(Mk)氏の13 Oct (8:20GMT) ω=267゜Wに亙る。

九月下旬はアマゾニス地方で、21 Spt のId氏はω=154゜W、164゜Wで觀測、夕方にタルシスが明るく、朝方にも霞。南端にも明部。北極域は不明瞭ながら大きさがある。
 24 Spt:福井はω=102゜W(Mn)などではソリス・ラクスが午後端で暗く、クサンテが明るい。マレ・アキダリウムの尾が出ている。南端は明るく、北極域は白い。
 28 Spt には中島孝氏(Nj)、Mnともマレ・アキダリウムをより中で捉えているが、南半球の暗色模様より淡く見える。アルギュレ明瞭。気温19℃から17℃へ。
 29 Spt:Mk氏が8:40GMTω=049゜W、Mnがω=051゜Wなど、10cmのMk氏にもマレ・アキダリウムの存在と南半球の暗色模様は區別が附く。北極域は感じられるが、明るさはない。午後端明るい。20cmではシヌス・メリディアニが區別出來る。濃度は南半球の方(特にアウロラエ・シヌス邊り)が濃いかも知れない。北極域は白味。
 30 Spt :Mn8:30GMTω=036゜Wから、アルギュレが明亮、但し、黄色味。午後端も明るい。矢張りアウロラエ・シヌスからマルガリティフェル・シヌスに掛けて濃い。北極域は緑色フィルターでも明るく見える。

 十月に入って、1 Oct: 08:30GMTω=027゜Wで、Mk氏は南端に白味の強い明るさを指摘、これは3 Oct 10:20GMTω=034゜W、044゜WでId氏も指摘、兩者アルギュレか、としている。
 3 Octの那覇はシーイング良好で、暗色模様が好く捉えられる。マレ・アキダリウムは矢張り南のマレ・エリュトゥラエウムより淡いらしい。朝方タルシスに霞。北極域は大きさが感じられない。
 6 Oct:Mn8:40GMTω=340゜W、愈々ヘッラスが出てくる:午後端で可成りの明るさ(ι=33゜)。シュルティス・マイヨルは午後でシヌス・サバエウスも明確。ω=350゜Wではヘッラスは最早無く、リビュア雲が白く明るい。福井ではこの日8:20GMTに日歿が始まり、10:00(ω=000゜W)までどうにか觀測出來たが、那覇ではId氏10:10GMTω=002゜Wに觀測開始である。シヌス・サバエウスが見え、クリュセは朝霞み。北極域は稍明るく感じる。午後端北半球に明部。ω=010゜W(10:40GMT)ではこれが大きくなる。
 9 Oct: Mnω=311゜W、321゜W、ヘッラスは大きく見えるが少々明るいのみ。リビュア午後端で明るい。
 10 Oct:福井は8:30GMTω=299゜WでNj氏、ω=303゜WでMnが觀測、ヘッラスは多分雲があって、輝きは既になく、稍明るいのみ(196゜Ls)。シュルティス・マイヨルなど暗色模様は明確。この日の最後の觀測で、Nj氏はNj-281D、MnはMn-808D。この日はMk氏がNj氏と同時刻ω=299゜W、309゜Wで觀測(20cm屈折)、同様にシュルティス・マイヨルから、マレ・テュッレヌム、朝のシヌス・サバエウスを觀察している。ヘッラスについては積極的な記述がない(大きくは明るくない)が、南端は明るい。φ=08゜Nなので、南極域の雲が見えているかも知れない。
 12 Oct:ω=301゜W、309゜WでId氏が觀測、ヘッラスはやや黄色っぽく明るい。シュルティス・マイヨルは明確、北極域からその午後方向が霞んでいる。ω=309゜Wではヘッラス鈍い。リビュアは稍明るくなって來た。朝縁に霞。シヌス・サバエウスは淡く見える。Id氏のこの觀測はId-151D。
 13 Oct:Mk氏が8:20GMTω=267゜Wで觀測、マレ・テュッレヌムが見える。北東端が一番明るく、クリーム色。Mk氏のこの觀測はMk-220D。


追加報告から

メッティッヒ(HMt)氏の觀測はフィルターによる描き分けも含まれるから、枚數はこれより多い。フィルターはOG5、BG23、VG8、RG1等。季節では073゜Lsから133゜Lsに亙っている。HMt氏はAkPの木星觀測の方で名が知られる。

 1 Febω=352゜W:マレ・アキダリウムは出ているが、シヌス・メリディアニが同定されない。
 2 Febω=357゜W、032゜Wも同様。
 9 Febω=306゜W、332゜W:シュルティス・マイヨルが夕端に寄り、シヌス・メリディアニも見えている。
 日がトンで
 2 Marω=113゜W:夕端でタルシスが明るい。7 Marω=026゜W、
 8 Marω=054゜W:夕端明るい。テムペが見える。
 9 Marω=000゜W:マレ・アキダリウムの朝方はハーフトーン。
 11 Marω=330゜Wシュルティス・マイヨルが夕方。
 日がトンで
 31Marω=165゜W:プロポンティスTを見ている。夕端の明部複雜。
 2 Aprω=161゜Wも同様。
 12 Aprω=098゜W:夕方にニロケラス、マレオティス・ラクスが中央で暗斑。
 19 Aprω=333゜W、011゜W、019゜W:この間シュルティス・マイヨルが隠れマレ・アキダリウムが出てくる。ヘッラス夕方で明るい(107゜Ls)。
 20 Aprω=293゜W、305゜W、326゜W、349゜W:何れもヘッラス明るい。
 23 Aprω=272゜W、ω=283゜W、ω=297゜W:シュルティス・マイヨル中心(この人のシュルティス・マイヨルは形がよ い)、ω=283゜Wでは北極域に圓い北極冠とその外側に暗線で明部が分離。
 1 May ω=216゜W、224゜W、エリュシウムとケブレニアが出ている。プロポンティスTとアエテリア暗斑。
 3 May ω=188゜W、203゜W。
 10 May ω=121゜W、134゜W:南端が明るい。
 16 May ω=072゜W。
 19 May ω=055゜W、064゜W:ヒュペルボレウス・ラクスを見ているか。アルギュレ明るい。
 28 May ω=327゜W:北極冠と共にヘッラス明るい。
 30 May ω=304゜W:ウトピアの描冩が不明確。
 2 Jneω=297゜WBG23でシュルティス・マイヨルは淡い。ヘッラスは圓く明るいようだ。
 3 Jneω=286゜W、ω=297゜W:ノドゥス・アルキュオニウスが見えるか。矢張りBG23ではシュルティス・マイヨルは淡い。
 4 Jneω=265゜W、273゜W:シュルティス・マイヨルが靄を被って朝方。
 6 Jneω=256゜W、ω=266゜W:前者ではシュルティス・マイヨルは見えず後者で出ている(ι=39゜)。
 7 Jneω=252゜W。9 Jneω=212゜W、226゜W:朝端、午後端に明部。
 10 Jneω=203゜W、216゜W:午後端に明部。
 14 Jneω=167゜W。

 全體に北極冠明部の描冩一定で、最初の頃は小さすぎると思われる。  


 岩崎徹(Iw)氏の最終觀測は、從って、12 Sptとなり、Iw-190Dが最終番号の由です。

 宮崎勲(My)氏から四月中の火星画像二點近々ご送附いただけるはずです。宮崎氏は八月末に具志川市に転居され、40cm反射も新しくドームに設置されたようです。嘉手納基地の東二キロのところのようですが、影響はないそうです。


 この一年報告を寄せられた觀測者の皆様には特別に御禮と感謝を申し述べます。有り難うございました。來期もお互い元氣で聨續觀測を續行出來ればと思います。  
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